9月号

建築構造 インサイト|Chapter 11 備前市日生(ひなせ)総合支所(旧日生町庁舎)
備前市日生(ひなせ)総合支所(旧日生町庁舎)
「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。
建物がどういう構造なのかは、外から見てわかりにくい場合が多いですよね。ところがその構造をあえて即物的に露出し、意匠の一つとして採り入れる手法もあります。特に1950~60年代に流行したブルータリズム建築は、モダニズムの流れの中で素材や構造体、機能などをありのままに、ある意味荒々しく見せ、その構造美やテイストは興味深いものがあります。
日本におけるブルータリズム建築の代表格の一つが、岡山県の備前市日生総合庁舎です。もとは1960年に日生町役場として建設され、平成の大合併で日生町が備前市に併合されたことにより現在は備前市役所の支所となっています。鉄筋コンクリート造2階建のこの建物でまず目を惹くのは、43mほどの長辺方向に3つ、15mほどの短辺方向に1つ配置されているV字型を組み合わせた構造体。インパクトのあるファサードを醸成するだけでなく、屋根や2階の床(スラブ)も支持しています。その根元は途中から広がり、三味線のばちを縦半分に割ったような形状です。コンクリート打ち放しでワイルドな印象を与えますが、これもブルータリズム建築の特徴と言えるでしょう。
1〜2階間の帯のようなラインは桁梁ですが、構造体との接続部分に補強がなされています。天井は折り紙のような幾何学の形状で、竣工当時は谷折りの部分から雨水が下にあった池へと滝のように落ちたそうです。イラストでは隠れていますが、かつて議場だったところは天井が高くなっており、その部分の南面はガラス張りで自然光を導いています。
天井も2階スラブもV字型構造体が支えているため、内部は無柱空間。ゆえに間取りの自由度が高く、今後もフレキシブルに活用していくとのことなのでこの点がメリットになっていくでしょう。1階は天井を支える梁が3本1組で5箇所、スパン15mで桁梁に架け渡され、内観のアクセントにも。過去の改修で面積が拡張されましたが、かつては壁が1mほど内側にあったそうで、V字の網目に囲まれた鳥かごのような外観だったようです。
設計は、当時K構造研究所に在籍していた山本久。後に独立し、吉野町庁舎や鷲羽山グランドホテルなどを手がけた建築家です。大阪大学出身で、学生時代は近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトに傾倒していたとか。建築は「心象の空間化であり、同時に自然の心象化でもある」という彼の言葉を踏まえると、さざなみのようでありやまなみのようでもあるV字の連続や屋根の形は、瀬戸内の風光に包まれたおだやかな街、日生の地ならではのデザインなのかもしれません。神戸からも近いので、ぜひ訪ねて名産の日生かきとこの名建築をご堪能ください。

ブルータリズム建築の名作 備前市日生総合支所(旧日生町庁舎)

構造イメージ












