2017年
12月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第七十九回

カテゴリ:医療関係, 明石・播磨

明石市民フォーラム
「どうする? あなたの看取り PART3」について

─明石市医師会では毎年市民向けのフォーラムを開催していますが、今年のどのようなテーマでしたか。

石田 今年は「どうする?あなたの看取り PART3」をテーマとして明石市民会館で10月21日に開催し、大勢の市民のみなさまにご来場いただきました。これまでも何度か在宅での看取りについて採り上げてきましたが、今年は高齢者のがんの看取りに焦点を当てました。

─第1部はどのような内容でしたか。

石田 第1部では明石市にある兵庫県立がんセンターの緩和ケア部長、池垣淳一氏を講師に迎え講演していただきました。現在は高齢者2人に1人ががんを患いますが、最期の2か月くらいまでは元気に過ごせ、その後急激に悪くなって亡くなるケースが多いので病状の見通しが比較的ききやすい病気です。ですから痛みをコントロールすれば家で過ごしやすく、最善を望みつつ最悪に備えることで自分らしく生き、自分らしい最期を迎えることが可能だとお話しされました。在宅医療では家族の理解と覚悟が必要ですが、特に明石では地域医療体制が充実しているので、サポート面では心配はないとのことでした。

─第2部ではどのような事例が紹介されましたか。

石田 実際の在宅での看取りの例を、3つ挙げて紙芝居で紹介しました。1例目ですが、在宅医療について家族で意見が分かれた例でした。奥さんが肝臓がんを患ったご主人を家で看取りたいと希望したのですが、息子夫婦がとても無理だと難色を示したので、奥さんが頑張って介護しました。ところが奥さんが介護疲れで倒れてしまいます。すると、息子の妻も頑張って介護するようになり、最期は家族みんなで看取ったというケースです。また、普段来ない親戚が「点滴をしたらどうか」と言ってきたのですが、点滴をすることによって、かえって苦痛や症状が悪化することもあるので、必ずしも良いことではないという説明も盛り込まれました。

─2例目はどんなお話でしたか。

石田 孫と同居する末期の子宮がんの患者さんの例です。癌末期の患者さんによく起こる便秘がひどくなってきて、訪問看護師に浣腸など便のコントロールをしてもらっていました。葬儀のことなど死後の希望を伝えられた孫は戸惑いますが、訪問看護師が中に入って調整しながら最期を看取りました。大切なのは自己決定、「どんな最期を迎えたいのか」で、リビング・ウィル、つまり生きている間に自分の意思をしっかり伝えることの大切さが主題でした。

─3例目はどんなお話でしたか。

石田 肺がん患者のケースで、開業したての医師が最初、患者とうまくコミュニケーションがとれなかったのが、甲子園球場前で撮った一枚の写真がきっかけでお互い阪神ファンだということがわかって心が通じるようになり、病状が芳しくない中で家族旅行がしたいという患者の希望を叶えてあげたことで生きがいをもって最期を迎えることができました。亡くなった日もお風呂に入りたいと望んだため、家族や訪問看護師などの協力で入浴させ、孫一人ひとりに声をかけ、長男の「あとは心配せんでええ。俺がしっかりやるから」という言葉を聞いて安らかに亡くなったのですが、われわれ在宅医療に関わる医師は患者さんの最期のメッセージを伝えられるようにすることも大切なんですね。3例いずれのケースも、患者さんがどういう生き方をしたいのか、どういう最期を迎えたいのかという自己決定と、家族が医療・介護のスタッフと連携してどのようにそれを支えていくのかということが大切だという内容でした。在宅での看取りを通して、患者さんやご家族、そしてそれに関わる我々医療スタッフも人間としての成長の場をいただいています。

─第3部はどのような内容でしたか。

石田 第3部はシンポジウムで、紙芝居の3つの例をもとに議論しました。ひとつ問題になったのは、がんでは容態が急変して亡くなることもありますが、その場合に家族が戸惑って救急車をよぶことがあるんですよね。でも、救急隊はあくまでも救急救命処置が使命ですので、よばれると心臓マッサージをして病院へ連れて行く訳ですが、がんの最期の人にそのような処置をしても意味がなく、患者本人にとっても救急隊員にとっても良いことではありません。患者や家族の希望により心肺蘇生をおこなわないことをDNAR(Do Not Attempt Resuscitation)といいますが、がんの病状の変化を家族に説明した上で、最期は救急車をよばず家でというDNARの意思表示をしっかり確認することとも大事ではないかという意見もありました。

─がんならではの看取りというのがあるのですね。

石田 肺や心臓の病気では家で看取ることは難しいのですが、池垣先生が講演でお話されたように、がんは亡くなる2か月前までは普通に暮らせ、その後急激に悪化していくので、その経過をしっかりフォローすれば在宅医療が可能です。明石市は在宅医療を支える訪問看護ステーションもたくさんありますし、往診をおこなう医師も多いです。在宅が難しい場合でも緩和ケア病床が他県や他都市と比べて多く、全国でもトップクラスの充実ぶりです。このような恵まれたシステムが備わっていますので、希望を持ちながら最悪の事態に備えることで、自分らしい最期を叶えてあげることができるのではないかと思います。

─フォーラムの内容をもっと詳しく知ることはできますか。

石田 明石市医師会のホームページで動画を公開していますのでぜひご覧ください。

※「明石市医師会 市民フォーラム」で検索してください。
http://www.akashi.hyogo.med.or.jp/forum/

第20回明石市民フォーラムでは、高齢者のがんの看取りに焦点を当てた

明石市医師会が開催する市民向けの医療フォーラムには、毎年大勢の明石市民が来場する

がんは亡くなる2ヶ月前から急激に悪化するため、経過をしっかりとフォローすれば、在宅医療が可能だという

明石市医師会理事
石田内科循環器科院長
石田 義裕 先生
〈2017年12月号〉
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