8月号
「神戸洋服」本家・本流|起業明治元年|㊎柴田音吉洋服店|ハンドメイド ビスポーク・テーラー[KOBECCO SELECTION NEWS]
明治から現代まで、神戸洋服の定義と
注文洋服製図の歴史をたどる
「近代洋服発祥の地」と言われる神戸。その背景には神戸開港当時からの英国との関係が存在し、神戸へやってきた英国人テーラーと一人の日本人テーラーとの出会いがありました。日本記録認定協会から「日本初の洋服テーラー」として初代が認められた柴田音吉洋服店の五代目店主・柴田音吉さんに詳しいお話を伺いました。
―「日本初の洋服テーラー」として初代が正式に認定されたそうですね。
神戸より早く1859年に開港した横浜が日本初の近代洋服の地という声もありましたが、今回の認定の決め手となったのは、産経新聞(2018年10月4日付)「文化の遺伝子―近代洋服発祥の地・神戸」だったということです。記事内で神戸の洋装史に詳しい神戸芸術工科大学の見寺貞子名誉教授が「流入した国の文化が違った」と考察しています。神戸市史によると、神戸港開港後、126区画あった居留地のうち、ほぼ半数にあたる64区画に英国人が入居していたということです。近代洋服の発祥の地は英国ですから、いち早く神戸へと輸入される環境にあったということです。
―「神戸洋服」と呼ぶにはどんな条件があるとお考えですか。
初代は明治元年(1868年)に来日した英国人テーラー・カペル氏と出会い、居留地に共同経営でテーラーを開業しました。カペル氏は師匠でもあり、初代はロンドン・サビルロウを源流とする英国調スーツの製図と仕立てに関しての正統な技術伝承の証明を与えられた日本唯一のマスター・ライセンシー・テーラーです。「短寸式」といわれるパターン(型紙)の製図方法を用いる、軽くて着やすい洋服。これが明治中頃から「神戸洋服」と呼ばれるようになりました。
神戸洋服の定義は、神戸に店を構え、神戸の職人の手で50時間以上のハンドワークで縫製されているフルオーダーであることです。仮縫いまでは職人の手縫いで、その後aは縫製工場で仕上げるセミ・フルオーダーや、仮縫い付きイージー・オーダーで仕立てるスーツは「神戸洋服」と呼ぶべきではないのです。神戸洋服は、神戸が守るべき地場産業の一つであり、条件を厳守したうえで共有すべき知的財産だと私は考えています。
―カペル氏からライセンスを与えられた注文洋服式製図「短寸式」とはどんな製図方法なのですか。
最低10カ所以上を採寸し、身体の特徴を製図に反映させる伝統的な製図方法です。1860年代に誕生した近代スーツの源「ラウンジ・スーツ」は着心地が重視されています。軽くて着やすい神戸洋服は元来、この製図方法で製作されています。老舗のテーラーが採用しています。
―最新式の注文洋服式製図法を開発されたと伺いましたが。
1930年代に入り、サビルロウの一流テーラーが近代的な製図方法「胸度式」を取り入れました。3~4カ所のみ採寸し、身体の特徴を頭にインプットして製図に反映させる方法です。シルエットやスタイルが重視されています。実際、サビルロウで修業した一流テーラーが採用しています。
1990年代、ファッションの変化により店主と7人のスペシャリスト集団が、「短寸式」と「胸度式」の長所を取り入れた日本唯一の革新的な製図方法を開発しました。軽くて着やすく、さらにスタイリッシュなスーツ製作が可能になりました。
当店は3名のパタンナーが在籍し、伝統的か近代的、あるいは革新的な製図方法の使い分けが可能です。お客様のお好みに合わせたお仕立てをご提案させていただきます。

1930年代の洋服スタイルを復元し、ご機嫌のY氏

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