3月号
“特別なもの”との出会い ベール・ド・フージェールの家具 8
佐藤よし子がご紹介する今月の逸品 ⑧
春の香が感じられる季節となりました。春霞にけむる神戸港が、長い坂道から観られるような季節の到来です。
ベール・ド・フージェールのウインドウの中にこのたび見つけたのは、19世紀のオーストリアで造られたと思われるデスク。オーストリアはハプスブルク家ゆかりの地。マリア・テレージアやマリー・アントワネットの名は、今や知らない人はいません。とりわけ、ヨーロッパの中でも貴族階級の女性の為の家具が沢山見られます。
マリア・テレージアンロココスタイルは、金彩が多く使用される事がその特徴ですが、この優雅な金属のデスクの天板にはガラスがはめこまれ、下のダマスクのシルクの布張りを保護しており、その周りのデザインは、英国の18世紀のインテリアデザイナー、ロバート・アダムが作り、貴族たちが好んだスクロールやアラベスク文様、鷲などが施されています。ネオクラシズムとロココスタイルが混在する珍しいデスクで、時には天板のガラスの上に可動式の鏡を置き、ドレッシングテーブル(化粧台)としても使用されたようです。現在は、その天板のキドニーシェイプを壁際に飾り、コンソールテーブルとしても使用していただける大変珍しい家具です。
19世紀に特別注文品としてあつらえられたものと思われます。貴婦人の艶やかな姿と拘りが感じられる繊細なギルトブロンズ、職人技が光っています。
神戸北野高級アンティーク家具専門店
ベール・ド・フージェール異人館通店
神戸市中央区山本通2-8-12
TEL. 078-261-9193
http://www.verre-de-fougere.com/
WAREHOUSE
神戸市中央区山本通4-26-14
佐藤 よし子(さとう よしこ)
1988年、日本初の英国式フィニッシングスクール『ザ・クイーンズ・フィニッシングスクール』を神戸にて開校。ハウスキーピングやテーブルセッティング、マナーについて指導。『ダウントンアビー』の世界などをレクチャー。NHKテレビ『美の壺』、『グレーテルのかまど』、雑誌『家庭画報』、『婦人画報』など各種メディアにて活躍中