10月号

リーディングドラマ『すぐ死ぬんだから』
僕がおもう、豊かな歳の重ねかた。
内館牧子さんの高齢者小説シリーズ『すぐ死ぬんだから』が、リーディングドラマとして上演されます!大阪公演(2026年10月17日(土)、18日(日) サンケイホールブリーゼ)を前に、長野博さんにお話しいただきました。主人公ハナは78歳。長年連れ添った夫が倒れたことで、彼女の人生に次々と思いもよらない事件が巻き起こります。どんな困難も笑って生きるハナを大地真央さん、夫の岩造はじめハナを取り巻く役柄を長野さんが演じます。老いることも笑って生きるハナ。では長野さんは?
―この舞台の話を聞いた時はどんなお気持ちでしたか?
「朗読劇」への出演は初めてなんです。本を手にしながら演じることも、声色だけで何役も演じることも初めての経験。ですが、この作品は動きも入るし、歌も入る、ピアノ演奏も入る新しい形の朗読劇。新たな挑戦になるので、おもしろそうだと思いました。
―共演は大地真央さんですね。
舞台『クイーン・エリザベス』(2019年)以来、2度目の共演です。前回は恋人役でしたが、大地さんはどんなときもお美しく、まさにエリザベスな感じ(笑)。本当に素敵でした。
今回は、夫役をはじめ、女性も含め複数の役を演じることになります。大地さんとの関係性がいろいろと変わっていくのが楽しみです。
―原作は内館牧子さんの小説です。内館作品の印象は?
内館さんが脚本を手掛けられたドラマをよく見ていたので、演じる側として関わることができるのはうれしいです。
ドラマを見ていた頃は若かったので、〝大人たちの物語〟として楽しんでいたけれど、作品に接してみると違うおもしろさが見えてきています。話の伏線が随所に散りばめられていて、セリフのひとつひとつに流れがある、ユーモアもある。人物像にも物語にも奥深さを感じています。
―『すぐ死ぬんだから』。ちょっとドキッとするタイトルですね。
確かに「死ぬ」はネガティブな言葉ですが、ハナさんは、そうは捉えていないんです。やれることはまだまだある、目標もある、オシャレも忘れない。78歳だって、なんでもできるよ!という、むしろポジティブに生きるための言葉です。
―歳を重ねることをどんなふうに考えていますか?
50代に入って、確実に折り返しの年齢になりましたけれど…(笑)。
子どもの頃に想像していた50代よりもずっと元気です(笑)。自分が実際その年齢になってみると印象は違いますね。
僕は健康を保つための運動は必要だと思っていますが、〝やらなくちゃいけない〟にしないようにしています。楽しみながら、習慣として生活の中に取り入れたい。体を軽く動かすとか、歩くとか。
あとは、経験を積んできたし、たくさんの出会いもありますから、若い頃よりも人生が厚みを増して、豊かになっていったらいいですね。
―ハナの夫、岩造さんは70代後半ですが、その年代を演じることについては?
さすがにこの年代を演じるのは初めてです(笑)。メイクや服装での演出はないし、声色、話し方だけで演じるので、そこはチャレンジですね。朗読劇のおもしろいところでもあると思います。
―大地さんとは作品について話すことはありますか?
楽に接することができるように気遣いをしてくださる方なので、演じる上での相談はよく話をしています。
大地さんは、スッとしていて、それでいて周りに気を使わせない、やわらかな空気感をもっている方なので、前回もそうでしたが、僕は安心して稽古に臨むことができています。
―公演を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
僕自身が、まだまだ楽しいことがある!チャレンジもできる!まだまだいろんなことができる!そんな感覚でおります。一緒に歳を重ねてきたファンの皆さんと、これからも一緒に楽しいことを探していきたいと思っています。
「歳をとるのも楽しいかも」。そう感じていただける、ポジティブなリーディングドラマです。一緒に楽しみましょう!
text 田中 奈都子
内館牧子さんの高齢者小説シリーズ『終わった人』(中井貴一・キムラ緑子)、『老害の人』(友近・千葉雄大)に続いて、本作の台本・演出を手がけた笹部博司さんにお話しいただきました。
演劇プロデューサー 笹部博司さん
―大地真央さんにハナ役をオファーした理由をお聞かせください。
ハナは、内館作品の中で1番魅力的な女性だと思っています。
前向きで、次に何をやるか、何を言い出すか、目が離せない。でもちょっと間抜けでかわいらしい。ハナ自身がエンターテインメントです。
大地さんもそう。命がキラキラと輝いていて目が離せない。魅力的。大地さんの存在そのものがエンターテインメント。そんな大地さんの演技を受け止められる人って、実はそんなにいないかもしれません。
―受け止められる人が長野博さんなのですね。
そうです。長野さんも前向き。初めてのチャレンジには不安もあるはずだけれど、それよりも好奇心や闘志が先に見える方です。一緒に仕事をするのは初めてですが、初めてお会いした時から「どういうものを出してくるかな」と楽しみになりました。
長野さんは、長くお客さんの前に立ってパフォーマンスをしてきたので、舞台に立つ覚悟ができている。
役者って役にぶつかる覚悟がないとだめなんです。役に隠れるのではなく役と勝負する。そんなところは、大地さんとの共通点だと思います。
―朗読劇のおもしろさとは?
観客を最短距離で原作の中に連れて行ける。僕はそこが好き。何でも表現できる、どのドアを開けてもいい、いいとこどりのエンターテインメントだなと思っています。
舞台に立つ役者は、本を読んでるだけではありません。僕が考える朗読劇は、起こっている出来事、次々に起こる事件を見せる芝居です。だから飽きない、飽きさせない。毎回、僕が1番楽しみにしていると思います。
―内館牧子さんはどんな方でしたか。
内館さんとは同い年で、見てきた風景が一緒。よく話をしました。
好奇心旺盛で、興味があることにはすぐに首を突っ込む。本音で生きている。まるでハナ(笑)。
ハナはご自身の理想像を重ねて描いた女性だと話していました。
「ハナみたいに生きることができたら楽しいよ!」。
それがこの作品に込められた、内館さんからのメッセージです。
―ネガティブワードであるはずの、〝終わり〟も〝老害〟も〝すぐ死ぬ〟も、痛快なエンターテインメントに変えてしまう内館作品と笹部博司さん。これからも目が離せません。

俳優 長野 博さん


STORY
78歳のハナは、60代までは身の回りをかまわずにいた。ある日、実年齢より上に見られて目が覚める。「人は中身より外見を磨かねば!」と。折り紙だけが趣味の夫と二人三脚で経営していた酒屋は、すでに息子夫婦に譲り、平穏な余生を送るはずだったが…突然夫が倒れたことから、思いがけない真実を知ることとなる。
■公演情報
リーディングドラマ『すぐ死ぬんだから』
原作:内館牧子『すぐ死ぬんだから』(講談社文庫)
台本•演出:笹部博司
作曲:宮川彬良
音楽監督•ピアノ演奏:阿部篤志
〈大阪公演〉
日時:2026年10月17日(土) 13:00/17:00
18日(日) 13:00
会場:サンケイホールブリーゼ












