6月号
㊎柴田音吉洋服店 150周年記念「super150」 地域への貢献のために新たな挑戦も
株式会社柴田音吉商店 社長
柴田 音吉 さん
1868年12月3日(明治元年10月20日)、初代・柴田音吉が元町3丁目3番地に工房を開いて以来、ハンドメイドにこだわり質の高い洋服を丁寧に作り続けてきた柴田音吉洋服店。150年という節目の年を迎えた2018年、テーラーとして、また元町商店街の活性化のため新たな挑戦を始めている。
信頼するベルギーの「SCABAL社」に依頼
―記念の年も半年が過ぎましたね。
『神戸っ子』1月号で「起業150周年」の特集を組んでいただいてから、「特集記事を読んだ」という新規のお客様にも来ていただきました(笑)。長く良いお付き合いができそうな方ばかりで喜んでいます。流れ作業の工場縫製(イージー・オーダー)のテーラーがほとんどのなか、一着、一着、20年以上の経験をもつ一人の職人が丁寧に手づくりする本物のテーラーというものが世の中に少なくなっているのでしょうね。柴田家5代にわたり150年、コツコツと仕事を続けてきたことに改めて誇りを感じ、またこれからもこの姿勢を貫いていく自信にもつながりました。
―150周年記念にちなんだ「super150」とは?
ベルギーのSCABALにビジネスマンが着用可能なスーツ生地としては最高級品質「super150」を選定しました。SCABALはヨーロッパの一流テーラーが認める世界最高品質を提供する毛織物商社で、決して手を抜くことなく地道な物作りに徹するところに相通じるものを感じています。服地の原料である最上級の羊毛の産地はオーストラリアで、今日イタリアのビエラ地方のメーカーがほぼ独占しています。今回のsuper150は、SCABALがビエラのトップメーカーに織らせた特注品で超極細ですが、糸をふんだんに使うことでしっかり仕上げ、しかも光沢があり、ソフトで適度なぬめり気を含み、SCABALしか出来ない特別な仕様にも応えてくれています。
元町商店街初、神戸市認可保育園を開園
―元町商店街、特に西エリアが活気を取り戻していますね。
西元町は風紀地区に指定されています。環境がよく、安心して買い物や食事ができるエリアとして学生さんをはじめ多くの若い人たちが集まってきています。人気のレストランや店舗が増えるという好循環が始まり、質の高いマンションも建ち始めました。三宮界隈の優良企業で働く人たちが暮らしの場として選び、それに伴って子どもの数も増えてきました。そして保育園が必要だという声が上がり始めました。
―保育園開設に向けて動き出したきっかけは?
ちょうどそのころ、当店1階に空きができ、保育園の運営をお任せできるところはないかと探していたところ、松村恭子園長を通じて「種の会」の片山理事長にお会いする機会を頂きました。理事長は非常に心の広い方で、経営を考える前にまず保育の広がりを最優先に考えられているということが伝わってきました。スタッフにお会いする機会がありましたが、とても良い人材を揃えておられると感心させられました。松村園長も保育と幼児教育の豊富な経験とすごいバイタリティーを持った方で心強い限りです。
―そして4月、元町商店街初の神戸市認可保育園が開園したのですね。
昨年9月に神戸市から認可が下りたのを受け、11月から改装工事に入りました。元町商店街全ての理事会を回りお話ししましたが、皆さんとても喜んでいただきました。そして奇しくもテーラー起業150年に当たる今年4月「元町はっと保育園」オープンに至りました。洋服店として歩んできたこの街の役に立ち活性化の一助になり、また当店上階学生マンションに住む保育を学ぶ学生さんたちに、現場を見る機会を提供することで保育の仕事に興味をもち、将来、保育士になってもらえたら嬉しいと思っています。
熱意を持つ人ありきで、事業が自然と全国へと広がった
社会福祉法人 種の会
常務理事 片山 雄基さん
私の父である片山喜章理事長は、神戸市で誕生した第一号の男性保育士です。しばらく保育から離れましたが、保育現場に関わりたいという強い思いがあり2001年に法人設立、震災復興のまちHATこうべに02年4月「はっと保育園(現・はっとこども園)」を開設しました。06年には神戸市から初めて民間移管された「なかはらこども園」を開設。この2園の保育を視察した横浜市から、民間移管のお話を頂き、「もみの木台保育園」を開設、さらにその保育の様子を見て、川崎市の公立保育園の民間移管にあたっては保護者から要請があり、「みやざき保育園」を開設しました。現在、関西に4つのこども園、3つの小規模園、児童館、関東では3つの保育園を運営しています。子どもの立場を尊重し、先生と子どもが一緒に保育を作り上げるというスタンスを認めていただき、ここに至ったのだと思っております。決して事業規模を大きくしようとしてきたわけではなく、「ぜひやりたい」という人材ありきで事業が広がってきたというのも大きな特徴です。松村園長とも長いお付き合いがあり、その熱意を理事長がお聞きしたことが、元町での小規模保育園開設につながりました。
子どものことを第一に考える、温かい保育を目指す
元町はっと保育園
園長 松村 恭子さん
片山理事長はスタッフを信頼してくださり、「任されている」という責任感を持って日々仕事に取り組んでいます。私の「これからも保育現場で頑張りたい」という思いも受け止めていただきました。そしてご縁があり、この元町という歴史あるまちに保育園ができ、子育て支援のお役に立てるというのはとても嬉しいことだと感謝しています。「種の会」が理念として持っている温かい保育を大事にしながら、保護者の皆さんに「ここへ来てよかった」と言っていただける保育園にしたいと考えています。
「種の会」では、子どもの発達には数多くの動作を経験することが大事だと考えています。跳んだり、走ったり、転がったり…狭いながらも園内でそういった動作ができるよう工夫しています。英語であそぼうや子育てに悩む保護者へのカウンセリング、商店街を訪れる人たちと一緒に楽しめるイベント開催など、今、いろいろな計画が浮かんできて私自身ワクワクしています。まだ開園したばかりですので急がず、子どもたちの安全・安心を第一に考えながら進めていきます。
社会福祉法人 種の会
元町はっと保育園
神戸市中央区元町通4-2-22-1F
TEL.078-361-1810