5月号
桜色に染まる浄徳寺で“隊長”宇賀芳樹大阿闍梨の米寿を祝う
うららかな陽光の中に、桜の花びらが風に舞う。東須磨月見山、高野山真言宗「浄徳寺」の境内は春色に染まる。
4月8日、宇賀芳樹大阿闍梨のもとに、白髪混じりの“隊員”たちが続々と詰めかけた。日本ボーイスカウト神戸第23団の元隊員たちだ。そして、“隊長”を務めたのが宇賀さんだった。
神戸第23団の歴史は古く、発隊は昭和32年にさかのぼる。当時、浄徳寺の檀家のご子息たちが宇賀さんのもとに集まり、ボーイスカウト活動がはじまった。神戸第23団の活動はすべてが型破りで、峻険な大峰山夜間ハイク、“勝手に”長良川急流すべり、高野山ではロケット花火を打ち上げたりと枚挙に暇がない。好奇心旺盛な少年たちにとっては、宇賀さんは良き理解者でもあり、良き遊び仲間でもあった。刺激の強い冒険や探検は少年たちを虜にした。宇賀さんもTシャツの中に大量のロケット花火を抱えているときに、そこにロケット花火が着弾、大爆発を起こし腹部を大やけどする惨事に見舞われた。しかし、そんな“生死にかかわる”活動も、隊長と隊員たちのかけがえのない思い出になっている。
4月8日、そんな隊長も米寿を迎え、かつての隊員たちがお祝いに訪れたのだ。第1期生隊員の初谷雄一さんは千葉県から駆け付けた。中には須磨学園学園長の西和彦さん、大阪大学医学系研究科・医学部分子病態生化学の教授を務める菊池章さんの姿も。ふだんは、「先生」と呼ばれているお二人も、宇賀さんの前では少年に戻る。
「ふつうのボーイスカウトでは、隊員は隊長の言うことを聞くもんやけど、私の言うことを誰も聞かなかったなあ。でもこうやって皆が集まってくれてとても嬉しい」と宇賀さん。最後は、参加者全員で団歌、栄弥三唱を合唱し、宇賀さんの健康長寿を祈願した。
菊池 章さん
大阪大学医学系研究科
医学部分子病態生化学教授
西 和彦さん
須磨学園学園長