2018年
8月号
ハシビロコウ 撮影/中村治正

ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.10

カテゴリ:医療関係, 神戸

【Gorilla Tracking】④

文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)

 次の日は動かない鳥、またも絶滅危惧種ハシビロコウを訪ね湿地をボートで進みます。英語でShoebillと言って文字通り木靴のようなくちばしを持つ大きな鳥で日本ではほんの幾つかの限られた動物園でしか見ることは出来ません。今日もパピルスの茂みにじーっと立って水中の魚を探しています。時々膝を大きく高く曲げて1、2歩抜き足差し足で歩く以外は固まったように全く動きません。5人くらい乗れる小さな船で村の船頭さんが案内してくれましたが彼が鳥を指して突然日本語で‘ハシビロコウ!’と叫んだときはびっくりしました。小学校2、3年生の背丈で長さ20㎝幅10㎝の巨大なくちばし、鋭い眼、セサミストリートのBig Birdが怒りの目で立っている感じです。この無防備に立つ生活感の無い大きな鳥がこの湿地で生まれ暮らしていけることに驚きと不思議を感じました。
 感動の連続の旅も最後の日を迎えました。カンパラへの道中、道端の1軒の家をガイドのHamletの尽力で訪問させていただきました。
 この旅で見かけた家々の感じからは平均より少し貧しい村のように見えました。赤土の道から数m下がってレンガ建ての家があり、家の脇にはバナナ畑があります。ウガンダではバナナがたくさんできるので、本当に飢えることはないのです。バナナの木は1本に1回しか収穫できないそうで、高いところにたわわに実ったバナナも木をバッサリ切って収穫します。木は地下茎で次々と生えて実をつけます。畑の横に赤土の高さ2、3m、底辺1.5mほどの小山があり庭の裏の土で作ったレンガを積み上げ外側を土で覆い窯にして焼いています。このレンガはこの家族の長男が自立したときにそばに家を作るのに使うそうです。招き入れられた家は床は無くデコボコの赤土のままでレンガむき出しの壁で2、3畳位の小さな部屋に仕切られていますがドアは一切ありません。一部屋だけ簡単なベッドがあり、このメインベッドルーム以外は土の上に何かを敷いて寝るようです。
 一部屋にはバナナの葉が乱雑に敷いてありシャワールームとのことです。電気もガスも水道もありません。たまに他の村で井戸を見かけたこともありましたがほとんどがまだ川の水を飲んでいます。NGOなどが水を沸騰させるよう啓蒙活動をしていますが煮沸した水は不味いので、自分たちは生水を飲む、とのことでした。両親と子ども6人くらいの家族でした(左側写真下から2段目)。この国の1人の女性の平均出産数は6人(日本1.39)で初めての出産年齢の平均は18歳(日本28歳)です。乳児死亡率は63/出生1000(日本2.17)です。この死亡率の高さはその国の医療レベルの低さを示しユニセフなどが発展途上国への援助と言うことで寄付を募ってきました。集まったお金はミルク、教科書、ワクチン、蚊帳を買うために使いますと説明されています。確かにワクチンは奏効してこの国の平均年齢は14歳(日本49歳)、人口の半分が子どもです。65歳以上の人数は2.1%です。この10年で人口は1.5倍に増加、1960年の人口の5倍です。AIDSは20年前には20%の罹患率であったのが今は6.5%で寄付金は役に立っているようには見えます。ただ、蚊帳に関しては観光客用にしか、目にすることはありませんでした。食事やほとんどの生活を屋外でするのでその間に蚊に刺されてしまいます。寝るときだけの蚊帳はマラリアの予防に貢献できているか疑問です。私たちの雇ったガイドや運転手さんにマラリアになったことがあるか尋ねたところ返事は‘Many times !’でした。
 今のところ蚊帳以外に長期的にマラリヤを予防するすべは無くウガンダの死亡原因の1位はマラリアです。ちなみに2位は呼吸器疾患、3位はAIDSとなっています。
 しかし実際は死亡統計をとれるようなシステムは整っておらず病名もつかず自然に死んでいく人数が最多ではないかと現地の人は話してくれました。

ハシビロコウ 撮影/中村治正

この乾いた土に稲を育てるそうです 撮影/中村治正

レンガを焼く窯 撮影/中村治正

できあがったレンガ 撮影/中村治正

台所 撮影/中村治正

右から2人目がお母さん 撮影/中村治正

水浴び用部屋 撮影/中村治正

バナナ畑のむこうにトイレ 撮影/中村治正

レンガ用の土 撮影/中村治正

夕方畑仕事を終えて帰る 撮影/中村治正

ポリタンクを持って井戸で水汲み 撮影/中村治正

サバンナの夕刻 撮影/中村治正

サバンナの夕刻 撮影/中村治正

文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)

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