2月号
平尾工務店 オーガニックハウス モデルハウスリニューアルオープン
空間の魅力が沸き立つ住まい
「有機的建築」の思想を正統に継承
一流住宅メーカーのモデルハウスが建ち並ぶ、東灘区の総合住宅展示場「ABCハウジング・ハウジングコレクション神戸東」。その中でもひときわ重厚で、趣と気品を兼ね備えた家がある。
水平ラインのフォルム。重厚なレンガ積みの壁。幾何学的な装飾のドア。平尾工務店が手がけたオーガニックハウス『ラッタンバリー』のモデルハウスは、日本にも旧帝国ホテル本館、旧山邑邸、自由学園明日館など国内にも作品を残し、近代建築の三大巨匠の一人に数えられる「空間の魔術師」、フランク・ロイド・ライトが提唱した「有機的建築」の思想を正統に継承している。
このモデルハウス、実は先日リニューアルしたという。「これまでは建物の良さそのものを見ていただこうというコンセプトでしたが、やはりお住まいになる家ですので、生活シーンをご想像いただけるように内装やインテリアにより力を入れました」と平尾真智子さん。なるほど、玄関を入るとこれまでになかったアート作品が出迎え、ライトのフロアランプが空間に溶け込んでいる。
リアルな生活感を実感
やや天井の低いエントランスからリビングへ入ると、空間が上下左右に広がりを見せ、開放的で居心地も良い。この空間の抑揚はライトらしい演出だ。ここに置かれているソファーの仕立てが以前と違い、外光が注ぐ明るい空間にマッチしている。腰掛けると、自然と視線が外へ向くが、壁の煉瓦が外壁と連続し、まるで外にいるような錯覚を覚える。が、寒風吹きすさぶ屋外と比べ、ここは天国のように温かく心地良い。
さらに奥のダイニングもまた外のウッドデッキと床面が連続し、大きな掃き出し窓が空間を包むテラスのような構造。それまでは空間そのものの魅力に感嘆したものだが、リニューアルでカーテンを設けたことにより、リアルな生活感を実感できる。ここでコーヒーを飲む朝は、どれだけ爽やかなのだろうか。想像するだけでわくわくする。
L字型のカウンターとアイランド型の調理スペースを組み合わせたキッチンもまた小物がさり気なく置かれ、家事動線の確認がしやすい。その奥の和室は黒縁の畳に変えられ、室内が引き締まった印象だ。階段へ向かう途中、ライトのデザインの額がさり気ない。「実はこれ、母手づくりの刺繍なんです」と平尾博之社長。幾何学模様も、愛情が込められると空間にまでやさしさがにじみ出てくる。
ライトの哲学が息づいた空間
何気ない装飾が施された階段を上り2階へ。かつては広いセカンドリビングだったが、パーティションで区切られている。しかし、パーティションは波ガラスや色ガラスを組み合わせてあってそれ自体がアートの要素をもち、区切り方が曖昧なところがむしろ空間の連続性を担保し、光も風も抜けて開放的。実際に使用するのであれば、このような構成は使い勝手が良さそうだ。
奥の寝室もそれまで水平のラインが主張して角張った感じだったが、収納を外して空間を広げ、ドイツ漆喰の壁の表情が生きてやわらかい印象に変わっている。ベッドのシーツやカーテンなど、ファブリックが鮮やかだ。ライトの家だと渋いカラーを選択しがちだが、ヴィヴィッドな色合いや花柄など華やかなインテリアも意外と良く似合って、女性らしい華麗さも寛容に受け入れる。生前のライトはモテたようだが、彼の哲学が息づいた空間もまた女性の心を捉えるのだろう。
空間にこそ普遍的な価値が宿る
オーガニックハウスは世界的建築家の系譜にあるというイメージゆえ、やもすれば「作品」として理解しようとしてしまう。確かに建築として秀逸であることは間違いない。しかし、住まいは住み心地が第一。つまり、暮らすための空間に価値があるのだ。「ひとつの部屋の実態は、屋根と壁によって囲み取られた空間にこそ見出されるべきものであって、屋根や壁そのものに見出されるべきものではない」というライトが感銘を受けた岡倉天心のことばは住まいの本質を突いているが、このモデルハウスにインテリアやファブリック、何気ない絵画などで生活感をにじませると空間そのものの良さが浮かび上がる。それは、ライトが人間的なサイズを基準にして、常に住む人の動きや視界にまで心を砕いて空間をデザインしているからなのかもしれない。建築ではなく空間にこそ、普遍的な価値が宿っているだろう。
このままここに居着いてしまいたい…モデルハウスであることを忘れて本気で寛いでしまうので、ご来訪の際はご注意を。
ABCハウジング
ハウジングコレクション神戸東
〒658-0012 兵庫県神戸市東灘区本庄町3-2-14
TEL:078-452-3674
http://www.organichouse.jp/