11月号

神戸で始まって 神戸で終る 77
世界に発信する横尾忠則のアートと現在制作中の作品について
世界のアート界について、というテーマを与えられました。世界のアート界で何が起こっているのか全く知りませんが、このところ僕の世界への発信が何となく集中しているような気がしているので、近況報告を兼ねて、現在進行形の個人的な動向をお伝えしたいと思います。
先ずイギリスのテームズ&ハドソン社から、大判の画集が11月にヨーロッパ、アメリカで先行発売されます。本書はかつて、グラフィックデザイナー時代から版画家を経て、コラージュ作品、テクナメーションと名付けられた電動式の作品、大阪万博のパビリオン、舞台美術、立体作品、映像・アニメーションから音楽関係、そして1980年の画家転向を視野に入れた、創造活動の記録を網羅した500ページの豪華版、それに普及版を含めた3種が発売されます。
ひとりの作家の多義的な活動は、従来のアーティストに対してはタブー視されていたように思います。特に西洋では、ひとりの作家はひとつの主題と様式を確立し、それを生涯追求するということが、アーティストの使命とされてきました。従って僕のような様々な職業を同時に開発するタイプのアーティストは、尊敬の対象にはならなかったのです。
このような社会的動向と個人的関心に合わせた多義的な創作活動は、暗黙のうちに封印されてきたと思いますが、僕はあくまでも個人的な内的欲求、願望を思いつくままにクリエイトしてきました。つまり一元的なアイデンティティではなく、多元的なアイデンティティを発信することによって、自らを総合化してきました。
さらに現実の領域も拡張する必要がありました。つまり地上と天空の一体化、物質と非物質の同化、地上と宇宙を統合することによって、生と死を分けるのではなく一体化する。本来、これらは一体化したものです。このような考え方を今後、世界に向けて発信できないかと思っています。
テームズ&ハドソンは色んな意味できっと話題になると思います。従来の西洋的な芸術行為からは完全に逸脱しているからです。それにしても、テームズ&ハドソンが、西洋的文脈から離れた本をよく出版したものです。目下は本書の編集者であるマーク・ホルボルーン氏による、僕の創造行為と生活を一体化した作家論を計画しています。
また時を同じくして、アメリカのインサイト・エディションズという出版社から、作品を通した自伝『YOKOO BY YOKOO』が来秋、世界40ヵ国から出版されます。本書はアートの専門書というより、映画、音楽などをライフワークとしている世界中の若者を対象にした本になると思います。そして僕をインタビューするのは横尾忠則現代美術館の山本淳夫学芸員です。
さらに目下進行中の作家論の執筆者は、日本在住のエドワード・ゴメス氏で、来春または来夏頃に出版の予定です。本書から2年遅れて、チェコのマルタ・シルべストロバさんという女性評論家により、エドワード・ゴメス氏とは異なった視点から僕を解明するという評論集が出ます。
それと来年には、ロシアの出版社からエッセイ集『飽きる美学』(実業之日本社)がロシア語で出版されます。
さらに目下毎日のように制作しているのは、カタール国立美術館から依頼を受けたカタールの芸術家92人の肖像画です。毎日1点ずつ描いても、3ヶ月はかかりますが、完成の時点で展覧会と画集の出版も予定されています。
変わったところでは、あのヨーロッパの中心的存在である、現代美術バリバリの美術館、ポンピドー・センターで、僕の全ポスター1000点以上のコレクションが決まっています。ニューヨークのMoMAは僕のポスターを200点ばかりコレクションしていますが、ポンピドー・センターはそれを遥かに上回りました。
僕の海外での動向は以上ですが、今後、何が起こるか全く未定です。90歳という高齢で突然のように海外での動向がどうして起こったのかわかりませんが、もう10年若ければと思いますが、もうこの歳になると動くのさえ大義です。
また来年は国内で、10回連続展という個展が、東京で開催されます。10回連続が完結するまでは、少なくとも3、4年はかかると思います。また、ニューヨークのギャラリーでの来年、また再来年には、かつて描いた作品を小品化した展覧会が開催の予定です。これはカタールの92点を越える点数を期待されていますが、いくら命があってもたりませんね。
この間の世田谷美術館『連画の河』展(横尾忠則現代美術館でも巡回展開催)が生涯最後の個展かと思っていましたが、どうもそうはならない予感がしています。
ぜひ神戸の方も、今後の動向に関与してくださると大変嬉しく思います。

横尾忠則 核の傘 2024年
油彩・布 作家蔵

横尾忠則 Word and Image
(ニューヨーク近代美術館)1968年
シルクスクリーン・紙
横尾忠則現代美術館蔵

横尾忠則 風景No.9 黄色い女 1969年
シルクスクリーン・アクリルフィルム、紙
横尾忠則現代美術館蔵

横尾忠則 地の鼓動 1993年
テクナメーション 横尾忠則現代美術館蔵

撮影:横浪 修
美術家 横尾 忠則
1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。

現在、横尾忠則現代美術館では、
展覧会『Curators in Panic 2 〜横尾忠則展 学芸員危機2髪?』開催中です!
横尾忠則現代美術館












