5月号
特定非営利活動法人エナガの会 設立記念シンポジウム
県政150周年事業 多職種連携とエンターテイメントが生んだ奇跡の輪
超高齢化社会を迎える日本で、地域医療のあり方が問われている。垂水区では、医療・介護・福祉など専門職でつくる「エナガ会」の取り組みが、全国から注目されている。平成29年9月にはNPO法人となり、さらなる活躍が期待されている。
2月17日、垂水のレバンテホールにて、エナガの会がNPO法人となることを記念してシンポジウムがおこなわれた。
垂水区歯科医師会会長の田口雅史先生による開会の挨拶に続き、エナガの会の代表理事に就任した中村治正先生より「心をつなぐ多職種の輪~厚生労働省での神戸市垂水区の取り組み報告より」と題した基調講演が。昨年、厚生労働省の全国在宅医療会議ワーキンググループ会議に招聘され、垂水区での活動をプレゼンテーションしたが、エナガの会の歴史や実績を交えながらその報告をおこなった。
エナガとはそもそも鳥の名前で、助け合って子育てをするという。エナガの会は2009年3月に任意団体として設立され、当初は垂水区近隣の病院の医師、クリニックの医師、看護師、歯科医、薬剤師、ケアマネージャー、訪問介護士など10名ほどが中心となり、勉強会や意見交換会などの活動をおこなったが、その翌年はさらに行政なども加わって、介護保険申請のスピードアップや医師へスムーズに相談できるメディネットタイムの構築など活動の幅を広げていった。2012年からは手づくりの演劇にも取り組み、その反響の大きさから他地域へと波及している。演劇は講演形式でのフォーラムの反応がいまひとつだったことからはじめられ、市民の理解や啓発、各職種への理解、そして演劇に取り組むことで生まれるつながりなど、「劇作りや練習は確かに大変ですが、それをはるかに超える達成感とその成果を実感できます」と中村先生。
続いておこなわれたシンポジウム「拡がる垂水区の取り組み~これで私たちの地域も多職種連携が活性化しました~」では、本誌連載でおなじみのハチミツ先生、エナガの会の理事も務める藤井芳夫先生を座長に、各地で劇の主人公「石ヶ原裕次郎」を演じた長田区医師会会長の久次米健市先生、北区医師会副会長の近藤誠宏先生、淡路市医師会会長の松田聡先生がシンポジストとして壇上に。近藤先生は演劇の効果に「患者さんとも仲良くなってコミュニケーションが活発になった」ことを挙げた。劇中で棺桶に入ったことで「自分自身も終活や人生を問い直す機会になった」と発言した松田先生は、演劇の動画を制作し淡路市の民生委員の研修に使用していることを紹介。劇中でのダンスを熱望しているという久次米先生は「会のみんなが自信のある顔になってきて、〝楽しさ〟が地域の力を向上させている」という実感を述べた。また、途中ではルーレットでいきなり発言を求める企画もあり、指名された山田恒子垂水区長は「垂水区で安心して暮らしていけるのは、専門職の力を感じられるから。そんなみなさまを身近に感じてもらえる」と演劇を高く評価。巨大サイコロで話題のテーマを決めたり、いきなり壇上で人が倒れて救急隊が出動したりと、さすがエンタメ集団と唸らせるユニークな演出もあり、会場は大いに盛り上がった。
エナガの会理事で垂水区薬剤師会会長の勢力吉廣先生による閉会の挨拶の後、会場に響いたエナガの会会員一同による「私たちが支えます!」の勇ましい声が、エナガの会の新しい一歩を彩った。
エナガの会は今後も劇を通じての多職種連携醸成や地域包括ケアシステムに関する啓蒙活動のほか、研修事業などを展開していく予定。