12月号
不動産で夢と憧れを
和田興産株式会社
代表取締役社長 高島 武郎さん
「共生(ともいき)」を企業理念に創業113年という長い歴史を重ねてきた和田興産。自分たちの働きで地域の皆を幸せにしたいと、神戸、明石、阪神間を中心に事業を展開してきた。今年5月、その意志を受け継ぎ社長に就任した高島さんにお聞きした。
―高島社長は元銀行マンということですね。
高島 私は大学卒業後、当時の神戸銀行に就職しました。兵庫県の土木技師だった父が早くに他界し、銀行に就職すれば母を安心させて親孝行ができるだろうという考えでした。県や市の公金関係業務をはじめ、現場の支店長という立場を通じて地域金融に徹していたので、和田興産の事業エリアを熟知しているということもあり声をかけていただいたのでしょうか…、銀行での経験を生かせる場を与えていただいたと思っています。
―和田憲昌会長との出会いは。
高島 銀行の関連会社で、不動産仲介業の京阪神興業株式会社の専務を務めていた当時の2008年、関西不動産情報センターの理事長に就任することになりました。そこで、不動産業界の重鎮である和田会長に「私のような若輩者でも理事長が務まるでしょうか」とお伺いをたてに来たのが出会いです。
―そして社長という重責を任されることになるのですね。
高島 和田会長とはこれまでのキャリアの違いこそあれ、地元の企業として地域社会に貢献し、より良い会社づくりをしようという想いが一致していると思います。相思相愛の仲とでもいうのでしょうか(笑)。
―経験を生かしながら広い視野を持って経営に携わるということですね。
高島 銀行マン時代は多くの経営者の方々と接する機会を持てました。また地域開発部では、六甲アイランドや三田カルチャータウン、ポートアイランド、姫路駅前のキャスティ21などの開発プロジェクトで街づくりに関わり、「街は人が住み、働き、憩い、学ぶもの」だと学んできました。京阪神興業では、神戸を代表する企業の本社、工場の誘致など仲介業としてお手伝いをさせていただき、不動産業の仕組みや難しさも見てきました。両方の立場を経験してきたことやこれまでの人的ネットワークが現在に役立っていると思っています。
―和田興産の企業理念「共生」という考え方も継承されているのですね。
高島 人間社会においての基本だと考えています。私は関学出身ですのでキリスト教概説で、「愛とは共に生き、共に笑い、共に泣く」と学びました。当社の企業理念である「共生」は、共に生き、共に支え合い、分かち合うことを意味し、自分を生かすことが周りを生かすというものです。私は「人間とは何か?」ということについて常に意識していましたが、「共生」という考え方で、まさに答えを得たと思っています。
―「街角ごとにワコーレ」というコンセプトも変わりませんか。
高島 神戸の街は山と海に囲まれ大規模開発に不向きな地域ですから、中規模までの用地を独自で仕入れて街のランドマーク的な建物を建て、お客様に適正価格で提供し、街の雰囲気を作っていこうというコンセプトは続けていきたいと思っています。
―今話題の、ワコーレ豊中ステーションウィングはワコーレとしては大規模ですね。
高島 総戸数は116戸です。これまでは神戸市、芦屋や西宮などの阪神間の人気エリアを中心に供給してきましたが、初めて大阪に進出したのがワコーレ豊中ステーションウィングです。特徴は、住む人のニーズを取り入れて、ゲストルームやライブラリーラウンジなど共有スペースを充実させています。駅前の再開発地域ですから、当社のほかにも建設されている大規模マンションと共に、あの場所から豊中駅前のイメージを変えていければと考えています。
―将来的には地域拡大を目指していますか。
高島 供給戸数800戸、年間成長率5%程度を目指していますので、必要に応じてそのような対応も必要になると思いますがあくまで地域密着堅実経営が基本になると考えています。
―シニア向けも販売していますね。
高島 兵庫県事業コンペに当選したワコーレハート明舞です。明舞中央病院に直結した、総戸数102戸のシニア向け分譲マンションです。管理運営を納得していただいた上でご購入いただかなくてはいけませんので、この物件に関してはゆっくり時間をかけて販売しています。
―高島社長が描く〝夢と憧れの住まい〟とは。
高島 人とのコミュニケーションがあって、初めて人は夢と憧れを持つものです。私は、人が一番欲しているのはぬくもりだと思っています。だからこそぬくもりのある住まいづくりが必要です。戸建てブランド「ワコーレノイエ」では「頭のよい子が育つ家」という間取りを採用している物件があります。子どものコミュニケーション力を伸ばすためには、お母さんが台所仕事をしながら、すぐそばの食卓で子どもが勉強しているというように、親の目が届く所に子どもが居るのが理想です。「共生」はまず家族からスタートしなくてはいけません。人は一人では生きていけませんから、リレーションをつくることで、そこにコミュニケーションが生まれます。コミュニケーションがなくなってしまったから、今の社会には色々な問題が発生しているのだと思います。
―最後に、新社長としての今後の方向性をお聞かせください。
高島 まず、私たちが懸命に働くことで皆さんの幸せにつながることが喜びです。そしてメイドイン神戸のブランドとして、この街のセンスを取り入れながら、ぬくもりとゆとりのあるマンションづくりを目指していきたいと考えています。
高島 武郎(たかしま たけろう)
和田興産株式会社 代表取締役社長
1971年、関西学院大学経済学部卒業。同年、株式会社神戸銀行(現 株式会社三井住友銀行)入行。2001年、神戸公務法人営業部長。2002年、京阪神興業株式会社常務取締役。2011年、和田興産株式会社顧問、2012年同社代表取締役社長。