5月号
神戸のカクシボタン 第五十三回 今も昔も変わらぬ癒しと甘さを求めて
写真/文 岡 力
幼少期、舶来好きの祖父に連れられよく元町に来た。ハーシーズキスチョコやチューブ式のたらこ(カレス・キャビアと言うらしい…)は、この頃に味を覚えた。
散策が終わり喫茶店でいっぷくした後は、決まって商店街で足を止め天津甘栗を買ってくれた。
神戸元町を代表する老舗といえば「フルーツショップ サンワ」。天津甘栗の実演とジューススタンドがあるお店と言えばご存じの方も多いだろう。
店舗の歴史は古く昭和30年に台湾バナナの専門店として創業。当時は、輸入が自由化されておらず庶民には手の届かない高級品だった。天津甘栗は創業時、名物のジューススタンドは昭和45年からサービスを開始。先代が「パパイヤやキウイフルーツ等の日持ちしない品物をどうにかして有効活用できないか?」と悩みジューサーを並べた店頭販売を考案した。そのスタイルは今も変わらず常時5種類のフレッシュな生ジュースが飲める。マンゴをはじめ多種の果実が合わさったミックスジュースは格別の美味しさである。バナナのみの販売でスタートした同店だが現在ではフルーツの王様「ドリアン」や森のアイスクリームと称される「アテモヤ」など約60種のトロピカルフルーツが彩豊かに陳列されている。外国人の方や戦争中に食べた高齢者が昔を懐かしみ購入すると言う。地方発送も対応しているが是非、路面でのエンタテイメントを満喫してほしい。そして大切な人へのお土産には焼きたての天津甘栗をお勧めする。
■フルーツショップ サンワ
神戸市中央区元町通2丁目2-10
営業時間 11時~20時
定休日 水曜
TEL.078-391-2570
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載・レギュラー「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「大人の社会見学」(大阪スポーツ)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)