2018年
5月号

出る杭を伸ばす!|谷上から日本を変える谷上プロジェクトが始動

カテゴリ:神戸, 経済人

ChatWork株式会社 CEO 山本 敏行 さん

新神戸トンネルで三宮から10分、北区谷上の好立地に注目し、谷上を起業家が集う場所にと提案する「谷上プロジェクト」。事業を展開するのは、IT企業社長で自身も神戸に自宅を移した山本敏行さん。

仕事しやすく、暮らしやすく、アクセスも良い『谷上』の魅力

本業は中小企業のIT化を支援

―山本さんは、世界の働き方を変えるという目的で、2004年にChatWorkの前身となるITベンチャー「EC studio」を起業されましたね。

 創業は2000年で、僕は当時学生でしたがノートパソコン一台で起業しました。主に、ホームページのアクセスアップなど中小企業のIT化の支援する事業でした。実は、僕はIT企業の社長ですがワードもエクセルも使いこなせない、ITが得意じゃないんです(笑)。そういう僕が「こういうものがあればいいな」というものを考える、それを実際に作るのはエンジニアであるCTO(最高技術責任者)で、僕の弟です。そこで目をつけたのがビジネスチャットでした。
 チャットは、インターネットでつながったメンバー間で行われる会話ですが、メールなどよりもっと手軽なチャットによって、業務を効率化できます。例えばメールですと、迷惑メールの処理や、「いつもお世話になっております…」といった枕詞や署名などの、むだな業務が出てきますがそれらが短縮でき、ストレスが減ります。また弊社が提供している「チャットワーク」は、過去のやりとりがすぐさかのぼれますから早いですし、担当者が変わっても履歴がすべて残っていますから引き継ぎがしやすい。今では17万社以上に導入いただいていますが、使いやすさと利便性が理由だと思います。社外とのやりとりもスムーズですから、税理士や弁理士の方にも多く利用いただいています。今は、業務時間が短縮されているのに業務は減らない、そういった悩みをもつ企業の方に、業務の効率化として提案しています。
 大企業はIT化に関する費用もかけられますし人材もいます。ITが得意ではない中小企業が、ITツールを使って生産性を上げるということの方が、もっと日本の力になるのではないかと考えたんです。

―山本さんが、谷上に注目されたのはなぜでしょうか。

 チャットワークのグローバル展開のために5年ほどアメリカのシリコンバレーにいたことがあるんです。旅行で行ったシアトルは神戸より小さい町ですが港があり、マイクロソフトやアマゾンといったIT企業の本社が集まっています。考えてみればアメリカでは、シアトルはIT、ロサンゼルスは映画、金融はニューヨーク、政治はワシントンD・C・という形で、それぞれの都市ごとに特色があっておもしろいなと感じていました。
 日本ではだいぶ前から東京一極集中といわれ、地方創生が言われていました。僕は大阪出身で、大阪で起業し大阪に本社を置いていますけど、その目から見ると神戸は、山と海があっていい店もあるし住みやすい街として十分盛り上がっていると思っていたのですが、神戸の方にとってはそうでもないと。では神戸を何とかできないかな、と思ったところ、北区に可能性を感じたわけです。谷上は、新神戸トンネルを使えば三宮まで車で約10分、新神戸からは新幹線で東京、福岡などにすぐ行けますし、神戸空港を利用すれば日本全国に行ける。谷上は『日本一アクセスの良い田舎』です! これまでは“阪神間”というヨコのつながりで考えられていましたが、これからはそういった「タテのライン」で考えてはどうかと思いました。

―谷上プロジェクトは具体的にどのようなものですか。

 例えば、地方創生や農業改革、教育改革など、ジャンルは問わず、何かしたいと考えている人、もちろん起業を考えている方などは、ぜひ谷上に来ていただきたいと思います。そこで情報を共有したり交換したり、イベントを開催するなどして「挑戦と変化」を起こすコミュニティを作っていきたい。
 実際、谷上プロジェクトに参加している一人の男性は、下関出身の銀行員で、いつか故郷の下関を盛り上げるような活動をしたいと考えていました。彼はまず谷上に拠点を構え、谷上のお店を回ってマップを作ったり自治会に入ったりと、谷上で活動をし、僕のつながりでしたが下関の次世代経営者の会に入会し、市長に会ったりして下関での活動をそこからスタートさせました。彼が突然、下関に帰っていたとしても、思いが強いばかりでこんな具体的な活動はできなかったでしょう。彼が行ったのは地方創生の一例です。「谷上プロジェクト」から、地方創生のひとつのプロジェクトが誕生したのです。
 「谷上プロジェクト」は、谷上に移住者を増やすプロジェクトではありません。谷上で雇用を増やすものでもありません。でも、地方創生や農業改革や、教育改革などあらゆるプロジェクトが育つ土壌となることを目指しています。谷上には竹林が多くありますね。僕は、都会で芽が出なくても谷上ではタケノコが育つ、その谷上の竹林のようなプロジェクトを目指そうと考えています。5月に、谷上駅の構内にコラボレーションスペース『.me』(ドットミー)をオープンします。ここは、このプロジェクトに興味を持った方がはじめに来る場所。ミーティングスペース、バーカウンターなどがありますので、多くの方が交流できます。

―山本さんの会社は、2009年に社員満足度第一位にも輝いた、社員の働きやすさを考えた企業でもあります。ぜひ、この「谷上プロジェクト」でも多くの力が集まって日本を元気にしていただきたいですね。

谷上の『T』がキメのポーズ

『.me』ロゴ

『.me』イメージ

『.me』イメージ

『.me』イメージ

『.me』イメージ

谷上で行われたキックオフイベントには久元市長も出席

井戸知事より一句『ITのチャレンジメーカー集いきて谷上バレー拠点を目指す』

山本 敏行(やまもと としゆき)

1979年3月21日大阪府寝屋川市生まれ。中央大学商学部在学中の2000年、留学先のロサンゼルスにて中小企業のIT化を支援する株式会社EC studioを創業し、2004年法人化。2011年にクラウド型のビジネスチャット「チャットワーク」を開始。2012年に社名をChatWork株式会社に変更し、米国法人をシリコンバレーに設立。自身もシリコンバレー在住経験をもち、現在は日本や海外の拠点を行き来しながら、日夜マーケティング活動に奔走している。

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