7月号
フランク・ロイド・ライト その思想と建築を今に Vol.1
内と外の融合
─大地のゆったりとした広がりが入ってくると同時に、建物とその内部空間が外にあふれ、大地のつながりと共調する。大地と建物は直に開きあい、親密につながりあって、お互いを一層引き立てる。環境としてつながりあうだけでなく、建物のなかで営まれるよき生活パターンとしてつながりあうのだ。
近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト。彼の思想の根源は「大地」にある。彼の生み出した「プレイリースタイル」は、その名の通り草原に習い、自然から有機的建築というアイデアを得て体現したものとも言えるだろう。ライトの世界は「調和した秩序」という自然の本質から広がっている。
大地から現れ、光の中へ伸びていく─自然の中で樹木のように存在する家こそ、有機的建築のあるべき姿であるとライトは述べているが、外部が内部へと入り込み、内部は外部へと広がる空間は、その特徴のひとつである。
内部と外部が、互いに調和しながら統合されていく。そんな彼の理想は、ガラスという建築資材の登場によって実現した。それまでの西洋の古典的な建築で強いられてきた「厚い壁で仕切られた洞窟生活」から人類を解放したのは、ライトの提唱した有機的建築の理念であるとも言っても過言ではない。
人間は陽光と大気に直接結ばれてはじめて、大地の自由を謳歌できる。有機的建築の系譜を受け継ぐ「オーガニックハウス」は内と外の結びつきを体現し、私たちに自由の翼を与えてくれる。
透き通ったガラスの窓を天井いっぱいまでとり、リビングとデッキをつなげ、内と外の調和を体現。床板も同じ方向に貼り、壁にも同じ煉瓦を使うことで、リビングはデッキと統合され、まるでひとつの空間のようだ。ゆえに広さと開放感が生まれ、大地と一体となるような感覚が呼び覚まされる。
さらにライトデッキからは日差しが漏れ、昼は太陽の光、夜は間接照明で室内をやさしく包んでくれる。
内部と外部の融合は、内と外があいまいな日本古来の民家にも通じるものがあるのではないだろうか。ライトの思い描いた「大地とつながる」空間は、日本人が心から安らぐことのできる空間でもある。私たちがもっとも健康的に過ごすことができる場所は、このリビングが体現している「内と外の有機的な融合」にある。