12月号
生きたクリスマスツリーと「輝けるいのち」について考えたい
そら植物園株式会社 代表
西畠 清順 さん
無事に植樹を行うことができ、最高の気分です。私たち人間の生活に、木は欠かすことができません。家や家具、紙などに利用され、人間は植物に生かされています。今回のプロジェクトを通して、「輝けるいのち」について考える機会になればと思っています。
このあすなろの木は、世界一の高さのクリスマスツリーになりますが、根を張った“生きた木”であることにこだわりました。いつの間にか人工物のツリーが当たり前になり、本物の木を使うことの意味が失われつつあると思ったからです。日本では古来から何かを始めるときに、自然への感謝を込めて巨木を立てるという神聖な行為を行ってきました。この巨木を立てることで、復興と再生の象徴とも考えています。
木は本来、遠くへ行くことを本能としてもっています。タンポポは種子を飛ばし、ヤシの木は種が浮いて、遠くへ旅をしようとします。僕がこのあすなろの木だったら、富山県の氷見市から神戸にやって来たことを、喜んでいると思います。距離にして1,100kmですからね。
このあすなろの木は、今年のニューヨーク・ロックフェラーセンターのクリスマスツリーより7メートル高く世界一のクリスマスツリーになりますが、そのことが重要であるとは思っていません。むしろオーナメントの数で世界一をめざしています。皆さんの願いや想いが1本のクリスマスツリーに飾られている。素敵だと思いませんか。キラキラと輝くオーナメントは、夜だけでなく昼間でも美しく輝きます。5万枚を超えるとギネス世界記録になります。たくさんの皆さんのご参加をお待ちしています。
神戸の街全体とひもづけることが僕のミッション
清順さんのアツい想いに共感し、プロジェクトをサポートするのは、ARIGATOで世界を変える(株)ARIGATO-CHAN代表、坂野雅さん。素晴らしい環境資源に恵まれた神戸の物語をさらに高めるプロジェクトのディレクションや企画立案を手掛けている。「明日への命をつなぐ木をメリケンパークのみならず、神戸の街全体とひもづけることが僕のミッション」と語る坂野さん。
思いついたのは、世界一のクリスマスツリーなのだから、世界一にこだわること。清順さんがもたらしてくれた世界一のチャンスをキャッチして神戸の魅力を発信する原動力にしようと、まずはサポーターズガイドブックを作成した。
ツリーを観たあと、街の飲食店や宿泊施設へ足を運んでもらうため、自称、世界一の男前がつくる前菜など、各施設で世界一の特典を用意してもらう。特典を受けることができる目印「神戸タータン」のリストバンドを配布し、地元民は左手、観光客は右手に巻き、町を両者のコミュニケーションの場にしてしまおうという案もある。
神戸には世界一のものがたくさんある。クリスマスツリー用の飾りが作られ、神戸はクリスマス用品の発祥の地と言われている。世界一の灘の酒蔵で飾られている杉玉をオーナメントにしてはどうか。洋菓子の街にふさわしいシュトーレンのイベントを企画しよう…、神戸全体が世界一の大騒ぎとなる楽しい仕掛けが山盛り。
西畠 清順(にしはた せいじゅん)
幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目であり、そら植物園(株)代表取締役社長。日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、プロの植物業者等からの依頼に応え、さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる