2018年
2月号

音楽のあるまち♬5 神戸っ子たちは楽しいジャズが好き

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 神戸

神戸っ子たちは楽しいジャズが好き

ジャズライブ&レストラン ソネ 代表取締役 曽根 辰夫 さん

ジャズの楽しさやライブ演奏の魅力などを、神戸のライブハウスの草分け的存在「ソネ」オーナーの曽根辰夫さんにお話しいただいた。

楽しいジャズと難しいジャズ

―神戸はジャズの街と言われますが、演奏に特徴はありますか。

 日本中どこの街でも、特別なジャズの演奏形式はないと思います。地域によって微妙な違いがあるとすれば、聴くお客さんの楽しみ方ではないでしょうか。

―神戸流の楽しみ方とは。

 ジャズには楽しいものから難しいものまであります。私が長年、神戸のライブハウスやイベントなどでジャズの生演奏を聴くお客さんを見てきた限りでは、神戸の人は先鋭的な難しいジャズを聴くよりも、分かりやすいジャズを楽しみたいという傾向があるようですね。

―聴く人にとって先鋭的で難しいジャズとは。

 スタンダードな曲を演奏しているとミュージシャンは次第に飽き足らなくなってきて、もっと難しいことをやってみたくなって頭をひねって考えるものです。そうすると、「こんな難しいことができる」という技術の競い合いになる可能性があり、放ったらかしになった聴く人たちはだんだんと、「ジャズは難しいもの」と思うようになり拒否してしまうのではないでしょうか。

―分かりやすくて楽しいジャズとは。
 
 演奏でもヴォーカルでも、「メロディーラインが美しい」のひと言に尽きます。口ずさめないような曲は決してスタンダードにはなりません。原曲のメロディーを大切にしながら、ミュージシャンがどうアレンジしていけるかが技術の見せどころです。

―どんな方法でアレンジしていくのでしょうか。

 まずワンコーラスでメロディーを提示し、続いて演奏者共通のルールに基づいて展開していく、つまりアドリブにもっていく。アドリブがどんどん難しい方向にいってしまう人もいます(笑)。聴く人にとって分からないものになってきたら退屈ですよね。お客さんは正直ですから拍手も減ってきます。美しくアレンジして演奏したり、歌ったりする人もいます。お客さんは拍手を送ります。神戸の人たちは退屈したくない、楽しく聴いて感動したいということでしょうね。

―若い人たちは伝統的なものより先鋭的なものを好むのでは。

 それはどうなのか分かりませんが、ジャズが誕生してから100年以上たつ今でも、中高生のブラスバンドやビッグバンドではスタンダートな曲を伝統的スタイルで演奏するところから入っていきます。少なくとも分かりやすいジャズは引き継がれているのは確かだと思います。

ソネのジャズが目指すところ

―ソネのお客さんは分かりやすいジャズを楽しみに来ておられるのですね。

 もちろんそれもありますが、楽器や歌を生の音で楽しみたいというお客さんが多いですね。決して大音量にすることなく心地よい本物の生音で楽しんでいただいていますので、ソネでの演奏を聴いてジャズが好きになったと言っていただくこともあります。

―ソネで演奏したいというミュージシャンもたくさんいるのでは。

 たくさん来られますので、時には歌や演奏を聴きに行くことはあります。厳しいようですがなかなか難しいケースがほとんどです。嬉しいことに、「ソネでのジャズライブはいつきても安定している」と言っていただくケースは多々あります。

―新しい人材はどこから。

 ミュージシャンはいろいろなところに出演していますから、「ヴォーカリストでいい人がいます」と推薦して頂くことはあります。ミュージシャンのお墨付きにまず間違いはなく、「じゃあ聴いてみよう」となることはありますね。

―神戸で愛されたお母さまの曽根桂子さんが亡くなられて7年が過ぎました。辰夫さんから見て、どんな方だったのでしょうか。

 ミュージシャンだけでなく、俳優さん女優さんなど、非常に交友関係の広い人で、他人をもてなしたいという気持ちがすごくある人でしたから、みんなから慕われ、愛された人でしたね。

―ご自身、似ていると思われますか。

 母は女性ですし、優しい人でしたから、全く違うと思っています。母はいつも「自分がお客さんだったらどうだろう」と考えていたようです。もちろん私にもそういう考えはあるのですが、元々がミュージシャンだったこともあり「ミュージシャンがどう思っているか」が分かってしまい、どうしても私の方が辛口になってしまうこともあるかもしれません。

―正太郎さんもソネに戻って来られました。これからのソネについてはどうお考えですか。

 彼はいろいろと新しいことを始めているようですが、ある程度自由にさせています。私は今まで通り、ジャズは決して難しいものではなく楽しむものだということを広く知ってもらえるようにソネを続けていきたいと考えています。

「ライブが始まる時間が1番好きかな」と話す曽根さん

心地良い音が人々を魅了する

若い世代にもジャズの楽しさを知ってほしい

曽根 正太郎 さん

ジャズには子どものころから親しんできたが、芸能活動や幅広いジャンルの音楽活動の経験を持つ。「ジャズライブに関して僕が分かるのは感性に合うかどうかだけ。聴く人の立場です。それが一番大切なことだと思っています」と話す。3年前、神戸に戻って、「若い世代にもジャズの楽しさを知ってもらいたい」と、SNSを通じて積極的に発信を始めている。

変わらない空間に長年通うファンも多い

■ JAZZ LIVE&RESTAURANT SONE

TEL.078-221-2055
神戸市中央区中山手通1-24-10
17:00~24:00
無休 ★通常ミュージックチャージ1,140円(税別)

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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