2015年
8月号
「コンパクトな都市だから、多文化、多世代交流が可能」。 RURIKO PLANNINGにて

オフィスも住まいも、 作り込まない〝ラフ〟な空間が 好きです 星加 ルリコさん

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 経済人

多文化に培われた気質がある

―星加さんにとっての神戸の魅力は?
星加 私は神戸で育ち、10年東京で住み、起業と同時に神戸に戻ってきました。神戸を出た経験があるから分かることですが、寛ぎがすごく大きな街だと思います。海と山がある自然環境にプラスして、刺激にも溢れています。

―どんな刺激でしょうか。
星加 ひとつが人。コンパクトなエリアにセンスの良い人が集まって暮らしています。もうひとつが、多文化であること。古くからの商店の中にも多文化だから培われた気質があります。東洋と西洋それぞれの人たちにとって、新しい発見がある街です。人と文化があり、かつ寛ぎがあるという相乗効果でできているのが神戸の魅力だと思っています。

―起業の条件も整っている街ですか。
星加 私は東京の都市計画コンサルタント会社で勤めていました。神戸に戻っても人脈がなかったのですが、神戸商工会議所の生活産業に関わる経営者さんの勉強会「神戸クリエイティブ・ビレッジ」の存在に大きな力を頂き、基盤をつくれたと思っています。大先輩の経営者さんに本音で経営について相談できる機会は、なかなか無いと思います。

―このオフィス開設に至った経緯は?
星加 港の海運倉庫が空いているのでシェアしないかと声をかけていただいたのがきっかけです。私は「拠点は神戸に置く」と決めていましたので、他の都市ではなかなか実現できないような場所、例えば異人館や海運倉庫をオフィスにしたいと思っていました。街中でありながら汽笛を聞きながら仕事しています。これは神戸だからできることです。

―オフィスのある波止場町周辺はお気に入りの場所ですか。
星加 そうですね。考えがまとまらなくなってきたら、ちょっと外に出て遊覧船乗り場の辺りを歩いてモザイクまで行って、ハンバーガー屋さんでポテトを買って帰ってきます(笑)。とてもいいリフレッシュになります。

空間づくりのキーワードは“ラフ”

―空間づくりで大切にしていることは?
星加 キーワードは〝ラフ〟。作りこまないことです。壁は敢えて白いペンキを塗っただけ、床も昔のまま。もしこれに壁にクロスを貼って床をタイルカーペットにしてしまったら魅力は半減してしまうでしょうね。机や椅子も敢えてガラスにしてニュートラルに。天井も4メートルあるので、空間自体に目がいくように工夫しています。
 家もラフにしたいと思っています。一般家庭の間取りも、もう少し自由な発想を活かせれば素敵だと感じます。例えば私は、洋服や小物が多いのでベッドルームはベッドだけ、残りの空間は全部クロ―ゼットでもいいと思っています。こんなことができる自由設計は理想でしょうね。

―クリエイティブな発想が生まれる空間の条件は?
星加 美しいものを多く見ることを心がけています。自分の感性を引き出してくれる絵や自分が気に入って選んだコーヒーカップ、そういうものに囲まれていることがクリエーターにとっては大事なことです。もっとも、これからはどんな仕事にもクリエイティビティーは必要ですから誰にとっても大事なことでしょうね。

―灘区六甲にお住まいなのもそのためですか。
星加 できるだけ五感をくすぐる環境にいたいと思っていますので、自宅から山と海が見えることは嬉しいです。夜に帰宅する時には山の香りがしますし、朝出かける時には朝日に輝く海と街を見渡しながら坂道を下っていきます。「あぁ神戸大好き!」って思いますね。

―住まいについての夢は?
星加 このオフィスに住みたい!ドカーンとしたコンクリートの空間にベッドだけ置いてある、海外のロフトでしかできないような住空間がここならできそうです。やっぱりキッチンや浴室は最新のものがいいですが、それ以外は、ラフな空間。工事のプロからアドバイスを受けながらリノベーションを行い、気に入った空間が造れたらいいなあと思います。

―和風、洋風のこだわりは?
星加 設計をやっている友人から教えてもらったのですが、人間として自然を大切にする空間で、月が見える、日の光がある、暖炉の火がある、土がある…〝月火水木金土日〟が家の中にあれば結果として和洋に関わらず居心地の良い空間になると。まさにその通りだと思っています。

神戸は日本のモデルになれる街

―神戸の都心部を中心に整備計画も進んでいますが、星加さんが思う神戸の魅力を生かせる整備は?
星加 人間も街もちょっとミステリアスな方が面白いですよね。歩いていると、シチューの香りがしてきて「何があるんだろう?」と角を曲がってみると「こんな所に洋食屋さんが!」という発見があるような街。巨大なチェーン店ではなく個人オーナーのセンスが光り、頑固親父がいる店やオーダーセレクトの洋服屋さんだとかがある街。神戸に根づいている大人の路地裏文化を生かしてほしいと思います。神戸はそれほど大きな規模の街ではないからこそ、人が中心の楽しく歩ける街づくりが可能です。都心に暮らすのなら、街や公園をリビングルームのように使える暮らしが実現できるといいですね。

―これからの神戸の理想像は?
星加 生活の場として勝負できる街だと思います。「暮らすなら神戸」と言いますが、生活に関わる仕事をするために必要な「暮らすようにビジネスする」にも最適な環境です。特に最近思うことは、コンパクトな規模の都会だからこそできる多文化・多世代交流です。私もおじいちゃんやおばあちゃんの仲間に入ってお話しして盛り上がることがしばしばあります。路面にはお店があり、上階にはシニアも若い人たちも移住者も一緒に生活する。今後ますます進むグローバル化や高齢化社会の中で日本のモデルになれる街だと思っています。

「コンパクトな都市だから、多文化、多世代交流が可能」。 RURIKO PLANNINGにて


ウォーターフロントを散歩することで気分転換になる。
クリエイターにとって大切なひとときでもある


オフィスには書籍やご自身がプロデュースした商品が“ラフ”に並べられている


壁には白いペンキを塗っただけ。倉庫だったこともあり天井も高い


波止場町にある海運倉庫をリノベーションしてオフィスとして利用している


「神戸に根づいている大人の裏路地文化も魅力」と星加さん


星加ルリコ

㈱RURIKO PLANNING代表
企画・クリエイティブディレクター
「神戸ビーフ」のブランディングや、神戸市がユネスコ「創造都市ネットワーク」のデザイン都市に認定される際のコンセプトメイクを担当。企画者・コンセプター・クリエイティブディレクターとして活動するとともに、神戸商工会議所デザイン都市推進委員会 副院長などを務める。

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〈2015年8月号〉
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オフィスも住まいも、 作り込まない〝ラフ〟な空間が 好きです 星加 ルリコさん
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