2月号

ベトナム元気X躍動するアジア 第14回|日本+ベトナムの経済見通し
昨年一二月二三日に神戸商工会議所・神商ホールにおいて神戸市顧問・神田眞人氏(内閣官房参与・財務省顧問)の特別講演会が開催されました。同氏は本年2月からアジア開発銀行(フィリピン・マニラ)総裁に就任予定。同行からは四半期毎に「アジア経済の見通し」が発表されています。今回は、神田氏の講演とベトナムの経済成長の要点を簡単に紹介することにします。
文・ 上田義朗
神戸市顧問 神田眞人氏の至言
「日本はまだ闘える!」
財務官として「円買い」を主導した「令和のミスター円」神田眞人氏の演題は「激動の国際社会と政策対応」。世界経済を縦横に分析する豊富な資料に基づく内容でした。
その主張の要点は、社会経済が世界規模で地殻変動しており、現状は今までと「別世界」という認識が不可欠。衰退する日本が今こそ本気で闘わなければ、大変なことになる。もちろん、その政策的な方策はある。
神田氏の指摘を先取りして久元喜造・神戸市長が「新しい神戸としてグルーバル戦略で闘う!」と力強く開会挨拶されたことが印象的でした。
人口減少対策として高度外国人材
日本は、人口減少と高齢化社会が進行中。未曾有の社会が目前に広がり、当然、新たな発想の経済社会政策が求められます。私見では当面、ジェトロが推奨する「高度外国人材」の活用が有効であり、その人材供給国としてベトナムに注目です。
ベトナム経済の高い成長性
図表によれば、ベトナムは二〇二四年・二五年にインドに次ぐ高い経済成長率(六・四%、六・六%)を示し、インフレは四%前後に制御。中国は成長率を維持しながら、インフレを抑止。アジアで有望な投資先がベトナムであることは間違いありません。
ベトナムの好機と脅威
トランプ新大統領の公約の一つは関税の賦課。対米輸出国は金額別でメキシコ・中国・カナダ・ドイツ・日本・韓国・ベトナム・台湾・インド・アイルランドの順位です(米国商務省、二〇二三年)。他方、ベトナムは米国から為替操作国また依然として「非市場経済国」に区分されています。米国からの対ベトナム投資や観光の拡大期待は「好機」ですが、対米貿易動向には注意が必要です。

講演中の神田眞人氏
上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
日本ベトナム経済交流センター副理事長
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO