4月号
ふたつのアイランドで神戸の活性化を
神戸の人工島「ポートアイランド」と「六甲アイランド」は、それぞれの立地や歴史を生かして発展してきた。地域活性化の拠点として「ふたつのアイランド」が持つ今後の役割や方針をお聞きした。
―お二人は面識はあったのですか。
木下 何度かお目にかかる機会があり、憧れの大先輩です。神戸に進出が決まった時、まず中内さんにご挨拶させていただきました。
中内 とんでもない。木下さんは淡路の雄ですからね。その節はわざわざお越し下さりありがとうございました。
―さて、ふたつのアイランドの一つ、ポートアイランドには先端医療施設や研究施設が集まってきて、増々の発展ぶりを見せていますね。
中内 人口が減り、マーケットが拡大しているとは言い難い時代に、メディカルやサイエンスに特化集中して国際的な競争力を高めていこうという場所に神戸がなりつつあり素晴らしいですね。私どもにとっても恵まれた環境であり、ありがたいことだと思っています。
―医療施設などとの共同企画などもあるのですか。
中内 医療クラスターのメンバーとしてできることをやっていこうとしています。例えば、小児がんのお子さまとその家族が過ごすための病室を備えたチャイルド・ケモ・ハウスへは担当者が出向き、ホテルとして提案できることは何かを模索中です。また、兵庫医療大学のご協力をいただきレストランで嚥下食を提供できるようにしています。患者さんのクオリティオブライフを高め、快適に過ごしていただくのがホテルの役割だと思っています。
―もう一つの六甲アイランドですが、環境としてはいかがですか。
木下 工場・倉庫群と住宅がきちんと棲み分けられたとても良い環境です。ハーバーハイウェイを通ると、活性化されつつあるポーアイまで約15分。新しい分野に関わる方々の住居として活用いただくにも最高の環境ですね。
―淡路島とは全く違いますか。
木下 様子は違いますが、今までと同じように本物を提供していけば受け入れていただけると思っています。東灘、芦屋、六甲アイランドという地元に密着したホテルにしていきたいですね。
―今年の春開催のシェラトンマルシェについて教えて下さい。
木下 本物の提供はまず「食」から!と、「シェラトンと淡路島のおいしいお店」をコンセプトにアーバングルメポート2階で淡路の青果や加工品、シェラトンのケーキやパンを販売します。シェラトングループ8つのホテルのご協力をいただき、それぞれご当地の美味しいものも提供する予定です。
―秋に開業予定の温浴施設の準備も順調ですか。
木下 隣のテナントビルを利用してオープン予定です。約千メートル掘り進み、40度の温泉まで到達しています。これから千500メートルまで掘り進め55~60度程度まで到達予定です。地域の魅力の一つになり、宿泊のお客さまだけでなく、地元の皆さんにもご利用いただき、周辺を巻き込んで活性化できうればうれしいですね。
中内 木下さんだからできることですね。私どもも期待しています。
木下 それぞれの地域にはグランドデザインがあり、その中で例えば、我が社やポートピアさんがそれぞれこだわる部分を持つことで地域全体としての魅力がアップします。そのためにも特徴を出していきたいと思っています。地域で競い合っていてはダメですね。
―ポートピアホテルが担う役割はやはりコンベンションホテルですが、利用者の反応はいかがですか。
中内 東日本大震災の影響で横浜、東京ではコンベンションが開催できない時期がありました。そのため、予定されていたコンベンションが神戸開催に変更されたことがきっかけで当ホテルを初めてご利用いただき、その後定着した例もたくさんあります。色々な施設がコンパクトに収まっている点を評価していただいているようです。
いつでも地元の美味しいものが食べられるホテルに
―ホテルでの楽しみの一つがレストランですが、地産地消についてはそれぞれにどうお考えですか。
木下 淡路島では地元食材をそのまま食べることはあっても、一流の技術で、より楽しく美味しくという努力を少し怠ってきたように思います。ポートピアさんはじめ、神戸のホテルでの地元の食材を使った季節のメニューを勉強させていただきながら、これからも季節感と兵庫らしさをどんどん取り入れ、フェアとしてだけでなく年間通して当ホテルの魅力の一つにしていきたいと思っています。
中内 年に1回開催している兵庫県地産地消フェアで使用した食材をベースに日頃のメニューづくりをしています。フレンチレストラン「トランテアン」では淡路島まで出向き生産者の方と直接お話しして食材を取り入れていこうとしています。また、三宮の東急ハンズの東に昨年9月オープンした「さけやしろ」では、灘五郷ほぼ全蔵のお酒と、当ホテル内日本料理「神戸 たむら」のまかない料理というコンセプトで地元の食材を使ったお料理を手軽に楽しんでいただけます。館内では地元食材にこだわった串揚げの店も新たにオープンする予定です。
ホスピタリティを追求するホテルに
―ベイシェラトンはUSJや関西空港にも近いですね。
木下 USJは昨年のワンダーランドに続き、来年は「ハリー・ポッターの魔法の世界」がオープン予定です。パートナーホテルとして宿泊需要の高まりに期待しているところです。ポートピアさんとは共同でバスを運行していますが、お隣のホテルプラザさんもパートナーホテルの仲間入りをされましたので3つのホテル間を運行して更に利便性を高めることができると思っています。関西空港も賑わいを見せています。神戸空港も含め、真ん中に位置するホテルとして阪神ベイエリアの活性化に貢献できたらと思っています。
―ポートピアホテルで現在、最も力を入れていることは。
中内 ホスピタリティに注力しています。レストランのサービスをはじめ、コンベンションサポートスタッフ専門資格を社内で定めてサービスの質を高めていこうとしています。また個人のお客さまに対しても神戸滞在の拠点ホテルとして楽しんでいただこうと、3月からはハーバーランドと当ホテルを結ぶシャトルバスの運行も始めました。更に、繁忙のときにはついつい笑顔を忘れた対応になってしまうという反省をふまえ、接客のロールプレーイング大会を行い、外部から審査員を招き評価していただいています。社内でもトレーナーを養成し、今年から更に強化していこうとしています。
木下 私はロータリーの会合でポートピアさんには毎月1回来ていますが、30メートルも向こうからホテルスタッフが先に気づいて必ず「こんにちは」「いらっしゃいませ」と声をかけてくれます。これは非常に心地良く、初めてのお客さまには安心感を与えるでしょうね。見習わなくてはいけないと社員にも話しています。
中内 私もニューアワジグループのホテルには何度か宿泊させていただきましたが、従業員の皆さんがとても気持ちの良い対応をされていました。
役割分担して地域の魅力を発信
―今後の方針についてお聞かせください。
木下 芦屋を含め神戸の東部にあるホテルとして地域の活性化にも関わっていきたいですね。様々な素晴らしい美術館や灘五郷のお酒など、魅力を発信して伝えていきたいと思っています。
―ホテルニューアワジグループとしての企画などもあるのですか。
木下 連泊プランはもちろん、淡路島での翌日の昼食特典や、当ホテルで車をお貸しして淡路島まで行っていただく等々、仕掛けは色々と考えています。ビジネスで神戸市内の各ホテルをご利用いただくお客さまのプライベートを淡路島でお世話できれば最高ですね。
中内 助け合いながら、それぞれにできることを分担できればいいですね。観光地の成功事例として、大分の湯布院があります。一つひとつの小さな旅館にそれぞれ得意なところがあり、役割分担したことにより湯布院全体が活性化され、今ではブランド力のある全国的に知られる温泉地となっています。神戸でも当ホテルをご利用のお客さまがリゾートを楽しみたい時にはホテルニューアワジをご紹介するなど、神戸市内ホテル6社会だけでなく新しいネットワークができたのはとても喜ばしいことです。うまく活用して神戸をアジアで輝く街にできれば素晴らしいですね。
木下 勉強させていただきながら神戸の中でしっかりした役割を果たせるよう頑張りたいと思います。
―今後も協力しあって〝ぜひ行ってみたいアイランド〟を目指してください。
インタビュー 本誌・森岡一孝
木下 学さん(写真左)
株式会社 HNA神戸 神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ
代表取締役社長
中内 仁さん(写真右)
株式会社 神戸ポートピアホテル
代表取締役社長