2012年
12月号
「極粒いくら」は北海道の根室は野付産で、 鮭が水揚げされてから4時間以内に加工する

連載 憧憬の地、芦屋

カテゴリ:神戸

芦屋らしい「品の良さ」をオリジナルの商品に

株式会社 かね徳 代表取締役社長 東村 具德さん

大正14年9月に、創業者の東村德太郎が芦屋の三八通り商店街で商売をはじめたのがかね徳のルーツです。その後、戦争の混乱など紆余曲折を経て、メーカーの仕事に専心するようになったのは戦後です。その当時は深江の工場が拠点でしたが、手狭になり昭和55年に工場を篠山へ、本社機能を三宮へ移転したのですが、阪神・淡路大震災後1年ほどして創業の地へ帰ろうと本社を芦屋に再移転しました。
昭和26年に創業者が「くらげうに」という創作珍味を開発しましたが、これが日本初の創作生珍味です。それが作られたのも芦屋にあった創業者の自宅でした。ですから芦屋は創作生珍味の発祥の地でもあるのです。
かね徳を代表する商品、とびっこは昭和44年に2代目の東村克德が開発しました。インドネシアの現地で漁や一次加工の仕方を指導して発売しました。最初は北海道で売れはじめ、その後全国に広がっていったのですが、北海道の人は魚卵が好きなので売れるのではないかと。北海道では今も8割のシェアがあり、「とびっこのかね徳」というイメージですね。ちなみに「とびっこ」という名称は弊社の登録商標です。ほかにも瓶詰めのうに、粒うにや練りうにもシェアの高い商品です。
商品アイテムは現在550くらいありますが、常に開発を進めています。開発は本社ならびに篠山工場のスタッフと、福岡にいる営業本部長でおこないますが、それぞれの場所をスカイプで結んでおこなっています。かれこれ6年前からこの方式です。かつては移動で1日仕事でしたが、ネットを活用すると時間をセーブできますので、会議の回数も月2度から3~4度できるようになり、商品開発のスピードも速くなりました。この企画開発会議を通じ、年間約60~80アイテムを開発しています。
開発した商品が売れるかどうかは、売ってみないとわからない部分があります。3年前に発売したえんがわユッケ風という商品は、もともとアメリカ産コガネカレイの縁側のうちすしネタにならない小さいものを原料に活用できないかと、商品開発担当1年目の女子社員が企画しました。開発会議では市場に受け入れられないのではないかとみんなが思いましたが、1年生社員がはじめて開発した商品なのでと、一般的な商品の半分以下の小ロットで、業務用で販売してみたのです。ところがこれが大ヒット、軍艦巻きで使われて人気が出て、1億売れる商品になりました。
かね徳の商品はスーパーなどの量販店向けが約5割、業務用が約5割の比率ですが、唯一、芦屋に小売店「かね徳芦屋工房」を出店しています。創業の地、芦屋は大きな存在ですし、私自身も芦屋生まれ芦屋育ちですので、芦屋に愛着があります。かね徳芦屋工房の商品は芦屋テイストの上質な商品を目指し、かね徳本体の商品とは別にしています。例えば「極粒いくら」は北海道の根室は野付産で、鮭が水揚げされてから4時間以内に加工しています。漬け込み液も有機丸大豆醤油や灘の純米吟醸酒、利尻の昆布や枕崎の鰹を使用、保存も脂が酸化しないようにマイナス60℃で、余計な添加物も使用していません。何よりも脂の乗りや皮の堅さが最適な時期を見極め、加工日まで選定しています。かね徳芦屋工房で人気のスティックのうに「御所姫」は芦屋観光みやげにも認定されています。
かね徳はメーカーですが、スタートは小売の商売です。お客様と直接ふれあって、商品やサービスに対する反応から学ぶことは多いのです。ですからかね徳芦屋工房があることは、お客様の反応がわかるという意味で大きいのです。特に芦屋のみなさんは舌が肥えていますし、本物を知っておられます。芦屋では美味しくてサービスが良くないと続かないのです。
芦屋はゴージャスというより、落ち着いていて住みやすい街です。私どものブランドでも芦屋の「品の良さ」を強調しています。弊社の商品を通じ、全国で芦屋が上品な街という印象を持っていただけるようになれば嬉しいですね。

かね徳を代表する商品、「とびっこ」という名称は登録商標。
北海道では今も8割のシェアを占め「とびっこのかね徳」で親しまれる

「極粒いくら」は北海道の根室は野付産で、鮭が水揚げされてから4時間以内に加工する

えんがわユッケ風は、商品開発担当1年目の女子社員の発案し、ヒット商品となった

かね徳芦屋工房で人気のスティックのうに「御所姫」は芦屋観光みやげにも認定されている

創業の地、芦屋に「かね徳芦屋工房」を出店する。店内には芦屋にふさわしく上質な商品が並ぶ

東村 具德(ひがしむら とものり)

株式会社かね徳 代表取締役社長
1965年芦屋市生まれ。1989年早稲田大学卒業。同年株式会社東村德太郎商店 入社(後に株式会社かね徳に社名変更)。1999年株式会社かね徳常務取締役就任。2007年株式会社かね徳代表取締役社長就任。全国珍味商工協同組合連合会青年部連絡協議会副会長。兵庫県珍味商工協同組合青年会会長。

株式会社 かね徳

兵庫県芦屋市業平町4−1 イムエメロード 6F
TEL.0797-35-7900
営業時間/午前10時〜午後6時
定休日/日祝祭日

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