2017年
5月号
美しい花々が季節の訪れを告げる庭園

対談/進化する名門私立中学校 第6回 神戸海星女子学院中学校

カテゴリ:教育・スポーツ, 神戸

何ごとにも興味をもって見識を深め、自分の意見をもつ

神戸海星女子学院 中学校・高等学校 校長 糸井 孝幸
日能研関西本部 代表 小松原 健裕

名門私立中学校に多くの塾生を合格させている日能研関西代表の小松原健裕さんと関西名門校校長の対談。
第6回目は、神戸海星女子学院中学校・高等学校 校長の糸井 孝幸さんにご登場いただきました。

自然豊かで通いやすい立地のもとで開校

小松原 眺めが良くて緑豊かという大事な要素を備えている学校は神戸では珍しくはないのですが、神戸海星は駅からもそれほど遠くなく、街中からも離れていないという通いやすい立地ですね。保護者としても安心な環境です。これほど条件が整った青谷で設立された経緯は。
糸井 戦後間もなく、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」のシスターたちが別の修道会から旧制高等女学校を引き継ぎ、下山手に仮校舎を置いていました。新制高等学校として認可を受けるため広い土地を探していたところ、報徳学園さんのご厚意でこの素晴らしい環境のもと、土地を入手することができ、1951年に小・中・高等学校を開校しました。見渡す限りの焼け野原の中、戦後の神戸市で建設された最も大きな建物だったそうです。神戸港から校舎とマリア像がよく見え、シスターたちが出港して来たマルセイユの街並みを彷彿させたと聞いています。
小松原 当初はインターナショナルスクールも併設されていたそうですね。
糸井 国際学校も引き継ぎ、ステラマリス・インターナショナルスクールとして同校舎で開校し、その5年後に専用校舎が完成しました。当時神戸には多くの外国船が入港していた関係もあり、170人ほどの生徒が在籍していましたが、生徒数が減少したため、1980年に閉校しました。
小松原 神戸の学校は制服が特徴的ですが、その中でも神戸海星の制服を着ている中高生は子どもたちの憧れです。
糸井 第2代校長がパリで出会ったガールスカウトのような可愛らしくて清楚な制服にしたいと写真を見ながら再現されたと聞いています。冬服のブラウスと上着襟周りがボータイカラーになっている特徴的なデザインです。

自分なりのやり方で学び、奉仕の心と国際性を身に付ける

小松原 東北の震災以降でしょうか…勉強や進学だけでなく、他者への思いやりを学校教育の中でどう身に付けていくのかを重視する傾向にあるように思います。神戸海星の「真理と愛に生きる」という言葉が、子どもたちや保護者の皆さんの心に届く時代になったのではないでしょうか。
糸井 この理念は修道会の創立者であるマリー・ド・ラ・パシオンが常日頃から語っておられた「愛をもって真理にたどり着きなさい」という言葉が基になっています。「真理」は人が本当に幸せになる生き方、「愛」は相手を思いやり大切にすることと捉え、愛をもってそのような生き方ができるようにという願いが込められています。
小松原 教育方針に「学ぶ姿勢を育てる」とありますが、どういう姿勢なのでしょうか。
糸井 全ての教員が生徒一人ひとりの様子を見ながら寄り添い、指導し、励ますことを前提としています。生徒は自分なりのユニークなやり方で学習に取り組み、成果をそれぞれが認めて自信を付け、意欲を高めて次のやる気につなげ、学びに向かうというサイクルを育てることです。
小松原 確かに神戸海星の先生方は生徒一人ひとりに丁寧に声をかけてくださっていますね。「奉仕の心を育てる」というのは。
糸井 奉仕の心は相手の立場や背景を思いやり、さらに相手のために自らを使う姿勢を育みます。内面の成長が著しくなる中学の早期から取り組むことに価値があると考え、中1では総合福祉施設での体験学習、中2では養護学校との交流学習に全員が参加します。生徒の希望に応じてその他さまざまな奉仕活動に取り組むことができます。
小松原 国際性については。
糸井 フランスのシスターたちによって設立された神戸海星は当初からグローバルな視点から外国語教育と異文化理解教育を取り入れてきました。スピーチコンテストや異文化理解合宿、オーストラリア交換プログラムなどを通して国際性を養い、価値観の異なる相手も尊重できる姿勢を育てています。
 また、昨年はコンピューターによる語学支援システムを導入したCALL教室を新設して2020年から変更される大学入試方法に対応できる教育の充実を図っています。英語はもちろんですが、中3で英会話の他にフランス語も選択できるのが本校の大きな特徴です。例年、約半数がフランス語を選択し、誇りを持ち一生懸命取り組んでいます。高校になると進路の可能性を広げるさまざまな選択科目を設けていますので、進路によってはフランス語を続けて選択しづらくなるのが実情です。
 しかし、「それでもフランス語を勉強する」と気概をもって授業を受ける生徒もいます。高2では選択者のほぼ全員がフランス語検定3級に合格し、年に数回はフランス人を講師に招き、ディスカッションにも挑戦しています。

個性をどんどん発揮して、自分の将来に結び付けよう

小松原 女性も社会に出て活躍するというのは、最近一般的になってきた考え方ですから、進路の指導は難しいのではないでしょうか。
糸井 本校では、早い段階から自分の将来の展望を見据えて学べる環境があります。同時に「女子はこの職に就くはず」という考えにとらわれずどんなことにでもチャレンジを促す教育を行っていますので、ほとんどの生徒は6年間かけていろいろな経験をしながら将来の進路を選択しています。例年、卒業生約145人中、国公立大学現役合格者が50人ほど、その約半数が理系というのも成果のひとつかもしれません。また、絵が上手、バレエが得意、英語やフランス語のスピーチがうまいなど、個性をどんどん発揮することも良いとしていますから、そのような道を志す生徒もいます。
小松原 神戸海星の生徒さんたちは個性をのびのびと発揮している印象はあります。
糸井 本校では自主性を重んじ、ほとんどの行事が生徒主体で進められています。リーダーになる人、準備する人、陰で支える人など役割を分担し、生徒それぞれが自分の個性を発揮しています。
小松原 日能研関西から毎年30人前後が入学しますが、勉強はしっかりしながらも、どこか余裕がある明るい生徒が多いです。子どもがもつ可能性を6年間の一貫教育で伸ばしてもらえるという信頼を寄せている保護者の方が多いです。女子校の場合は、大学実績と女子教育のバランスが問われます。その点、神戸海星は高い次元でバランスがとれている。近年女子校が苦戦していますが、神戸海星の人気は今後さらに高まると考えています。実は日能研関西でも今年度から神戸海星対策を立てる予定です。
糸井 ありがとうございます。神戸海星は今まで通り、深い愛情と豊かな心、チャレンジ精神を育てることを目標としていきます。そして最も大事なことは、さまざまな問題に関心をもち見識を深めることによって、筋の通った自分の意見をしっかりともつことです。この根っこになる部分を大切にして育んできましたが、今後も同じように育んでいきたいと考えています。

美しい花々が季節の訪れを告げる庭園

白い外壁と、季節の花々が生徒を迎える

約1000人収容できる講堂

8つの運動部と11の文化部が学院生活に豊かな彩りを添える

体育祭では、学年全員がひとつの目標に向かう

神聖な空気に包まれる聖堂

海星女子学院の象徴マリア像の前で

糸井 孝幸 神戸海星女子学院 中学校・高等学校 校長

糸井 孝幸(いとい たかゆき)

神戸海星女子学院 中学校・高等学校 校長
1957年、兵庫県生まれ。淳心学院中高等学校卒業。大阪大学工学部卒業、同大学院修士課程修了。1982年から大阪聖母女学院中高等学校、1989年より神戸海星女子学院中高等学校に数学教諭として就職。2015年より同校校長に就任。

小松原 健裕 株式会社 日能研関西 代表

小松原 健裕(こまつばら たけひろ)

株式会社 日能研関西 代表
甲陽学院高校、慶応義塾大学と中高大を私学で学ぶ。同大学法学部卒業後、日本IBMに入社。主に金融機関システムの提案に携わる。事業承継のため日能研関西に入社。授業担当科目は算数。京都本部長、副代表を経て、代表に就任。日能研関西本部業務全般に加え、日能研グループとの連携、私学教育の振興にも携わる

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〈2017年5月号〉
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