2018年
6月号

FARMSTAND Open !|地元の農家さんを応援したい だから、『毎週』から『毎日』にしたかった!

カテゴリ:神戸, 見どころ

東遊園地で開催される『ファーマーズマーケット』の進化系、毎日楽しめるマーケット『ファームスタンド』が2018年春、北野坂にオープンした。神戸近郊でつくられる農水産物や加工品を扱うショップと、野菜中心の日替ランチがいただけるイートイン・スペース。「食」を通じてつながる人々を訪ねた。

 神戸を代表するストリートのひとつ、北野坂に神戸産品のファーマーズショップ「ファームスタンド」が3月末にオープンした。土曜日の朝に東遊園地で開催されている「ファーマーズマーケット」のリアルショップで、毎日オープンしているのも魅力だ。
 お店の半分はショップスペース。ここには北区と西区を中心にした生産農家から届いた野菜のほか、神戸の天然水使用の地ビールや、自然放牧で乳牛を飼育している北区の弓削牧場の乳製品もある。ほかにも須磨産の海苔、味噌や漬物、ジャムやハム、調味料、はちみつ、お菓子、パンなどがズラリ。神戸エリア産のおいしいものが大集結だ。
 野菜はほぼ毎日生産者から届く。FARMSTAND便が自ら農地を巡って野菜を集めることも。もちろん旬のものが並ぶため、端境期は少し寂しくなるが、それが自然なのかもしれない。野菜は基本的に生産者が直接持ち込むので、タイミングが合えば会話がてら野菜へのこだわりや美味しい食べ方なども直接聞くことができるし、安心感がある。加工品も基本的に神戸産。しかもすべて生産者の思いが込められており、品質のレベルも高い。
 奥はカフェスペースになっている。ショップに並ぶ野菜をふんだんに使ったランチを、おうちごはんっぽく提供し好評だ。ランチタイムに野菜をたくさん食べられる店はそう多くないし、何よりも素材が良いから、わざわざ訪ねていただくだけの価値がある。
 ちなみに、ファームスタンドでは若手生産者支援という目的もあるため、野菜は全量買い取りだ。ゆえに余剰在庫はカフェメニューで使い切る。しかもそれだけでなく、一般家庭では捨ててしまうようなだいこんの皮なども調理に用いて可食部のごみを出さない。この姿勢は賞賛に値する。
 ヘルシーなスムージーのほか、布引の名水で仕込んだクラフトビール『二宮ファンクエール』もラインナップ。コーヒーは日替りで、ファーマーズマーケットに参加するロースターの豆を使っている。そして、あの弓削牧場のソフトクリームを神戸の中心地で味わえるのはここだけ。カフェメニューはテイクアウトもOKで、街歩きがてらに楽しめる。
 古材や古家具のインテリアは、スタッフや農家、水曜日に開催する子ども食堂にやって来る子どもたちたちが手がけた。残念ながら夜の営業はやっていないが、バルイベントを計画中だとか。ここではほかにも食やローカルをテーマにしたワークショップやイベントなども開催され、コミュニティ拠点としての役割も担っている。
 多品目で高品質の産品に恵まれた地産地消スタイルは、神戸市民の特権でもある。そんなライフスタイルに、この店は欠かせない存在になるだろう。まだオープンして間もないが、ファーマーズマーケットからの常連さんをはじめ、地元の人の来店が多いという。そもそもこのあたり、北野や山本通は神戸で最も古い住宅地のひとつでもあり、観光地でありながら生活の場でもあるのだ。その割にお店が少なく買い物に不便だったこの地に、新鮮な野菜が手に入るショップができたというのもマーケティング的に大きなインパクトだったに違いない。
 一方で週末は観光客や散策がてらの来店が多いという。よく知られているお土産とは違った神戸ものが手に入るし、神戸の美味も味わえるから、旅人も嬉しい。神戸産品というこれまであまり知られていなかったこの街の魅力を伝えるという意味でも、ここは大きな期待を背負っているのだ。

神戸野菜のランチ

弓削牧場のミルクソフトクリーム

イートイン・スペース(1F)

生産者と消費者を繋ぐ

 前述の通り、ファームスタンドはファーマーズマーケットの常設版リアルショップだが、そもそもファーマーズマーケットはどのような経緯でスタートしたのだろう。
 仕掛け人は神戸R不動産の小泉寛明氏。もともと個性的な物件を扱い、リノベーションを武器に新たな住空間を生み出してきたが、一方で神戸への移住者へのサポートも手厚くおこなってきた。そんな活動の中で、神戸の魅力のひとつとして豊かな農産品があることをもっと知ってほしいという思いが込み上げたところ、タイミング良く東遊園地の新たな利用という社会実験と巡り会い、神戸市が主導するEAT LOCAL KOBEの一環としてファーマーズマーケットを2015年にスタートした。現在は一般社団法人KOBE FARMERS MARKETと神戸市の共催となっている。
 参考にしたのはアメリカ、ポートランドのマルシェ。大きな木の下で13店舗、地元の有志3名からはじまり、25年の時を経て150あまりの店舗が軒を連ねる一大マルシェになったという。木にも意味があり、紫外線から商品を守り、人の集まるシンボルとなっている。これを参考に、神戸のファーマーズマーケットも東遊園地の木立の中で開催されている。
 この場で消費者と生産者との会話が生まれ、やがてコミュニティへと発展。その絆は常設店舗のファームスタンドにより日常のものとなり、深まっていくことは間違いない。

KOBE FARMERS MARKET 
神戸R不動産 小泉寛明さん・亜由美さん


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