2017年
10月号
「子供の頃、いつもファッションデザイナーの中西省伍先生の番組を見ていました」と松田さん。「テレビで見ていた方と、こんなに近しく仕事できるようになるなんて思ってもみませんでした」

神戸鉄人伝 第94回 オペラ衣裳デザイナー・株式会社アトリエミック代表取締役 松田 優(まつだ まさる)さん

カテゴリ:絵画

剪画・文
とみさわかよの

オペラ衣裳デザイナー・株式会社アトリエミック代表取締役
松田 優(まつだ まさる)さん

 オペラの舞台を彩る、豪華で華やかな衣裳。それは美しいだけでなく、歌いやすいものでなくてはなりません。松田優さんが手掛けた衣裳は、歌手の間で「これを着るとテンションがあがる」と定評があります。ひとりひとりの歌手の骨格や横隔膜の位置に合わせ、最高の状態で歌えるように作られているそうです。「所蔵するオペラ衣裳はもう7千着になりました」とおっしゃる松田さんに、衣裳に込められた思いをうかがいました。

―オペラ衣裳のお仕事の始まりは?
 僕が衣装の仕事に携わるようになった頃、関西でのオペラ公演の衣裳デザインは東京のデザイナーが手掛けていました。やがて「関西のオペラ」を創り根付かせようという活動が盛んになり、尽力していた先生方が衣裳の担い手として、まだ若かった僕をデザイナーに抜擢してくださったのが始まりです。

―それは責任重大でしたね。
 重責でしたが「自分を選んでくれた方々に恥をかかせるわけにはいかない!」という一心で、とにかくがむしゃらに働きました。プロデューサーや演出家、指揮者や歌手の皆さんからは、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。演出家の方などは「衣裳だけではなくオペラ全体を理解しろ」と、僕を脇に座らせて仕込んでくれました。あの先生方がいらっしゃらなければ、今の僕はありません。その後独立し、会社を立ち上げ今に至っています。

―衣裳製作で、こだわっていることは?
 僕個人としては、オペラ衣裳はデザインして製作すればそれで終わりとは考えていません。本番で歌手に寄り添い、楽屋に付き添い体調まで把握しながら、舞台が終わるまで衣裳を管理して歌手を支える、そこまでが仕事ではないかと。常に演奏者の立場に立ち、動きやすさなどを考えつくして制作します。ですから「愛情の込もった衣裳ですね」と言っていただけた時は嬉しいですね。

―オペラ衣裳デザインの仕事はもちろんですが、芸術を介したまちづくり事業の主催や運営もなさっています。
 関西でのオペラの基礎を築いた先生方が望んでおられたことを、僕なりに考えていろいろなことに取り組むうち、舞台やイベントそのもののプロデュースに関わるようになってきました。関西だけでなく全国のオペラ公演に関わったことで、地域の文化振興を客観的に見つめ直すこともできました。次々に課題も見えてくるので、とてもやり甲斐があります。新しい分野の膨大な文献にあたるのは、すごく大変な作業ですけれども。

―後進の指導もなさっていますが、伝えたいことは?
 「どうしたらプロになれますか」という質問に、「好き」プラス1でないとだめだ、とよく言います。好きでやるのは誰でもできる、でもそれだけではプロとしてはやっていけない。僕のプラス1は世話になった方々への感謝と「先生方に恥をかかせまい」という強い意志。それを礎に地道に研鑚を重ねたから「好き」を職業にできた。自分のプラス1を見つけることが大切です。またコミュニケーション能力を身につけることも、忘れないで欲しいと思います。

―これからの抱負などは。
 新しい仕事にチャレンジしたいし、それが若いデザイナーたちの刺激になればと願っています。僕も先生方に育てていただいたのですから、次世代を応援したい。と同時に同世代の他ジャンル、音楽だけでなく舞踊や美術などの専門家の皆さんと話がしたいと思っています。きっと地域の文化活動にそれぞれのご意見をお持ちだと思うので、機会あればお話をうかがいたいですね。         (2017年8月9日取材)

 オペラの衣裳デザインから地域文化のデザインまで、目標に向かって一歩ずつ進む松田さんでした。

「子供の頃、いつもファッションデザイナーの中西省伍先生の番組を見ていました」と松田さん。「テレビで見ていた方と、こんなに近しく仕事できるようになるなんて思ってもみませんでした」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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