1月号
英国と神戸 Vol.7 アルピニズムの発祥となった神戸
「アルピニズム」という言葉がある。登山を好む人の心意気、登山家気質といった意味で使われたりもするが、これは、登山というものを、純粋に山に登ることだけを目的とする趣味・嗜好のことで、ヨーロッパで生まれた概念である。後者の意味で、日本のアルピニズムは、神戸が発祥地。
明治時代初期まで、日本には狩猟や山仕事のほかには、高野山や比叡山に代表される聖地への参詣、修養などを目的とした宗教的登山の習慣しかなかった。その日本に初めて「スポーツ」としての登山を伝えたのは、開港以後、神戸へ来た外国人たちだった。
日本アルプスの開祖といわれた英国人宣教師ウォルター・ウェストンは、明治21年から7年間神戸に滞在し、登山を始めた。さらに、神戸在住の登山家、H・E・ドーントらが六甲山系を中心に登山にいそしんだ。外国人によってつくられた近代登山の基礎をうけ、神戸における登山団体の草分けである「神戸徒歩会」の藤木久三らにより「ロック・クライミング・クラブ」が発足。日本で初めてロッククライミング(岩登り)が行なわれた。
再度山の善助茶屋跡には「毎日登山発祥の地」の石碑がある。神戸には「毎日登山」の愛好者が多数いる。高取山、菊水山など日の昇る頃に山へ登り、仲間たちと歓談しながら下山する。スポーツ好きの外国人によってもたらされたという毎日登山だが、何十年にもわたり一日も欠かさず登山をした証を山上の署名所で見るにつけ、実直にこつこつと続けるという日本人の気質が生んだ文化のような気がしてならない。
また六甲山記念碑台には、六甲山を開き、ゴルフなどスポーツを始めたA・H・グルームの胸像があるほか、六甲山を親しめる場所として広めた外国人たちを讃える石碑が建っている。
〈参考文献「神戸はじめ物語展」神戸市立博物館〉