2018年
5月号
撮影/中村治正

ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.7

カテゴリ:医療関係, 神戸

【Gorilla Tracking】①

文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)

 いよいよこの旅行のメインイベント Gorilla Tracking です。
 ゴリラなんて動物園にいっぱいいるのにと思われるかもしれません。ゴリラには西(ローランド)ゴリラ、東(ローランド)ゴリラ、そして分類法により東ローランドの一部になることもあるマウンテンゴリラがあり、世界の動物園にいるのは99%西ゴリラで、日本の動物園は全て西ゴリラです。西ゴリラは現在10万頭、東ゴリラは3千から5千、マウンテンゴリラは今や700頭しか残っていないのです。それぞれ毛色や食べ物、暮らし方に違いがあります。そして人間と同じように1頭ずつが違った顔、哲学者風だったり優しそうな微笑んだ顔であったり個性豊かです。ゴリラは生理、形態、行動、社会、心理などあらゆる分野でサルより人間に近いと言われています。ゴリラも絶滅危惧種に指定されておりレアメタルや石油発掘、内戦のため居住域がどんどん狭められまたブッシュミートとして年間600頭が殺されていると言われます。このアフリカの熱帯雨林で毎年400万頭の牛に匹敵する様々な野生動物が狩猟され食用に消費されているそうです。4年に1度しか出産せず成熟するのに10数年かかるゴリラにとってはこの殺戮数は回復不可能な減少を意味します。

 キングコングの映画(1930年代)以来、ゴリラは大きな誤解を持ってイメージされてきました。
 当時はゴリラが村の娘をさらうというデマもあり、先に少し書かせていただいたGorilla in the MistのDian Fosseyや彼女が影響を受けたGeorge Schallerがゴリラの生態を報告する1960年代まで世界での認識はゴリラ=キングコングでした。
 以降世界からゴリラの研究者が足を踏み入れ、日本からは京大霊長類研究所がたくさんの報告を出しています。それらを少し抜粋してゴリラについてご説明させて下さい。

 彼らは朝起きると食べ物を探しに核ボスを先頭に森の中を移動し、葉っぱや甘い果実、時には蟻等の昆虫も食料にしています。シルバーバックと呼ばれる核ボスを中心に4〜5頭のメスとその子供たちで10数頭のグループで暮らしています。子どもたちの父親は全てボスのシルバーバックです。昼間は家族で移動しながら食べたりレスリングをして遊んだりしています。
 夜になると木の枝や葉、草をまるくお椀状に組んで昨日とは違う場所で地面や樹上にベッドを1頭ずつ作って寝ます。
 オスの子供は12歳頃背中が少し白くなる時期に、群れを離れます。しばらく単独、または複数の若いオスグループで暮らし他の家族グループに近づき7〜8歳のメスを娶ります。元のグループの母違いの娘ゴリラとの交配は、ボスのシルバーバックが元気なうちは許されません。そうやってはじめはオス、メス1頭ずつでグループが始まり次々メスを加えていきます。母親は子どもが1歳になるまでは抱っこでずっと一緒にいますがその後は父親のそばで子どもたちだけで遊んだり、ベビーシッター役のメスのゴリラが子どもたちをまとめて面倒を見たりするようです。3歳まではほぼ母乳で育ちます。
 子どもゴリラは全ての動物の赤ちゃんがそうであるように好奇心に満ちずっと遊んでいます。ほかの大人ゴリラも手加減しながらレスリングや鬼ごっこに付き合います。しばしばどっしり瞑想している如くのお父さんのシルバーバックによじ登ったり顔を触ったり毛を引っ張ったりその大きな背中で滑り台したり…でもお父さんは時に優しく手を添えたりしながら決して怒らずされるままになっています。兄弟喧嘩を仲裁されたりしながら父親のそばで家族の絆を深めていき、お父さんを尊敬、信頼する気持も育まれていきます。たまたまYouTubeで眼にし、心が震えた映像があります。それはお母さんゴリラが赤ちゃんゴリラを目の高さに抱っこして背中をトントンしながらその目をのぞき込んでの対話です。研究者の報告にもゴリラはアイコンタクトと言語を持つと、書かれています。時にはフクロウと遊んだりカメレオンを皆でじっと観察したり、ペットをもつこともあるようです。
 ニホンザルでは目が合いそうになると弱いほうが目をそらします。視線を合わせることは挑戦を受ける意思表示なのです。あるニホンザルの研究者がゴリラの群れに受け入れられるようになり、彼らとともに暮らし行動調査を行うことになりました。彼はニホンザルのそうした習性を知っていたので、目を合わせることは危険だと考え、そばに来たゴリラが彼の顔を覗き込んでも、顔をそらしました。するとゴリラはその顔の向きに移動しまた覗き込み、それを繰り返すうちにとうとう最後には不満を表現する声を残し去って行ったそうです。その結果、目を合わさないというそれまでのサルへの常識はゴリラに対しては間違いであると気付きました。ゴリラは2匹が出会うと互いの目を覗き込み手の甲と甲を触れ合い挨拶をします。また挨拶の‘グフーム’に始まりいくつかの言語が知られています。木や草がカーテンのように生い茂っているジャングルの見えないところで動いている気配に‘ゥアゥ’と問いかけ Who are you? と聞こえるそうです。大好きなキイチゴを見つけたら歌うようにハミングし会話の中でグコグコグコと笑い合うそうです。
(次回へ続く)

撮影/中村治正

撮影/中村治正

ゴリラは、生理、形態、行動、社会、心理などあらゆる分野でサルより人間に近いといわれる 撮影/中村治正

ごろん、と、こっち向いた!! 撮影/中村治正

シルバーバッグの背中 撮影/中村治正

文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)
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