10月号
2011 関西合同三田会 in KOBE
関西合同三田会への期待
およそ学校の価値というものは、卒業生によって決まるものである、と思っています。卒業生がどれだけ社会を良くするために貢献しているか、そして卒業してからもどれほど学校のことを愛してくれているか、ということです。その意味で、関西合同三田会の皆様方が、ビジネスの場で、公共の場で、あるいは家庭や地域社会において社会をより良くすることに貢献され、そして慶應義塾の塾員であることに誇りを持って常に義塾のことを想ってくださっていることは、まことに有り難いことであります。
御承知のとおり福澤諭吉は、大阪の堂島で生まれ、長じて瓦町にあった緒方洪庵の適塾で学びました。神戸では、明治11年の神戸商業講習所(兵庫県立神戸商業高等学校の前身)の開設にあたって、当時の兵庫県令・森岡昌純は、福澤諭吉に協力を依頼し、福澤が全面的に協力、業務一切を引き請けた、といったこともありました。また三田の旧藩主九鬼隆義は、廃藩後に主要な旧藩士とともに神戸に移り、貿易商社志摩三商会を設立するなど、福澤の思想を実践した人物の一人だと言われています。福澤も公私にわたって九鬼を助けました。
九鬼をはじめ、関西では福澤諭吉の考えを受け継ぎ、地域社会において様々な活躍をされた方々が続出しました。関西の発展に多くの塾員が貢献してこられたことは、慶應義塾の誇りでもあります。これからも関西合同三田会の皆様が、慶應義塾で学ばれたことを活かし、関西、日本、さらには世界の社会をより良くするために貢献されることを願っています。
福澤先生の時代にそうであったように、慶應義塾で学んだ塾生が地方に戻り、地方の活力になることが義塾の果たすべき使命のひとつだと考えております。すでに「学問のすゝめ奨学金」や、法学部の「FIT入試(AO入試)」といった、東京圏以外からの学生が慶應義塾に進学しやすいようにするための、新たな具体的施策も進めております。これからも慶應義塾が関西の皆様にますます愛されることを願うとともに、慶應義塾の卒業生が関西の活力を大いに高めてくださることを期待しています。
清家 篤
慶應義塾長