9月号

ベトナム元気X躍動するアジア 第33回|インバウンド観光の現状と展望―神姫バス「真結(ゆい)」の試み
神姫バス株式会社は、本年8月7日に最高級観光バス事業「真結(ゆい)」を子会社の神姫観光に譲渡すると発表した。同社グループのフラッグシップ・ツアーブランドを旅行・貸切業に集約・一本化することで、さらなるブランドの成長と顧客サービスの向上が目的とされる。今回は、ベトナムを含む訪日外国人旅行者の現状と展望を考えてみよう。
文・ 上田義朗
ベトナム総領事が「真結(ゆい)」に試乗
在大阪ベトナム総領事館のソン総領事ご夫妻に神姫バスの最高級バス「真結」プリマにご試乗を賜る機会があった。今後のベトナム人の訪日観光に対するご意見やご要望を頂戴する目的である。
車両価格が1億円を超える理由を総領事が質問されたが、それは内装に職人手作業の木工品が贅沢に使用されているためである。車内の飲料サービスも航空機ビジネスクラスに匹敵するように思われた。もちろん添乗者は英語で対応する。定員18席の車内は余裕の空間である。

「真結」車内のサービス
インバウンド観光の最近の動向
表によれば、本年1月~6月(推計値)の訪日外国人の総数は2100万人を超えているが、昨年同期に比べて微減である。各国・地域別の増減比率では、中国が激減しているが、それを台湾・韓国・インドネシア・マレーシアの増加が補足している。おそらく「円安」の影響が大きいと一般に考えられる。
これに対して日本国内の1人当たり消費金額では、オーストラリア・米国・シンガポールが高額であるが、その主目的は長 期滞在と体験型観光である。他方、中国や香港の「爆買い」も金額を高めていると指摘されている。(参考)観光庁『インバウンド消費動向調査』など。
おそらくベトナム人の訪日目的は「爆買い」型と思われる。果たして貴重な旅行体験を楽しむ移動手段である「真結」がベトナム人に利用されるのだろうか。ベトナム航空よりもベトジェット航空が選好される現状で、それは直ちに難しいのではないか。
表 訪日外国人の各国地域別上位10:昨年同期の比較

出所:日本政府観光局(JNTO)の統計資料から筆者作成。
注:留学生などの再入国も数値に含まれる。順位は2026年基準。
訪日ベトナム人旅行者の可能性
ベトナム人の個人所得は着実に上昇しており、訪日観光客は増加すると見込まれる。ただし海外観光の目的や意図は多様であるから一概に特徴は指摘できない。もっとも私見では、ベトナム人は日本人にも似た節約や倹約を美徳とする風土が特に北部には残されている。一方、企業経営者や富裕層の見栄を張った「散財」も見聞される。
日本の旅行業法の「無登録営業」が中国人と同様にベトナム人でも多発していた。同じ旅行手配でも顧客と友人の区別が不可欠である。旅行を「本業」とする事業者の無登録は違法である。日本政府は、これらの規制の厳格化を推進しており、今後は秩序あるインバウンド旅行が当然となる。これは「真結」にとって好機である。
なお、現在までに多数のベトナム人技能実習生・留学生が来日しているが、将来に家族を同行して日本を何度も訪問するインバウンド観光があっても良い。このような外国人に好ましい制度設計と努力はわれわれ日本人の課題である。

姫路城を背景に真結(ゆい)最上級車
上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
岡山学院大学・岡山短期大学理事
日本ベトナム経済交流センター日本代表
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO












