2018年
8月号
のどかな時間の中でヤギ達がのびのびと生活している

有機農業で社会を変えるナチュラリズムファーム大皿一寿さんの挑戦!

カテゴリ:神戸, 見どころ

自然の摂理を大切に

 西神の住宅街を向こうに眺める玉津で、野菜たちが心地よさそうに太陽を浴びているナチュラリズムファーム。取り組んでいる有機栽培は有機JASの認証を取得済みで〝自称〟ではなく公的に認められ市場の信頼も厚い。有機JASの基準でも使用が認められている農薬があるが、一切それを使用しないどころか「飼料に農薬が含まれたり、飼育に薬品が使われていたりするかもしれないので」と、牛ふんなど畜産由来の資材も使用しないという徹底ぶりだ。
 しかし、農薬を使わないと病気や害虫を防ぎきることができないのではないか?という疑問がわく。「実は土のバランスが整ってくると、病気や害虫は出にくくなるのです。健全な土壌に健全な種を蒔くことです」と大皿さん。だが、ある程度虫はつくので、防虫ネットなど物理的方法も使用する。それでも多少食害に遭うが、それは虫も好むほど美味しいという証左だろう。
 また、同じ野菜を連続してつくると、連作障害がおこる。これは土壌中の微生物叢が単純化して病気が増え、同じ野菜を食べる害虫も次々発生するためだが、慣行栽培ではこれを防ぐために善玉菌まで殺す殺菌力の強い消石灰と農薬で防除する。しかし大皿さんは輪作、つまり違う作物を栽培するローテーションを組むことで解決している。
 化学肥料の代わりには、米ぬか、油かす、牡蛎殻(かきがら)など人間の食物に由来する素材を、その地の常在菌、乳酸菌や納豆菌などで低温発酵させる「ぼかし」を使用。神戸大学名誉教授にして1970年代から有機農業の大切さを訴え続けてきた保田茂氏の指導を受け「天地有機」、つまり自然の摂理に従い植物のポテンシャルを引き出し、野菜を「つくる」のではなく「育つ手助けをする」というスタンスで取り組んでいる。だから健康な野菜が育つのだ。

食の見直しから農業へ

 大皿さんの農の原点は、食を見つめ直すことだ。以前の勤務先の若者が食事の時にスナックや菓子パンなどを食べていたのを見た大皿さんは、人材育成と福利厚生の一環として食の改善を会社に提案、神戸の実家の田畑を活用して週末農業をスタート、安全を考えて化学肥料や農薬を使わず、有機栽培に取り組んだ。すると美味しいと評判になり、「野菜嫌いの子もサラダを食べるようになったし、僕自身の健康のためにもなりました」と大皿さん。そのうち農業の面白さにも魅了され、有機農業は環境への配慮という点もリサイクル業界にいた自らの目指すところと一致していたこともあり、大皿さんは独立する決意を固めた。
 そして「有機農家は全農家の約0.5%しかないんです。そんなところで競争してもしょうがないし、むしろ手を組んだら可能性が広がる」と生産者グループ「BIOクリエイターズ」を結成した。単独で農業をおこなっていると情報交換や相談の相手もいないし、販路も限られる。グループを結成することでそんな不安も解決するだけでなく、「有機農家は〝形の良いものを大量に〟というところに重きをおいていないので、収益が上がりにくいんです。だから個人やレストランへ直売するんですが、めいめいでやるより効率的で、品目や量に対する注文にも柔軟に対応できます」と大皿さん。メンバーが得意な野菜をそれぞれ担当し、限られた耕地と労力である程度量の拡大ができただけでなく、メンバーの「個性」という付加価値が加わった。これも綿密に交流し、信頼で繋がるメンバー間の絆のなせる業。「ゆくゆくはメンバーが独立し、新規就農者を束ねて新しいグループを結成してほしい。適度な規模のグループがたくさん活動すると、もっとスムーズな社会になるのでは」と、大皿さんはさらに先を見つめている。

新たな農の可能性を

 ナチュラリズムファームではほかにも、これまでの農業の常識を変える新たな取り組みに挑んでいる。その一つの核がCSA(Community Supported Agriculture)だ。これは産消提携の取り組みで、実は1970年代に兵庫県内でおこなわれた契約栽培が起源だという。しかし日本では広がらず、アメリカで爆発的に発展した。EAT LOCAL KOBEのモデルにもなったポートランドはCSAでも進んでいて、作付前に契約して支払い、その資金で種苗や資材を購入し、できた農産物を納品するというシステム、つまり前払いが一般的だ。一方で日本は決済までが長すぎで、それが農業がうまくいかない原因の一端でもある。CSAは日本の農業を元気づける処方箋になるかもしれないが、成功するかどうかはわれわれ消費者がカギを握っているとも言える。
 大皿さんはほかにも、家畜を耕作放棄地の再生につなげる久元喜造神戸市長肝いりの「KOBEメイ鳴プロジェクト」にも取り組み、ふんで圃場を肥沃にするだけでなく、ゆくゆくはヤギのミルクのチーズづくりも視野に入れている。また、神戸のブルワリーとタッグを組んで神戸産素材100%でビールを造る計画だ。そのために麦の栽培に取り組むが、大麦は単価が安く、利益に結びつかない。そこで大皿さんはビール粕を畑に戻したりヤギの餌にしたり、さらにグラノーラなどの商品開発に結びつけようと思案している。いずれも物質循環の視点から環境にもやさしい。
 「農業という産業をベースに、地域の取り組みとマッチングして、新しいビジネスを構築したい」。大皿さんが耕すのは畑だけでない。私たちの地域の未来も大地から掘り起こしている。



のどかな時間の中でヤギ達がのびのびと生活している


Bio creator’sCSA野菜セットは新鮮な旬の野菜でいっぱい


「ケール」の畑には雑草も共存。「自然でしょ」と大皿さん


奥様の純子さんは、ハーブづくりがお気に入り


収穫前のグリーンリーフ。グラデーションが見事


直売所では消費者は生産者の顔が見えてもその逆はないが、CSAは生産者も消費者の顔が見える。だからこそ「誠実でないといけない」と大皿さん


〒651-2142
神戸市西区玉津町二ツ屋286-1
TEL : 090-8934-6611
mail : info@naturalismfarm.com
http://www.naturalismfarm.com/

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