2月号
PATISSIER eS KOYAMA(パティシエ エス コヤマ)|世界を魅了するショコラティエたち
スイーツから広がる宇宙と時代を築く〝創造主〟
圧倒的なものは、揺るぎない。
世界の頂に輝くその一粒は感性と技術のフュージョン、そしてイリュージョンだ。
パティシエ ショコラティエ
小山 進 さん
ここには「商品」なんて一つもない。すべてが「作品」なのである。だからここが「店」なのかどうか、正直よくわからない。
それもそのはず。小山さんは言う「商売をしているように見えるけれど、〝発表〟をしているんですよ」と。発表するためには、発表したくなるようなものではないと嫌という気持ちは子供の頃から一緒。外したくないもの、負けたくないものは、自分の中にクオリティのハードルを課し、必ず勝てるように準備し、取り組み、傾倒する。「それがたまたまお菓子であって、仮にうどん屋をやっていても面白いうどん屋になったと思いますよ」という話に思わず頷いてしまう。でも彼にしてみれば、自分に正直に生きているだけのようだ。そしてその生き方の結晶が「作品」として生みだされるのかもしれない。
「作品」~お菓子そのものはもちろん、コンセプト、パッケージ、お菓子の醸す場の雰囲気に至るまでのすべてが多くの人々を魅了し、何もなかった三田の郊外に行列を連ねさせ、今や押しも押されもせぬ全国区の人気店、いや、世界のPATISSIER eS KOYAMAへと羽ばたいた。
季節を愛でる京都のたおやかな文化に育まれた感性と鋭い味覚を武器に、フランスで最も権威あるショコラ愛好会「C.C.C.」のコンクールで2011年の初出品から7年連続で最高位を獲得。2013年からは「インターナショナル・チョコレート・アワーズ」にも出品し、2016年は世界最多受賞の金字塔を打ち立てた。しかし、小山さんは「自分の中のコンテスト」と位置付けている。それに勝ち抜いてこそ価値があるのだ。
2017~2018のチョコレートシーズンを彩る「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2017」のテーマは「DISCOVERY」。作品の種は、「気づき」。彼にとって五感とは、体全身で楽しむことを意味する。目の前の当たり前のことでも五感にふれれば、多くの「気づき」に出会う。その「気づき」からものごとの原点を突き詰め、咀嚼し、再構成する。しかも「中途半端は嫌なんですよ」と、やるなら徹底的に。その姿勢が生み出した珠玉のアソートを紹介しよう。
No・1 HARUは赤と緑のマリアージュ、ふきのとうと苺のコラボ。小山さんの名の通り、彼は常に「進」んでいる。ゆえに過去と今では立ち位置が違う。立ち位置が変われば見える景色も異なる。ふきのとうは5年前にも使用した素材だが、香りという持ち味を再発見し春へと誘う。
No・2 神の木は〝神の木〟と言われるクロモジの高貴な香り。クロモジはその辺の森に生えている樹木だが、そこに着眼したのは「気づき」のなせる業だ。
No・3 YUZUは日本人にとって身近な柚子に、スパイシーなエスペレットピーマンを合わせるという組み合わせの妙。ありとあらゆる素材を知り尽くした者でなければ到底発掘できない。
No・4 サンマルティンは、彼が訪ねたペルー・サンマルティンで出会ったカカオそのものの魅力をダイレクトに。素材を、そして自身を探求する旅はまだ終わらないというメッセージを添えて。
素材の滋味が綾を織りなす味覚の錦。それは実に奥ゆかしく、しみじみと舌を、心を虜にする。情熱を内に秘めつつ、しかしじんわりとその熱を放つショコラは、激情の恋を卒業した大人たちが本物の愛を伝えるにも相応しい「作品」ではないだろうか。
パティシエ ショコラティエ
小山 進 さん
1964年京都生まれ。2003年兵庫県三田市に「パティシエ エス コヤマ」をオープン。「上質感のある普通味」を核にプロフェッショナルな味を展開し続けている。16年には12歳以下のお子様しか入れないお店「未来製作所」が、「キッズデザイン賞:協議会会長賞」を受賞。フランスの「C.C.C.」のコンクールでは、2011年の初出品以来、7年連続で最高位を獲得。2017年10月にロンドンで開催されたインターナショナル・チョコレート・アワーズ 2017・世界大会では、24作品が受賞(金賞4品、銀賞11品、銅賞9品)。また、17年11月13日には敷地内に新たなブランドとなるデコレーションケーキ専門店「夢先案内会社 FANTASY DIRECTOR(ファンタジー・ディレクター)」をオープンした。
PATISSIER eS KOYAMA
三田市ゆりのき台5-32-1
079-564-3192
営業 10:00〜18:00
定休日 水曜・不定休
www.es-koyama.com/