2018年
3月号

神戸鉄人伝 第99回 兵庫・神戸CSの会会長(元神戸新聞社常務取締役) 山田 弘 (やまだ ひろし)さん

カテゴリ:絵画

剪画・文
とみさわかよの

兵庫・神戸CSの会会長(元神戸新聞社常務取締役)
山田 弘 (やまだ ひろし)さん

 神戸新聞社で、数々の文化事業を支えてきた山田弘さん。退職後も兵庫県立美術館やひょうごアーティストサロンで手腕を発揮、様々な企画を推進されました。今も兵庫・神戸CSの会などで芸術文化人の取りまとめ役として活躍される山田さんに、お話をうかがいました。

―神戸とのご縁は?
 私は大阪生まれ、三重県四日市市で育ち、そこで空襲も経験しました。その後東京の学校に進み、卒業後に神戸新聞社に入社、22歳で初めて神戸の地を踏むことになります。以後ずっと神戸新聞社で、地域と関わってきました。

―新聞社でのお仕事についてお聞かせください。
 入社時は広告局(現営業局)に勤務し、後に文化事業局事業部(現地域活動局)に移ります。日舞、洋舞、いけばな、ファッション、音楽、海外企画、表彰など、扱うジャンルは多種多様です。その文化事業全般を統括する立場となり、様々な企画を創りました。阪神・淡路大震災の年も、積極的に多彩な事業を推し進めました。

―震災直後も文化事業を推進することができた、その原動力は何だったのでしょう。
 何と言っても市民が熱望し、開催を喜んでくれたからです。全国から応募のある「こうべ全国洋舞コンクール」は使える会場を探して交渉、関係者の協力を得て開催し、高い評価を得ました。また1995年はボランティア元年と言われますが、文化事業部でも「被災者へのプレゼント囲碁・将棋のつどい」「未来の街・私の街 絵画、作文コンクール」など、チャリティー・ボランティア企画を実施。会場の熱気や創作意欲溢れる作品に、開催してよかったと思ったものです。

―退職された後は、県立美術館アートフュージョン実行委員会で事業を手掛けられました。
 今でこそ、全国の美術館でロビーコンサートが行われていますが、あれは兵庫県立美術館から始めたものです。私と、神戸新聞社事業部時代から一緒に仕事している市村礼子さんで立ち上げました。多数の美術館関係者が視察に来ましたよ。コンサートは単発ではなく定期的に開催し、選りすぐりの演奏者に出演を依頼するなどして、クオリティの高い演奏をお届けできるよう心掛けました。

―そしてひょうごアーティストサロンでは、若手芸術家育成に取り組んでこられました。
 最初は月1回だったロビーコンサートは月2回、さらにパフォーマー・フェスティバルなども開催するようにしました。またサロン内では年数回の美術展を実施。平成22年度に創設したひょうごアーティストサロン賞は、若手芸術家の励みになっています。何よりサロンでの人と人との出会いや交流は、新しいことを生み出すきっかけにもなります。これからも、このサロンの果たす役割は大きいと思いますよ。

―兵庫・神戸CSの会では、どのようなことを?
 隔月で県内の文化人、様々なジャンルの芸術家、マスコミ、文化行政関係者の方々の集いを開催し、各界の出会いとコミュニケーションの場を設けています。兵庫県の芸術文化人はジャンル横断の連携がいいと言われますが、この集まりも交流・友好に貢献してきたと言えます。

―これからの兵庫・神戸の芸術文化に、何を期待されますか。
 やはり県市の積極的な協力と、創造の担い手である芸術家の皆さんの意欲に大きく期待します。これからも兵庫・神戸ならではの新しい創造を、どんどん発信して欲しいですね。他所には無い、ユニークで斬新なアイデアでこの地を盛り立ててください。
(2018年1月20日取材)

 牽引役ながらいつも他人を立て、自分は一歩退く。そんな山田さんのお人柄が、多くの人の信頼を集めるのでしょう。

「事業もCSの会も、僕は好きでやってきただけ」と山田さん。「基礎を作ってくれたのは神戸新聞社です。本当に感謝しています」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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