2月号
里親ケースワーカーの 〝ちょっといい お話〟
里親は、成長の途中からの子育てです。里親のもとへ来るまでに、子どもの心は傷つき、実の親と離れなくてはならない寂しさを経験しています。それだけに、里親さんの子育ては難しく、「ていねいな子育て」が本当に大切になってきます。時には親も子どもに気持ちをぶつけたくなりますが、それをこらえて、子どもの思いはどこにあるかを考え、思いを表現できるまでじっくり待つということでもあります。
ある一人の子どもの事例をお話しします。その子は新しい里親のもとへ行くときに、なかなかすぐには行けませんでした。小学校1年のときに里親に出会い、交流期間があったのですが泣いて部屋から出てこなかったりして、それでもその里親さんは、ずっとていねいに待っておられました。その後、一緒に暮らし始めました。
その子が6年生になり、小学校を卒業する際に、学校で「親への手紙」を書くことになり、私もそれを読ませていただきましたが、そこにはこう書いてありました。
「(里親さんに)出会ったのは××年でした。自分は逃げてばかりで、なかなかなつけなくてごめんなさい。それでもあきらめずに、来てくれてありがとう。私の不安を取りのぞくことに働いてくれてありがとう。××で失敗したときもはげましてくれてありがとう。
ケンカして家を出て行ったとき、追いかけてきてくれてありがとう。本当は追いかけてきてくれなかったらどうしようと不安だった。」
最後に、
「ありがとう、と言えなかったのに、ありがとうと言えるようにしてくれてありがとう」
と、書かれていました。このことは、子どもへの配慮は、そのときすぐに子どもから言葉として出てこなくても、子どもの心にはちゃんと伝わっているのだという事例ではないでしょうか。
アメリカで、3千人以上の子どもを育てた里親が来日した際、このような言葉を私たちに教えてくれました。
「Nothing you do for a child is ever wasted(あなたが子どもにしてあげられることで、無駄なことは何ひとつない)」―Garison Keillor
施設ではなく、家族という単位の中で、当たり前の生活を送りながら、子どもたちの身に付くことはたくさんあります。
お話/米沢普子さん
〈家庭養護促進協会 神戸事務所 ケースワーカー〉
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