2月号
Power of music(音楽の力) 第14回
クラシック演奏家の謎 ②
『演奏家のフィジカルあるある』
上松 明代
前回の続き。そして今回は身体的「あるある」をまとめてみました。
其の一。緊張時の身体状態は、手に汗握る、呼吸が浅くなる、口の中が乾く、心拍数が上がる。演奏家は、本番で心拍数が上がることを見越して練習する。何故なら、心拍数が上がると無意識に演奏のテンポも上がってしまうからだ。このような状況は、緊張すると自分の体がどう変化するか、経験を重ねて知り調整していく。ひたすらメトロノームに合わせて練習し、テンポを叩き込む。そして、メトロノームと大の親友になる。
其の二。プログラムの1曲目に自分にとってヘビーな曲は持ってこない。やはり1曲目は緊張するし、助走の意味も含め。ピアニストもそうだろうが、特に観客を正面にして演奏する楽器(フルートや歌、ヴァイオリンなど)は、演奏中、楽譜を読みながらでも視界にお客さんが入る。なので、演奏中にお客さんの反応が丸わかり。「あ、退屈してきた。ヤバイ。選曲ミスか!?」「真剣に聴いてくれている(喜)!」「右端にゴソゴソしている人がいる。」などなど。そんな反応を肌で感じながらでも集中して演奏し続けないといけない。しかし反応を知ることにより、観客と心が一体化してゆく。空気を読む達人になる。
其の三。プロの演奏家は爪を伸ばさない、ネイルも絶対塗らない。それは、爪やネイルにも重さがあり、指さばきに支障が出る為。微量な重さで差がでるほど、指を動かすことには繊細なのだ。とにかく、作曲家が書いた曲を正確に演奏することが基本中の基本だから、間違うなんてことは言語道断。だから、身体の細部にまで注意を払う。作曲家への敬意を込めて。ちなみに管楽器奏者は口紅を塗らない。マウスピースがベタベタになり、唇が滑る(違和感がでる)。もっとオシャレしたい。その他、練習のし過ぎで、腰痛になる、体が歪む、腱鞘炎になる。過酷だ・・・。
神戸にも素晴らしい演奏家が数多くいらっしゃいます。生演奏を聴きに足を運んでみて下さい。その煌めく演奏の裏には、屈強な肉体と精神、そして努力が存在するのだ~。
上松明代(フルート奏者・作曲家)
武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com