8月号
【KOBECCO Interview】
古きものを敬いながら 攻めの心を忘れることなく
テレビ『暴れん坊将軍』は、1978年に放送がスタートし、25年にわたり愛された大ヒットシリーズ。昨年は、17年ぶりに『新・暴れん坊将軍』として復活し、舞台版『暴れん坊将軍』も大好評、街には上様グッズを揃えたポップアップショップまで登場しました。
今月は『松平健×コロッケ45周年特別公演 暴れん坊将軍 THE STAGE2 狙われた将軍』大阪公演を前に、八代将軍・徳川吉宗、松平健さんにお話いただきました。上様が語る『暴れん坊将軍』、お楽しみください。
俳優 松平健さん
―テレビ『暴れん坊将軍』の放送がスタートしたのは1978年。現在も吉宗を演じていらっしゃいます。
撮影が始まった時は、まだ20代前半でした。ベテランの先輩方に囲まれて、まわりにすごく気を遣っていたことを覚えています。初めての時代劇の主演作で、共に歩んできた、私の代表作といえます。
今でも変わらず、応援してくださる方がいるのはありがたいことです。
―若いころに〝将軍職〟に就任されましたね。ご苦労もあったのでは?
した。立ち廻りは殺陣師がいるので教えてもらえますが、将軍の所作を教えてくれる先生はいませんから(笑)。
日本舞踊を習っていたので和装で動くことには慣れてはいましたけれど、殿様の立ち居振る舞いとなるとまた違ってくるので、歌舞伎をよく観に行きました。歌舞伎の世界では殿様が動いていますから、座り方や着物の捌き方を見て、そこから〝自分流〟を作っていきました。歌舞伎は私にとって所作の先生ですね。
―歌舞伎が先生…。では、殺陣の先生は?
師匠は勝新太郎先生です。師匠の殺陣は、今でも私の憧れです。『座頭市物語』の撮影中、半年ほど付き人をしていたので、ずっと近くで見ていました。迫力、スピード感があり、大きな影響を受けていますし、勝先生のような役者でありたいと思い続けてきました。
私が『暴れん坊将軍』で育った東映京都撮影所の殺陣は、日本舞踊を舞うように美しさを追求したものでしたが、東京での撮影の際には、豪快にぶった斬るのが良しとされていて、踊ってるような立ち廻りはダメだという指導を耳にすることもありました。東と西、それぞれの美学といいますか、そんな違いもありました。
―舞台ではそんな上様の殺陣を目の前で見ることができます。
動きとしては舞台もテレビも変わりませんが、映像と違って途中で止めることはしませんから、お客様には息づかいやスピード感をリアルに感じていただくことができます。特にラストの立ち廻りシーンはおもしろいですよ。
―舞台の見どころを教えてください。
今回はコロッケさんと一緒なので、お客様にはたくさん笑っていただけると思います。コロッケさんは元盗賊の傘屋を演じます。モノマネは一切なしで役者に徹しているのですが、彼のちょっとした表情、仕草で、客席から笑いが起こります。個性のある、いい役者さんです。私も共演していて楽しいです。
脚本・演出は一作目と同じく細川徹さん。細川さんの本は、笑いを程よく入れて、とにかく観る人を楽しませてくれます。その分、私たちへの無茶振りも多いのですが(笑)。時代劇だからといって昔話にせずに、現代の事件も絡ませているところは細川さんらしさといえますね。今回の芝居では、〝闇バイト〟を想像させる事件が江戸の町でも起こります。理解しやすいストーリーだと思います。
―東京での初演はいかがでしたか?
東京に限ったことではありませんが、「時代劇は大人が観るもの」という感じではなくなっている気がします。若いお客様や子どもさんの姿も見えて、盛り上がり方も変わりました。
『マツケンサンバⅡ』(2004年リリース)からでしょうか。幼稚園や小学校でマツケンサンバを踊ってくれた世代が大人になって、その方たちのお子さんが今また、踊っているようです。サンバで私を知って、劇場にも足を運んでくださるようになったんですね。
―『暴れん坊将軍』のポップアップショップ、『マツケンサンバ』のグッズやコラボカフェも大盛況ですね。
『暴れん坊将軍』ショップにはびっくりしましたけれど(笑)。訪れる方がおもしろいと思ってくださるのなら、私もうれしいです。
マツケンサンバは、「楽しい」とか「元気になる」とか「気持ちが晴れる」とか、そんな声をいただくので、そう思ってくださる方がいる限り、できるところまで踊り続けたいと思っています。
―公演・第二部のショーでは、新しいダンスにも挑戦されていますね。
EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)ですね。クラブのダンスミュージックです。普段聴くことがないので最初は戸惑いましたが、今はすっかり慣れました。
音楽はわりと、どんなジャンルでも入ってきます。何でも挑戦したいですね。日舞もミュージカルもやっていましたし、サンバも踊りますから(笑)。
―松平さんに憧れた世代が、次の時代劇を担っています。
テレビの時代劇は少なくなりましたけれど、映画、舞台では新しい作品が生まれていますね。時代劇が減ったとはあまり思いません。時代に合わせて進化しているところは、おもしろいなと思って見ています。例えば、舞台『刀剣乱舞』の殺陣はアクションに近く、現代風のアレンジがおもしろいです。
同時に、昔からの「型」に沿った時代劇もなくさずに大事にしてほしいとも思います。衣裳とか所作も含めて、日本の文化ですから。
真田広之さんがアメリカで、そういう思いでがんばっているのは素晴らしいですね。『SHOGUN 将軍』が海外で高く評価されたのはうれしいニュースでした。
―これからの時代劇も楽しみですね。
もちろん、そう思っています。
過去の作品もおもしろいですよ。時々、家で、昔の時代劇を見るんですが、おもしろいですねぇ(笑)。昔ながらの〝勧善懲悪〟のストーリーは気分がスッキリします。
「悪いことをしたら成敗される」。当たり前を伝えることも必要じゃないかと思っています。


「お茶の間で共感されて愛された『暴れん坊将軍』を古典にすることなく、共に進化したいですね」と語る松平さん
松平 健
1953年生まれ。愛知県出身。1975年『座頭市物語』でデビューし、78年に『暴れん坊将軍』の主役である徳川吉宗役に抜擢される。舞台では1975年に『播磨とお菊』、80年に吉宗評判記『暴れん坊将軍』、88年に『王様と私』などに出演、現代劇、ミュージカルと幅を広げる。近年では舞台『サザエさん』、『大逆転戦国武将誉賑(せんごくかーにばる)』、歌手として『マツケンサンバⅡ』が大ヒットするなど多方面において活躍。菊田一夫演劇賞、日本映画批評家大賞主演男優賞など受賞歴多数。
松平健×コロッケ45周年特別公演《大阪公演》
日時:2026年10月18日(日)~11月5日(木)
会場:大阪 新歌舞伎座
出演:松平健 コロッケ
辰巳ゆうと/伊藤純奈
荒木健太郎 岡田翔大郎
真砂京之介 瀬野和紀
大原万由子/白石まるみ
笠原章 ほか
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