5月号
音楽のあるまち♬8 クラシック音楽の輪を広げ、若手演奏家の未来をひらく
Sereno Music Office 代表
Conductor
静間 佳佑 さん
聴いてみたいけど、機会がない。高い技術を持つ若手演奏家たちは披露する場がない。そんなクラシック界で、実力ある若手演奏家がもっと活躍できる環境をつくろうと奔走する、指揮者の静間佳佑さんにお聞きしました。
―Conductor(コンダクター)というのはどういうお仕事ですか。
オーケストラの指揮者であり、経営者でもあると考えています。演奏家たちを上手にまとめていく、けれど上から指示するだけのコマンダー的な存在にはなりたくないな、と思っています。また、コンダクトには「つなぐ」という意味合いもあり、音楽を通して人と人とが繋がっていけるような仕事をしたいと思っています。
―難しそうですね。
まずは、音楽的な魅力を磨かなくては誰も付いてきてはくれません。プラス、人間的な魅力も磨かなくてはいけません。難しいですね(笑)。
―Sereno Music Officeとは?
演奏家仲間のコミュニティを作りたくて、私が起ち上げたグループです。ネットワークが少ないのがクラシックの世界です。そこで、フリーランスで活動する仲間が集まって紹介し合いながら連携していこうというもので、現在約160名が所属する若いアーティストグループです。その中から、オーケストラをやりたいという演奏家が集まっているのが「セレーノ・チェンバーオーケストラ」。このオーケストラでは、私が音楽監督を務めさせていただいています。
―具体的に今、力を入れているのは?
例えば、パーティー会場やお店で、ピアノ、バイオリン、チェロなどのアンサンブルを演奏してほしいというご依頼があれば、演奏家を紹介します。要望があれば、プログラム編成や演奏会全体のプロデュースもします。依頼者側はクラシック演奏を聴いてもらう場を提供し、若い演奏家は演奏を披露する場を得られます。双方が一生懸命宣伝するようになり、音楽の輪が広がりお互いウィン‐ウィン!コンサートの開催にも、いろいろな方法がありますから、ぜひご相談を(笑)。
―何故、そういう発想が生まれたのですか。
国際コンクールで優勝して日本に帰って来ても、披露する機会がない、めちゃくちゃ上手なのに音楽の道を諦めてしまう、もったいない演奏家をたくさん見てきました。僕が背中を追おうとした先輩たちが音楽界を去っていきました。何故か?すごい才能を持つ人ほど、セルフプロデュースの方法が分からないんですね。大学では教えてくれませんし、自身の演奏技術を磨くことに没頭していたので当たり前です。そこで私がプロデュースのお手伝いをし、次第にみんなで企画しながら、若手演奏家たちが学んでいけたらいいなと思っています。そうすれば音楽家としての未来が開けるはずです。
―たくさんの新しいことに挑戦しておられますね。
チラシやCDジャケットも工夫しています。原案を考え、イラストが得意な演奏家がデザインしています。クラシックにちょっと興味があるという人に響けばいいなと思っています。このチラシを見て「かわいいな」と聴きに来てくれる若い人もいます。
―音楽は子どものころから?
演奏家は気付いたら楽器をやっていたという人が多いのですが、僕の場合は小学校の鼓笛隊で太鼓にハマったのが始まりです。練習が楽しくて、叩けないと悔しくて、また練習して、叩けたらまた楽しくなって…。中学校では吹奏楽部でチューバを担当しました。兵庫県立長田高等学校に入学してからトロンボーンに転向し本格的に音楽の勉強を始めました。大阪教育大学の音楽コースではトロンボーンを専攻しながら、指揮法を勉強しました。
―そして現在。音楽家であり、ビジネスマンでもあるようですね。
僕は音楽が好きですから、一人でも多くの人にいい音楽を聴いてもらいたい。そのために、今のクラシック界で「何をやらなくてはいけないのか?」を考えてきたら今に至った。それだけです。
―これからも神戸で?
はい。いろいろな仲間に入れていただき力を貸していただいています。ただし、頭ごなしに芸術家の支援をお願いするのは良くないと思っています。自然と皆様が応援したくなるような価値のあるグループを作っていきたいと思っています。
―本日はありがとうございました。