2017年
10月号
壱岐:猿岩

神戸から行く ながさきの島旅|対馬・壱岐

カテゴリ:楽しむ, 観光

幾重にも重なる波の向こうは、遙かなる大陸。
わが国の窓として世界と向き合ってきた歴史は豊饒な自然の中に絢爛の文化を育み
いま、日本遺産として注目を浴びている。

野趣あふれる国境の島 対馬

 玄界灘を越え福岡から約130キロ、入り組むリアスの断崖に取り囲まれた要塞のような島、対馬は、手つかずの自然が残っている。大陸と列島の間という稀有な場所ゆえ、ここにしかいない固有種・亜種も多い。その代表が国指定天然記念物のツシマヤマネコ。対馬野生生物保護センターで公開している(体調次第で中断あり)が、野生との遭遇はほぼ不可能だとか。
 険しい地形ゆえに、対馬はどこもかしこも絶景。中でも烏帽子岳展望所からの眺めは360度のパノラマで、瀬戸内や志摩、松島にも勝るとも劣らない多島美が視野いっぱいに広がり圧巻だ。
 その下に広がる浅茅(あそう)湾は、三方を山に囲まれた静かな海で、クルーズやシーカヤックが楽しめる。入り組んだ入江をめぐれば雄大な自然はもちろん、浅瀬の鳥居が誘う海彦山彦伝説の和多都美(わたづみ)神社、万葉集にも詠われた防人たちが絶壁の上で国を守った金田城の石垣などの史跡も見どころだ。ちなみにこの海域では真珠養殖が盛んで、神戸にも出荷されているとか。
 韓国と近いところで50キロ足らずの距離にある対馬は、国と国との狭間で時には緊張の最前線、時には友好のフロントという波乱の歴史を歩んできた。島の中心、厳原(いづはら)は小さな街だが、その重要性から江戸時代に対馬藩の藩庁がおかれ、今も城下町の風情を残している。ここを治め、朝鮮通信使を接遇した宗家十万石の居城、金石城の櫓をくぐると、美しい庭園が。これは土砂に埋もれていたものを発掘・復元したもので、栄華の時が甦り風情豊か。その先の万松院は巨木と静寂に包まれ、歴代藩主の御霊が眠っている。
 厳原の街歩き拠点「ふれあい処つしま」へもぜひ。情報入手はもちろん、対馬の名物を味わえ、ここでしか手に入らない地場産品もゲットできる。

対馬:烏帽子岳展望所からの眺め

ツシマヤマネコ

和多都美神社

万松院の百雁木

悠久ロマンの玉手箱 壱岐

 九州と対馬の間、玄界灘に浮かぶ壱岐は神戸市西区とほぼ同じ面積の小さな島だが、わが国の黎明期から交易の重要な拠点として栄え「一支国(いきこく)」というひとつの国を形成し、古くから高度な文化が根付いていたようだ。
 まずは一支国博物館で、魏志倭人伝にも記された島の歴史を体感しよう。展望フロアからは原の辻遺跡を一望。往時の船の復元や、豊富な発掘資料、緻密なジオラマなどで、しばし古代へのタイムスリップが楽しめる。黒川紀章設計の建築も見どころのひとつだ。
 島内には古墳や神社が多く、古墳は約280基、神社は神社庁登録だけでも150社を数え、干潮になると参道が現れる小島神社、1500年以上の時を超え崇敬を集める月讀神社などパワースポットには事欠かない。代々神職のみに口伝されてきた壱岐神楽は国の重要無形民俗文化財。島内随所の神社で奉納されている(スケジュールは壱岐市観光連盟に問合せを)。小さな社殿でも舞えるように畳2帖のスペースでも演じられる工夫がなされているが、それを感じさせない勇壮さがある。
 前述の原の辻遺跡は弥生時代の遺跡で、国の特別史跡にも指定され住居などが復元されている。実は壱岐には長崎県で2番目に広い平野があり、弥生時代から米や麦が栽培されていたという。それらを原料にした島の名物が「壱岐焼酎」。壱岐は麦焼酎発祥の地とされ、スコッチウイスキーやボルドーワインなどと同じく地理的表示が認められた世界のブランドだ。壱岐の蔵酒造では工場見学と試飲が楽しめるので、左党の方はぜひ。
 猿の横顔にそっくりな猿岩、断崖と奇岩の辰の島クルーズ、澄み渡った筒城(つつき)浜ビーチなど自然もまた神秘的。訪ねるべきスポットがいっぱい詰まった壱岐で、島旅の醍醐味を感じよう。

壱岐:猿岩

一支国博物館の展示

壱岐神楽

壱岐焼酎


島の幸に舌鼓! 対馬・壱岐のグルメ

対馬はあなごの漁獲量日本一。大ぶりで背は黄金に輝き、脂がのっている。せいろ蒸しや天ぷらはもちろん、「あなご亭」(TEL/0920-58-2000)では刺身もいただける。一方の壱岐はうにが一押し。「うにめし食堂はらほげ」(TEL/0920-45-2153 )名物の生うにぶっかけは、ごはんの上にたっぷり身をのせ、うにの煮汁をベースにしたタレをかけて食べる郷土料理だ。ほかにも対馬は原種に近い品種の対州そば、熱した石で新鮮な魚介を焼く石焼き、壱岐は潮風を浴びて育った壱岐牛、メロンやいちごなどの果実ほか、珠玉の味覚は食べ尽くせない。

対馬のあなご料理

壱岐の生うにぶっかけ

島を人生のステージに 対馬・壱岐のUIターン

対馬生まれの阿比留恭二さんは島外で技術を学んだ後、故郷で家具工房「kiiro」をオープン。対馬ひのきの素材感を生かした家具や雑貨を、インターネットを通じ世界へ販売している。横浜出身の藤本彩子さんは、壱岐の海に魅せられて移住し海女の修行中。システムエンジニアから華麗なる転身だ。島の人も行政も、手厚いサポートで夢を応援。自分らしい生き方を求める人たちを温かく迎えてくれる。

阿比留恭二さん

藤本彩子さん


お問い合わせ

長崎県大阪事務所 TEL.06-6341-0012 
対馬観光物産協会 TEL.0920-52-1566 
壱岐市観光連盟 TEL.0920-47-3700
神戸〜長崎ルート

〈2017年10月号〉
《特集》神戸の食通が紹介する 神戸の粋な店 ー扉ー
comedor ESTELA(コメドール エステラ)|神戸の粋な店
TN|神戸の粋な店
La Tachi (ラ・ターチ)|神戸の粋な店
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