3月号
<インタビュー>美の新たな可能性の追求
田嶋株式会社 取締役社長
伊藤 紀美子さん
女性ならではの視点で事業展開
―社長に就任されてからファッションや美容のジャンルが加わりましたが、それは女性の視点と発想ですか。
伊藤 田嶋を引き継いだのは父が亡くなった平成7年、震災の年でした。大学卒業後結婚し、子育てだけをしてきた専業主婦でしたのでビジネスのことは何も分かりません。そこで、まずは自分がよくわかるものを扱おうと考えました。消費者の立場で見ることができ、日々の生活で使うもの。やはり女性ですから一番興味があるものといえば、身に着けるものでした。
―明治32年絹織物からスタートした田嶋ですが、業務内容も様変わりしていますね。
伊藤 時代の変化に伴って田嶋の業務内容はかなり変わってきて全く別のものになったと言っても過言ではないでしょう。今後も一つの事業を固守するのではなく、変化を的確にキャッチして時代の流れに合った事業展開をしていきたいと思っています。
―着物生地で作る洋服のオリジナルブランド「ミルアイ」誕生のきっかけは?
伊藤 商社として海外からの輸入製品、また国内の完成された製品を仕入れて販売していました。ところが同じ製品がもっと安くマーケットに出回り価格競争をしなくてはならず、弊社オリジナル製品がほしいという思いが強くなりました。自分のルーツ「日本」に素晴らしいもの、素晴らしい技術があるという思いに至り、京都で衰退の一途をたどる呉服文化に注目しました。そして6年前に始めたのが「ミルアイ」です。染め、織りの技術で生地からオリジナルを作り、外部デザイナーに委託します。ミラノでの展示会に出展したところ、大変注目されました。こだわりの生地から制作した製品はどうしても価格が高くなりますので、自社でイベント形式で直接お客様に販売する方式をとって現在に至っています。
―目指すのは和と洋の融合ですね。
伊藤 和をどのようにして現代の感性で受け入れてもらえるものにするかが難しいところです。日本人の第一礼装である和装着物ですが、私自身もあまり着ることがありません。でも何か一つ、和のものを身に着けたいという思いはあります。海外で活躍する女性も増えています。国際的な社交の場では特に日本人としてのアイデンティティー、誇りを持ってこのような生地で作った洋服を着てほしいところです。ただ、これはとてもニッチな商品でこだわりのあまり時として美術品のようなお洋服が出来てしまいまうんですよ。(笑)今の時代背景を考え、少しコストダウンの方法を検討中です。一方、洋服だけでなく、手軽なショールやバッグ、小物なども日本の生地を使いイタリアのデザインを取り入れながら「ミルアイ」の世界を造っていきたいと試行錯誤しています。
上質な天然成分と水 神戸発の基礎化粧品「プラスイ」
―今回、基礎化粧品「Plusui」(プラスイ)を開発されましたね。
伊藤 きっかけは「水」との出会いです。北海道の横津山系で1500万年前といわれる地層から出る湧水で、非加熱殺菌ですのでミネラルバランスが非常に良い、新鮮なナチュラルミネラルウオーターです。「Plusui」ブランドで500mlのボトル入りを飲料用として販売しております。
―なぜ、化粧品に使おうと?
伊藤 基礎化粧品で水はとても大事な要素です。このお水は分子サイズが細かいので、美容成分を早く有効に肌細胞に届けられるだろうと考えました。美容成分は天然由来の成分をぜいたくに配合し、加えて、お肌に浸透する機能性を高めるためハイテク成分も加えました。もちろん香料、着色料、鉱物油、合成の界面活性剤、防腐剤などは一切使用していません。
―どんなアイテムがあるのですか。
伊藤 肌はあまり構い過ぎると自然治癒力が弱まり、逆にたるみやしわの原因になってしまいます。高価で濃厚なクリームなどは必ずしも肌に良いわけではありません。プラスイはクレンジングと洗顔が肌ケアの基礎であるという考えの下、クレンジング、洗顔料、化粧水、美容液、ジェルの5点だけのシンプルな、保湿重視の基礎化粧品です。上質な天然成分と良質な水にこだわり、ていねいに作られた安全・安心な製品ですから、毎日使うことにより、肌に本来備わっている力を保ち、活性化させることができます。
―実際に使われた方の反応はどうですか。
伊藤 乾燥やくすみ、しわに悩む女性の皆さんに使っていただいていますが、「敏感肌でどの化粧品も合わなかったが、プラスイに出会って肌が変わった」といううれしいコメントもたくさんいただき、多くの方からご注文いただいています。特にエイジングケアが気になっている方におすすめです。
―特におすすめしたいアイテムは?
伊藤 ローションが一番人気ですね。また、最近新発売した「リフトアップジェル」は老化を防ぐといわれている芍薬エキスを始め、注目の美容成分を多種配合しています。
―プラスイの今後の展開は?
伊藤 インターネットも含めた自社通販が主体になります。また、多くの女性たちが癒しを求めて訪れるリゾートホテルもターゲットとなります。実際、お取引先のホテルのアメニティで使用していただき、良かったからといってご注文くださる方も多いんです。昨年6月には、マレーシアでの「グローバルブランド大会」で、プラスイが最高位の「金賞」を受賞しました。この大会は、アジアから世界に通じるブランドを育てようという趣旨で開かれ、今回は10カ国から130社がエントリーしました。今後アジア市場への展開も目指しており、この受賞は大きな自信と励みになりました。
―今後、田嶋が目指すところは?
伊藤 「本物の美の追求」を目指して体に優しい商品をキーワードにした美容と健康の分野と文化、匠の技、をテーマにした高付加価値の商品を提供していきたいと思ってます。売り上げ規模を求めるのではなく意義のあるビジネスをしたいですね。小さくてもキラリと光る。そんな田嶋を目指します。
―神戸発の本物をどんどん発信してください。ありがとうございました。
いとう きみこ
神戸生まれ。一男三女の母。神戸女学院大学 英文科卒。
1995年より、田嶋株式会社 取締役社長に就任。