2017年
3月号
中学校は浜手に、高校は山手に夙川を挟むように位置する。写真は甲陽学院高等学校

文教都市西宮で100年の歴史を刻む紳士の学校|連載 神様に愛された地、夙川③

カテゴリ:教育・スポーツ, 西宮

甲陽学院中学校・高等学校 校長 山下 正昭 さん

中高一貫校の名門として知られる甲陽学院。文教都市・西宮を象徴するかのように、夙川を挟むように、浜手に中学校が、山手には高校が設立されている。
本年2017年には、記念すべき創立100周年を迎える。

甲陽学院の歴史は甲子園で始まった

大正6年(1917)、伊賀駒吉郎氏が甲子園に「私立甲陽中学」を設立しました。ところが学校経営は直後から窮地に陥っていました。そこで、古くから教育・文化に造詣が深く、地域に貢献してきた西宮郷の酒蔵を代表する辰馬本家十三代当主・辰馬吉左衛門氏に伊賀先生は援助を申し出たのです。辰馬氏は私財を投じ大正9年(1920)、財団法人「辰馬学院甲陽中学校」を設立されました。
さらに昭和4年(1929)には、辰馬吉左衛門氏個人からの財団への寄付によって甲子園に地上3階、地下1階の鉄筋校舎が建造されました。

中・高別々の学舎をもつことになる甲陽学院

第二次世界大戦後は学制改革によって甲子園の旧制中学を高等学校とし、香櫨園に中学校を新たに開設しました。西宮を代表する桜の名所で市民の憩いの場、夙川から一歩入ったこの場所、約3万5千平方メートルの敷地です。とても静かで落ち着いて学べる環境です。
この時既に、甲陽学院中・高は、別々の学舎をもつことになったのです。

辰馬家の神聖な土地に高校学舎建設

一方、戦後、進駐軍に接収された甲子園の学舎は荒れてしまいました。43号線と阪神電車に挟まれ、排気ガスと授業が中断するほどの騒音にも悩まされ、とても「学びの場にふさわしい」とは言えない環境でした。
どこかへ移転できないかと探していたところ、辰馬家の神聖な土地といわれ、手を入れず永久保存するはずだった、高台にある約11万平方メートルの敷地を譲り受けることができました。そういった経緯があり、特別な宗教を持たない甲陽学院ですが、高校の校長室には土地神さまを祀っています。昭和53年(1978)、角石町に新校舎が完成し移転することができました。授業中に鶯の鳴き声が聞こえるほどとても静かで、学びの場にふさわしく素晴らしい環境です。
こうして、夙川の海の手と山の手、いずれも恵まれた環境の中、二つの学舎をもつ、甲陽学院中・高がスタートしたのです。

違う場所だからできる、厳しい躾から自主性への転換

中学では生活態度や勉強のことなど、細々したことまで厳しく指導して基本的な躾は済ませ、高校ではほとんどのことは生徒自身の判断に任せます。中・高が別の場所にあるからできることのひとつで、同じ場所にあると「高校生はいいのに、なんで中学生はダメなんや?」ということになりかねませんからね。ただし、高校で自由にはなりますが、「勉強はしなくてはいけない」。応援歌で「正々堂々甲陽健児」と歌っているように日常的に「正々堂々と卑怯なことはしてはいけない」といつも生徒たちには言っています。

恵まれた環境の中、気品高く教養豊かに

本校教員の3割ほどが卒業生ですが、その先生方を見ていると自分の教科はもちろんですが、それ以外のこともいろいろ詳しいと感心します。私など自分の教科で精一杯ですので無理ですが…。中・高時代の過ごし方の違いでしょうね。本校のカリキュラムはごくごく普通で、どの教科も1週間に6時間を超えて授業はせず、数学や英語などに偏った授業もしません。大学入試に必要ないから受けないということも認めていません。「気品高く、教養豊か」という教育方針に沿って、体育や美術、音楽、情報、家庭科などもきちんと授業をします。家庭科の調理実習で生徒に、「おもしろいの?」と聞いてみると「楽しい」と。「なぜ?」と聞くと、「化学の実験は食べられないけれど、調理実習は食べられる」と(笑)。生徒にとっては化学も家庭科も大差ないんですね。

夙川の地で迎える100周年

甲陽学院は夙川の地で100周年を迎えることになりました。これを機に中学では手狭になった講堂建て替えに着工し、3月に竣工します。1・2階合わせて1100席、周りのタイル張り建物とマッチさせるデザインで景観を損ねることなく出来上がりました。次は古くなってきた芸術棟の建て替えができればハード面の整備はひとまず完了です。
今後考えなくてはならないのはソフト面です。学校でオリジナルテキストを作って統一した授業をすれば楽だと思うこともあります。しかし、それぞれ先生方に任せるのが最善の策だと思っています。「賢見思斉(けんけんしせい)」。これは、高校の玄関に掲げている論語の言葉で「自分より徳のある人を見習いなさい」という意味の通り、生徒同士、教師同士、生徒と教師、切磋琢磨することが大切だと考えています。

「白鹿」で知られる辰馬本家
13代当主辰馬吉左衛門

夙川沿いの静かな環境にある甲陽学院中学校

昭和53年(1978)に角石町に移転した甲陽学院高等学校

山手に佇む高校から見渡すことができる西宮の町並み

戦後の昭和24年(1949)に桜の若木が植えられ、今や桜の名所となった夙川

自然の地形や緑あふれる良好な環境が高く評価されている夙川

中学では規律を重んじる。化学の授業

高校は私服になる。自主性を重視する

中学校は浜手に、高校は山手に夙川を挟むように位置する。写真は甲陽学院高等学校

100周年を記念して建設が進む講堂

講堂は、2017年春の完成をめざす

山下 正昭(やました まさあき)
甲陽学院中学校・高等学校 校長

1947年大阪生まれ。尼崎北高校を卒業後愛媛大学文理学部理学科数学物理学課程入学。専門へあがるときに、数学と物理で迷ったものの数学を専攻。1970年4月から兵庫県立宝塚高校で数学の教員として教壇に立つ。3年後、甲陽学院へ転職。1999年4月から教頭。2009年4月から中・高の校長。今年度末で甲陽在職44年

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