12月号
英国と神戸 Vol.6 日本で最初に紅茶のティーバックを作った神戸紅茶株式会社
文明開花の時代、早くから外国文化が流入した神戸には、紅茶を飲む文化が根づいている。中でも神戸に拠点を置く神戸紅茶株式会社(前身は株式会社須藤)は、世界的に有名なリプトンティーを日本で最初に製造した会社であり、また日本で最初に「ティーバッグ」を作った会社でもある。
神戸紅茶株式会社は、食品卸売業「須藤信治商店」を前身として、大正時代に創業した。農学校出身の創業者が紅茶に関心をもっていたことと、創業の地が貿易港・神戸であったことから、創業当初から紅茶に関する事業を行っていた。昭和32年には、イギリスの大手紅茶メーカー「リプトン」の日本初の国内生産の工場に指定され、神戸に本社を置くリプトンジャパンと一緒に紅茶の生産を開始している。
さて、現在我々が紅茶を飲むのに欠かせないティーバッグは、1896年にイギリスで紅茶を飲む際の手間を省くために、茶葉をガーゼの袋に入れて糸で縛ったことが最初といわれるが、1908年にティーバッグとして消費者用に売り出されるようになり、大量のティーバッグが生産されるようになった。1947年には、ドイツで自動包装機械「コンスタンタマシン」が誕生。リプトンの紅茶製造のため、1961年に日本で最初に「コンスタンタマシン」を導入したのが神戸紅茶であった。それまでは、一つひとつ手作業でティーバッグを作っていたが、コンスタンタマシンの導入で1分間に150袋を生産することができ、飛躍的に効率が上がったという。
神戸紅茶はその後も数多くのメーカーの紅茶をOEM生産(委託者のブランドで製品を生産すること)し続け、紅茶製造の確固たる地位を築いた。1993年には、自社ブランドの「神戸紅茶」も発売し、原料から包装に至るまで、徹底したこだわりを貫いている。
神戸を土壌として生まれた紅茶の会社は、日本の紅茶文化を牽引し、また未来をも担っている。