2017年
3月号
古事記・日本書紀の神代巻に創祀の記載が残る「伊弉諾神宮」

日本遺産・淡路島を語る

カテゴリ:淡路島, 観光

昨年、淡路島は日本遺産の認定を受けた。
その申請段階から関わってきた一般社団法人淡路青年会議所の時枝弘記理事長にお話を伺った。

─淡路島は三つの市がありますが、島が全体となって日本遺産に認定を受けました。その経緯を教えてください。

時枝 淡路青年会議所は1963年に設立されました。当時は1市10町ありました。青年会議所は一般的に一つの市や町に一つですが、淡路青年会議所は「淡路はひとつ」という理念で市町を超えて結成され、現在もその伝統を受け継いでいます。日本遺産認定に向けた動きは、淡路島には豊かな自然や御食国と記されるほどの豊富な食材、伝統文化や温泉など様々な魅力があるのですが、逆にあれもこれもという状態になってしまっているのではないかという中で、国生み神話こそ島の原点であると考え、それを軸に島の魅力を体感してもらおうと行った2014年度の事業が始まりです。島内外の幅広い世代に国生み神話を知ってもらおうとアニメーションを制作し、DVDを配布しました。その報告に地元選出の西村康稔代議士を訪ねたところ、文化庁が日本遺産を新設するとご紹介いただきました。2020年の東京オリンピックまでに100件程度の認定をめざすということだったので、それならば淡路も取り組むべきではないかと、国生み神話をストーリーに2015年から認定に向けて本格的に動き出し、まず三市市長、さらに文化財にも関係する三市の教育委員会にもお声がけして、2016年に認定を受けることができました。

─先日、舟木遺跡で鉄器工房跡が発見されましたが、日本遺産の追い風になりましたか。

時枝 もちろんなりました。舟木遺跡は日本遺産認定の31の構成文化財のひとつです。こういった弥生文化を実感できる遺跡はとても重要だと思います。これから整備されていくことに期待しています。淡路島の日本遺産は日本ではじめて生まれた島だということと海人(あま)という淡路の民族が古代国家を支えたということをストーリーの軸にしています。舟木遺跡も昨年の松帆銅鐸の大発見も、その裏付けとしてかなり強力でしたね。特に銅鐸はまるで申請のタイミングに合わせて出土したかのようで、まさに神がかっていたと思います(笑)。

─食の魅力はどのようにストーリーに織り込まれていますか。

時枝 御食国は淡路のほか若狭と志摩の三つあったそうですが、淡路はその中でも物資が多く都へ運ばれていて特に重要視されていたそうです。その理由は、淡路では塩が作れたことや操船技術に長けた海人(あま)によりしっかりとした海路があったことなどが考えられます。また、豊かな大地が海を育み、好条件が揃っていたようです。今でも三毛作や四毛作が可能なのは、土地の肥沃さと人々の勤勉さがあってこそだと思うのですが、その勤勉さは日本人の根底にあると思えてなりません。そういうことを含めて、御食国になるべくしてなったのでしょう。世界的にも稀に見る豊かな島ではないでしょうか。

─海人とはどんな人たちですか。

時枝 海人は日本人の原点で、その頭領が伊弉諾大神ではないだろうかということです。非常に技術に長けた民族で、塩をつくっていたということは火を操る技術があり、炭をつくる技術もあった訳で、そこから鉄をつくる技術へと結びついたのかもしれません。また、操船に長けていたため天文学にも強く、方角を確実に読み取ることができたそうで、伊勢神宮や出雲大社をはじめとしてずいぶん離れたところに伊弉諾神宮と所縁のあるお社を建てているのです。また、海が豊かであるためには、野山が豊かであることが必要だということもわかっていたようです。海人に関することからも、淡路島が古代の都にとってかなり重要な場所だったことは間違いありません。

─淡路島日本遺産委員会では、今後どのような活動をおこなっていきますか。

時枝 淡路島日本遺産委員会は淡路青年会議所が事務局を務め、島内三市、淡路県民局、淡路島くにうみ協会、淡路島観光協会と連携して2015年に結成されました。まずは2016年度に立ち上げたホームページの多言語化をおこなう予定です。案内板も不足していますので、増設して特に道案内を強化していきます。フェスティバルの開催も検討中です。

─地域へはどのように貢献していきたいですか。

時枝 淡路青年会議所としては日本遺産をひとつの切り口と考えています。淡路島全体の魅力や情報を積極的に発信していきたいですね。今の組織を生かしつつ、継続的に事業をおこなっていくことも重要です。2015年度には、外国人を対象として国生み神話の地を体感いただくツアーを行い、アンケートでその価値を計ったのですが、「十分見応えがある」「ストーリーをもっと知りたい」などの意見が多くありました。まずは日本のはじまりの地である淡路島にたくさんの方々に来ていただいて、伊弉諾神宮や沼島など日本遺産の文化財群を巡って、いつ来てもおいしい食べ物や温泉などご堪能いただき、「国生みの島・淡路」という唯一無二のストーリーを体感していただければと思います。

古事記・日本書紀の神代巻に創祀の記載が残る「伊弉諾神宮」

伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)の二柱をお祀りし全国から崇敬を集める

樹齢900年を数える「夫婦の大楠」は伊弉諾尊と伊弉冉尊の神霊が宿る御神木として信仰される

国生みの偉業を果たした伊弉諾尊と伊弉冉尊
筆:栗田真秀
蔵:伊弉諾神宮

伊弉諾神宮を中心に所縁のある伊勢神宮や出雲大社などのお社が建つ

五斗長垣内遺跡は、弥生時代後期の国内最大規模の鉄器製造群落遺跡でもある

くにうみ神話の舞台となる沼島

「菱環鈕2式」と呼ばれる、弥生時代前期の松帆銅鐸。手前は「舌」(南あわじ市蔵)

一般社団法人 淡路青年会議所 第55代 理事長
時枝 弘記 さん

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〈2017年3月号〉
<特集>日本遺産・淡路島 淡路島の“美味しい”くらし ー 扉 ー
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