2018年
6月号
「カルチャースクールでも、人物デッサンを教えています」と天野さん。「デッサンはやはりすべての基礎ですから。角先生にも“真っ黒になってもいいから骨組みをつかめ”と言われました」

神戸鉄人伝 第102回 日展会員(洋画家) 天野 富美男(あまの ふみお)さん

カテゴリ:絵画

剪画・文
とみさわかよの

日展会員(洋画家)
天野 富美男(あまの ふみお)さん

 兵庫県公館県政資料館の一室。女性をテーマにした油彩画やデッサンは、高砂市の画家、天野富美男さんの作品です。徹底して「人物」、それも「人体が作り出す形」を追究する天野さんは、美術教師として生徒を指導し、公募団体で後進の育成にも尽力してこられました。「すべて角卓先生の影響です。先生のように、子どもに夢を与える存在でいたいですね」と話す天野さんに、お話をうかがいました。

―絵画の道に進まれたのは?

 私の通う小学校の図画工作の先生が、角卓かどたく先生だったのです。もともと絵が好きでしたから、先生の授業が楽しくて仕方ありませんでした。先生には受験のためのデッサンや、大学での制作でもお世話になりました。でも「画家になってやる」と思ったわけではありません。一生絵が描けたら楽しいだろうな、という気持ちで中学の美術教師になり、今日に至ります。もし先生に出会わなければ、まったく違う人生になっていたでしょう。

―ラ・イン会の創立者である角卓さんですね。

 ラ・イン会は新しい具象絵画追求の場として、角卓先生が神戸に作られた研究団体です。目に見えるものを自分なりに解釈しろと言われました。何を描いたか、どう見たかよりどう解釈したかに重きを置く。写真のようにリアルに描くにはテクニックが必要ですが、そこに留まらずにその技術を使って「どう感じた」を表現することが大切だと。先生の教えは今も原点です。

―ご自身のテーマ「青年」はどんなところから着想を?

 人物デッサンをした時、「人物って面白いな」と思ったのが始まりです。人物を使って、何か画面構成ができないだろうか、と。「人物の形を追うより、人物を動かせたらもっと面白い」と感じ、跳躍や球戯など様々な動きをする人物を描くようになりました。

―モデルを使っておられますか?

 使っています。もちろんTVも見るし雑誌なども見ますが、写真からは描けません。実際にポーズをとってもらい、デッサンします。人間の形、人体の動きは実に魅力的で、飽きることなく描き続けています。

―ずっと作風を変えておられないですね。

 作風を変えたことはありません。絵画制作は螺旋階段を昇るようなもので、一度通ったところをもう一度通る時には、一段高くなっている。同じような構図の絵でも、自分が変わっているんです。以前と考え方が変わると、構成も変化します。意図的に変えずとも、それでよいのではないでしょうか。

―高砂から、神戸をどうご覧になっておられますか。

 神戸は独特な空気のあるまちで、東京とも大阪とも違う。何かやってやろうという活気があるというか、そういうものが私の絵にも表れていたらとても嬉しいです。ラ・イン会は神戸に生まれた団体ですから、メンバーの絵画は表現方法が異なっても「神戸の絵画」という空気を共有しています。

―これからの抱負は。

 これまでは美術団体が公募展を通じて若い画家を育ててきましたが、今の若い人は団体展へ出品しなくなっています。さらにデッサンから始まる制作から離れ、もっと違う表現を試みる人が増えた。もちろんそういう路線を否定するつもりはありませんが、私はやはり自分の目で見て感じることが大事だと考えています。ラ・イン会を、地道に努力している人たちが参加したくなるような団体にしていきたいですね。
(2018年4月12日取材)

 角卓先生が創ったラ・イン会を、今は率いる立場にある天野さん。ぜひともこの公募団体を、魅力ある発表の場に育ててください。

「カルチャースクールでも、人物デッサンを教えています」と天野さん。「デッサンはやはりすべての基礎ですから。角先生にも“真っ黒になってもいいから骨組みをつかめ”と言われました」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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