12月号
神戸鉄人伝 第96回 神戸女子短期大学総合生活学科教授・キャリア教育部長 福井 愛美(ふくい あいみ)さん
剪画・文
とみさわかよの
神戸女子短期大学総合生活学科教授・キャリア教育部長
福井 愛美(ふくい あいみ)さん
芸術・文化人の会合ではお馴染みの司会、福井愛美さん。サンテレビのキャスターやラジオ大阪のパーソナリティーとして知られ、アナウンサーとしての活躍もさることながら、プレゼンテーションやビジネスマナー教育の実績もお持ちです。現在は神戸女子短期大学で、キャリア教育などの実務指導をしておられる福井さんに、お話をうかがいました。
―長らくアナウンサーの面しか存じていませんでした。アナウンサーのお仕事と現職のつながりが、素人目にはわかりにくいのですが…。
そうですよね。でもアナウンサーも接客応対も、大切なのは「話し方」です。お客様に感じのいい声の出し方、言葉使い、笑顔の作り方など、共通することがたくさんあります。アナウンサー時代に放送業界を目指す人の専門学校に教えに行くようになったのが始まりで、様々な講師を頼まれるようになり、動作も含めた表現力全体を指導するようになりました。
―なるほど、そう言われると確かにつながりますね。今教鞭を執っておられる「総合生活学科」とは、どのようなことを学ぶところなのでしょう?
衣・食・住、情報、ビジネスなど、人間の生活全般に関わることが学べる学科です。衣は被服関係、食は調理学など、住はインテリアや住まいに関することなど、興味のある科目を自由に選択できるのが特徴です。短大なので専門性を深めるというより、実践力を身に付けることに重きが置かれますね。私はプレゼンテーション演習や日本語表現、キャリアへのアプローチ、秘書実務などの科目を担当しています。
―2年間で実践力とは大変ですね。卒業生はどんなお仕事を?
総合生活学科は販売関係が多いですね。アパレル系や自動車ディーラーのショールームなどで働いている者もいますし、金融機関や一般企業の事務をしている者、公務員として働いている者もいます。短大は入学から就職まで2年しか無いので、確かに余裕はありません。入学したら前期は自分の人生を考え、後期はどうなりたいかを考え、2年生になったらもう就職活動が始まります。それでも学生たちはアルバイトしながら時間のやりくりをして、楽しむ術も知っているようですよ。
―今の若者はコミュニケーションが苦手と言われます。
話し方もコミュニケーション力のひとつですが、もちろん指導するのは話し方だけではありません。実社会で必要とされるのは組織や地域と連携して物事を解決していく能力で、それには「対人コミュニケーション」が必要になる。ですから先生から教わるだけの学びではなく、自分で問題を発見しそれを解決していく学び、チームを組んで協力しながら解決していく学びの機会を設け、コミュニケーション力が身に付くよう指導しています。もっともネットを使ったコミュニケーションは、学生たちの方が得意ですね。
―コミュニケーション力の他に、実社会で必要なものを挙げるとすれば?
人とのつながりですね。私自身、神戸青年会議所に所属したことで人脈が広がり、仕事の機会も増えました。また兵庫・神戸CSの会に入れていただいたことで、芸術家や文化人の皆さんと近しくなれて、自身の勉強にもなっています。人と信頼関係でつながること、これは実社会で最も大切なことだと思います。
―神戸の若い人たちに、アドバイスをお願いします。
私の場合、仕事が広がったのは青年会議所やCSの会のおかげです。フリーから組織に所属したことで、新しいチャンスに恵まれました。若い方たちはぜひ、新しい場に身を置く、新しい仕事に挑戦するなどして、チャンスをつかんで欲しい。そんな挑戦の中から、神戸を支える新しい力が育つことを願っています。
(2017年9月21日取材)
自らのお仕事を発展させ、学生の指導にあたる福井さん。そこに並々ならぬチャレンジ精神と開拓精神を、感じずにはおれませんでした。
とみさわ かよの
神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。