2011年
12月号

桂 吉弥の今も青春 【其の二十】

カテゴリ:文化人, 神戸

走るという話

十一月六日に第七回をむかえた「なかうみマラソン全国大会」で走ってきた。フルマラソンかって?いやいやとてもそれは無理です。5キロを走らせていただいた、ほんと「走らせていただいた」という表現がぴったりの今回のマラソン大会だった。
私の妻が島根県安来市の出身で、そのご縁で落語会も安来で頻繁に開いていただいている。安来市のふるさと大使なるものにも任命していただいて、唯一の桂吉弥後援会なんかもあったりする。ありがたい話ばかりなのだが、去年の暮れぐらいから「吉弥を走らせてみないか」という動きが出てきた。安来にこれだけ来てるんだったら一大イベントのマラソンに参加させよう、しかもゲストランナーとして!吉弥後援会の皆さんが言い始めた。
高校の時はサッカー部、毎日5キロや8キロを全力で駆け抜けてから平気でグラウンドでボールを蹴っていた。しかしそれから二十年以上が経過し、体重も十五キロも増えている。なかうみマラソン最長コースのハーフマラソンなんてとても無理だと伝えると、距離は5キロだと、しかもゆっくり走ってくださればということだった。もう一人のゲストランナーがあの二大会連続オリンピックメダリストのエリック・ワイナイナさんというのは引っかかったが、四十歳を迎えて自分の身体に本気で向き合おうとしていたので、参加することに決めた。
まず西宮ガーデンズのイングスへ靴を買いに行った、靴下も購入。そう、私は形から入る男である。今そういうスポーツ系ショップに行かれてみれば分かるが空前のランニングブームである。先日の大阪マラソンが大きなきっかけで、神戸マラソンや奈良マラソンも年内に開催、これを機にと皆さんが走り始めている。
靴を履いて試しに近くの公園に走りに行ってみた。だいぶブランクは空いてるけどサッカー部であれだけ走り回ってたし、ジムにもたまに行ってるし軽く走れるだろうと自分に期待してた。甘かった、走るという形ができない、足がついていかない。胸が苦しい。あまりの想像とのギャップに驚いた。でももう日は迫ってくる、なんとかしなきゃ。とにかく体重を落とそうと決めた。
それでもなんとか恥ずかしくない状態でなかうみマラソンを迎えました。
前日ホテルでワイナイナさんとご挨拶、そこにもう一人のゲスト、二十四時間テレビにマラソントレーナーでずっと参加してはる坂本雄次さんがいた。お互い自己紹介をして食事をしながら世間話。「今まで走ったことありますか?」そんな質問がさりげなく坂本さんの口から出てくる、そして自分が今日までやってきたことを話す・・・。いま考えると、この時の話が大きかったように思う。やっぱりちょっと不安だった私が「大丈夫、明日はできるかもなあ」という気持ちになれたのだ。別に坂本さんからお墨付きをもらった訳じゃないけど、心に残った言葉二つだけ、「ほんとにゆっくり走ればいい」と「走ることはすごく楽しい」。これで楽になった。
 
ワイナイナさんも私も晴れ男、結構降ってた雨も止んだ。トークショーや坂本さんの体操が終わりいよいよスタート。スタート地点で坂本さんは私にだめ押し「吉弥さんホントゆっくり、ゆっくり行こうね」「はい」。
めっちゃゆっくり走った、後ろの人はどんどん抜いて行く、「吉弥さんどないしたん」という笑い声も聞こえないふりをしてゆっくり走る。
坂本さんがいなかったら、興奮とギャラリーさんの声援で絶対に飛ばしてたと思う。折り返し地点を越えると、反対に人を抜くことが増えてきた。無茶に飛ばしていた皆さんの足が止まっていたのだ。私は自分のペースで半分行けたという余裕ができて、観客の皆さんに手を降ったりランナー達とタッチしたり。最後まで歩くこと無く無事ゴール。楽しかった、ほんと楽しかった。うーん、ちょっとハマりそうです。

KATSURA KICHIYA
桂 吉弥 かつら きちや

昭和46年2月25日生まれ
平成6年11月桂吉朝に入門
平成19年NHK連続テレビ小説
「ちりとてちん」徒然亭草原役で出演
現在のレギュラー番組
NHKテレビ「生活笑百科」
土曜(隔週) 12:15〜12:38
MBSテレビ「ちちんぷいぷい」
水曜 14:55〜17:44
ABCラジオ「とびだせ!夕刊探検隊」
月曜 19:00〜19:30
ABCラジオ「征平.吉弥の土曜も全開!」
土曜 10:00〜12:15
平成21年度兵庫県芸術奨励賞

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