8月号
まごころをこめて|村岡 靖泰 <スティンドグラス作家>
まごころをこめて
神戸のクラフトマンたち
光が射し込むと建物の中に美しい色の光を落とし、夜は建物の外に輝く光を放つスティンドグラス。「スティンドの光には、人の心を癒す力があるんです」と、40年以上にわたりスティンドグラス作品を造り続けてきた村岡さんは話します。
光の加減によって刻一刻と輝きの表情を変えるスティンドグラスは、「世界最古の可変芸術」だという。村岡さんはヨーロッパで自らオーダーし買い付けてくるガラスを、より日本の建物や環境に合う淡い色合いを実現させるため、伝統的な「腐食」の技術によって美しいグラデーションを創り出す。
もとは銀行員だったが、ノートルダム大聖堂のスティンドグラスの美しさに魅了され、本場ヨーロッパへ。スティンド工房のオーナー、フィリップ・エドガー氏との出会いから、世界的に有名な工房「ジョン・ハードマンスタジオ」に日本人として初めて弟子入り。客船のスティンド造りやミュージアムの修復など、10年の修行ののち、J・H工房では異例ともいえる“のれんわけ”を許された。村岡さんは今も、当時身につけた技法を守り続けている。カットしたガラスをフッ化水素酸で腐食させグラデーションを表現する「エイシット技法」、絵付けをした後さらに焼きつけるなど、時間は倍かかるがやはり名門の伝統的な技法は、光の美しさがちがう。阪神・淡路大震災で建物は倒壊しても、村岡さんのスティンドグラスは一枚も割れなかったほどの強度も備える。
神戸マイスター、現代の名工等の認定のほか、長年の製作活動に黄綬褒章を受章。「それらはすべて僕一人でいただいたものではないんです。エドガー氏、デビッド・コーアン先生、渡欧に大反対しながら支えてくれた両親などお世話になった人すべてのおかげです」と村岡さん。
現在村岡さんが重要視しているのは後継者の育成。「僕が学んだ伝統的な技術を次世代に受け継ぎたい」。北野のアトリエには、東京、名古屋、九州など全国から弟子が訪れている。
スティンドグラス作家
村岡 靖泰さん
■スティンドグラス GLS-M
神戸市中央区北野町2-2-1-204
TEL:078-221-6162
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