12月号
音楽のあるまち♬ 3 中高生たちの〝 ジャズ甲子園 〟
JAZZ発祥のまち神戸で毎年開催
日本学校ジャズ教育協会(JAJE)関西本部
理事長
日下 雄介 さん
中高生たちのビッグ・バンドが参加する「ジャパンステューデントジャズフェスティバル」が毎年神戸で開催されている。JAJE創設から関わってこられた日下雄介さんに、これまでの変遷やジャズの魅力などお聞きした。
―今年の第33回フェスティバルは。
例年通り8月に神戸文化ホールで3日間にわたって開催され、今年は全国から50団体が参加しました。
―1985年の第1回開催当時は。
JAJEを84年に立ち上げ、その翌年第1回を開催したのですが、当時はビッグ・バンドというとクラブやキャバレーで演奏するもので、不良というイメージがまだまだ強い時代。7~8団体参加で始めたのですが、次第に社会の認識も変わってきてここまで大きな大会に成長しました。
―日下先生がJAJEを創設することになった経緯は。
東京でヤマハさんが始めた中高生たちのジャズビッグ・バンドを応援する活動を「関西でもぜひ」と、私にお話をいただきました。神戸村野工業高校の機械科の教師だった私は、音楽部の顧問としてジャズ演奏を指導していました。おそらく日本初の高校生ジャズバンドだったと思います。私自身も20歳のころからサックスプレーヤーとして趣味でジャズを楽しみ、高度成長期で景気のいい時代にはステージに立つこともありました。そんな噂を聞いて来られたのでしょうね。
―その後三十余年続いてきましたが、中高生の演奏は変わってきましたか。
中学・高校のビッグ・バンドは確実に増えていますが、どこの学校も平均的にレベルが高くなっています。日本の楽器の質が良くなり、取り扱いも上手になったこと、子どもたちのリズム感や音感も非常に良くなっていることなどが理由でしょうか。ジャズフェスティバルでは、他の学校の演奏を聴く機会を持って良い刺激を受けていると思います。特に94年、神戸市と共催するようになり、神戸市や兵庫県から賞を出していただくコンテスト形式になってから飛躍的にレベルアップしました。ぜひ一度、聴いてみてください。「プロもびっくり」の演奏をしますよ。
―ジャズのまち神戸の学校はレベルが高いのですか。
兵庫県の中でも神戸周辺は甲南高校をはじめ、映画「スウィングガールズ」のモデルになった県立高砂高校などがあり、とてもレベルが高いですね。そういった学校が集まる神戸大会を目指して、東北、東京、名古屋、四国、九州など日本中から参加を希望しています。実は参加したいという要望は多くあるのですが、受け入れ態勢を考えるとこれが今のところ限界だと思っています。
―演奏曲目も時代とともに変わってきたのでしょうね。
生徒と先生が相談して選曲するのですが、ビッグ・バンドの定番曲だけでなく、スウィングジャズとロック、フュージョン、ラテンなどとのクロスオーバーや、ニューミュージック、Jポップといわれる曲などにジャズのアドリブ演奏を取り入れるアレンジなど、今は楽譜もたくさん手に入りますからとても幅広くなっています。
―フェスティバルを経験した子どもたちのその後は。
プロになった子もたくさんいますし、これをきっかけに音楽大学に進んだ子もいます。でもそれだけがゴールではないと思っています。私もジャズという趣味を持ってずっと楽しんできたお陰で多くの人との出会いもあり、人生がとても豊かになったと思っています。
―神戸唯一の社会人ビッグ・バンド「モダンタイムスビッグバンド」も日下先生が創設されたそうですね。
神戸で演奏しているアマチュアジャズマンたちからの要望で、JAJEと同時期に結成しました。ステューデントフェスティバル出身の若いプレーヤーたちも入って来てくれています。
―日下先生が思うジャズ演奏とは。
ジャズは演奏する人と聴く人の感性の音楽です。音程や音色、技術などの基本はありますが、「なんか変わった音だなあ」と思う演奏でも、聴く人によっては「これはいい!」と思える演奏かもしれません。クラシックのように完璧でなければ評価されないというわけではなく、作曲家の思惑通りの演奏をしなければならないわけでもなく、自由です。ジャズはそういう音楽だと思います。
―JAJEの今後について。
幸い、現在事務局を置く淡路島の柳学園でこの活動をしっかりと受け継いでいただいています。私自身これからもジャズを通して子どもたちの成長を見守っていくことを楽しみにしています。