6月号
harmony(はーもにぃ) Vol.4 ユーモアのセンス
ホスピス医の柏木哲夫さんが著書の中で次のようなユーモアの例を挙げておられます。
末期の食道がんの女性患者Aさんは日々弱っていくなかで、彼女はどうも自分の命がそれほど長くはないと感じていたのでしょうか、ややゆううつな雰囲気を漂わせて日々を過ごしていました。親切なご主人がいつもそばに付き添っている、とても仲の良い夫婦でした。衰弱が進むにつれ一日中ウトウトしているような状態が続きました。私は、少しでも物を食べることができたらもうちょっと元気になるのにと思っていましたから、ある日の回診の時に「Aさん、何か食べられたらいいですね。ひょっとしてトロぐらいだったらトロトロッと入るかもしれませんね。」と声をかけました。そうするとAさんはにっこり笑って「先生、そうですね。私も一日中トロトロ寝てないで、一度トロにでも挑戦しましょうかね。」と話されました。極め付きは、傍でその話を聞いておられたご主人が「先生、私もトロい亭主ですが、トロぐらいだったら買いに行けますよ。」と言って病院の近くの市場でマグロのトロを買って来られました。すると本当に不思議なことにAさんはトロを三切れペロッと食べられました。私はとても感激しました。ユーモアのセンスが食道を開いたという感じがしたのです。このように医師と患者、家族がユーモアのセンスを持って病に向かっていくときに、何か不思議な力がそこに出てくることがあるのです。
『死を看取る医学』(NHK出版)
医療や福祉の現場でのユーモアの効用について次回にご紹介します。
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事務局長
橋本 明
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