2月号
ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.4
【アフリカ出発からBwindiまで】②
文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)
空港近くのホテルで苦労して荷分けしたスーツケースを一つ別のドライバーPaulに預け彼はこれから10時間かけて次の目的地クイーンエリザベス国立公園へ運んでくれます。
私たちはこれから1週間を共にするガイド、Hamletとゴリラの森でも繋がるという携帯電話を買ってから近くの植物園へ向かいます。
赤茶のでこぼこ広場に停まるたくさんの土埃で汚れたトラック、その周りに並ぶ殆ど掘立小屋風情のペットボトルの水売り、日差しに焼かれ若干色褪せた原色の洋服を纏ったマネキンの立つ店、ひと抱えもある房を並べたバナナ屋。
ひときわ殺風景な間口の店、奥にガラスで仕切られた高いカウンター、これが携帯電話屋さんでした。ちょっと面倒な手続きも終わり携帯も手に入りました。これでジャングルで迷子になっても大丈夫。
植物園でバードウォッチング、ウガンダの生物との出会いが始まりました。
日本でも時に夫の野鳥探索に同行しますが、じーっと待つこと数時間、歩き回るな、音立てるなと言われ肝心の鳥は私だけ見逃すことも多く精神修練の時間ともいえます。この旅の日程は夫が取り仕切ったので、バードウォッチングが何回も予定されています。また、じーっと修行かなぁー。
植物園の入り口には守衛がおり、停車させて車の下をのぞき込みます。このようにレストランの駐車場でもホテルの玄関に車をつけるときも施設には必ずゲートがあり、守衛か兵士風の人達が車体の下部を調べます。爆発物を探しているそうですが、座席やトランクはノーチェックで、膝の上のダイナマイトも素通りできそうなのですが。
植物園の最初の数歩でHamletは次々樹上や茂みを指差し鳥の名前を告げます。まるで小鳥の小屋に入ったみたいに次々と鳥たちは姿を現します。さすがに夫は即座に反応、カメラの照準を合わせ連射シャッターの音が響きます。私が目視出来たのは半分、双眼鏡で捉えられたのは4分の1くらいです。上ばかり向いて首も疲れ、もっぱらHamletとおしゃべりです。現地の人の育った環境、文化の話は異国の旅の醍醐味です。出会った鳥はとても覚えられそうもなく、東アフリカの鳥のガイドブックにマークしてもらうことにしました。
Hamletは平均的な貧しい村で育ち、高校進学を目指し町に出て働いていたそうです。雇用主の車に双眼鏡がいつも置いてあったそうですが、何に使うものか知らずずっと後になって初めて覗かせてもらい、遠くの鳥を見て感動し、バードガイドになったとのこと。
ガイドの仕事とNPOで野生動物の観察調査をしています。少し脱線しますが、珍しい種の生息数などのデータを取るのがNPOの職務ですが、様々な部族出身者が加わる調査でその稀少動物を食料、時にはとびきりの御馳走にしている部族もあり、調査後こっそり見つけた場所に戻り食べちゃう人もいたりするそうです。
ウガンダは英国領であったため公用語は英語です。しかし、いくつかの部族からなる国で、部族ごとにそれぞれの文化と言語をもっており、学校にいかないと英語は学べません。学校は無料ですが、実際農村部では交通機関はなく、教科書や制服を買えない家庭も多く、識字率は男性77%、女性67%です。そんな中でHamletはいくつかのガイドの資格を取り(アフリカの地域により生物の生態が異なりそれぞれの地域の資格を別に取得するようです)、18歳で初めてプラスチックの靴を履き、胸を張ってクリスマスに村に戻ったそうですが、爪は剥がれ幅広の足は靴ずれで散々だったとのこと。今でも農村部では裸足の人が多くトレッキングに同行してくれるポーターや兵士は魚屋さんのような長靴を履いていますが、裸足の方が歩きやすいと言います。ただ、泥の山道は裸足では滑るそうで、そのために長靴でいますとのことです。ドーハでみたウガンダの新聞の1面はサッカーの記事でサッカーは人気スポーツのようです。当然子どもたちは裸足のサッカーで、Hamletの言葉では靴を履いてボールを操るナショナルチームの選手はどうやってボールをコントロールするのか想像できないと言います。ずっと素足で自然と適応し、きっとお猿さんの足の域に近づいたものと推察します。