2014年
7月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第四十二回

カテゴリ:医療関係

高齢者医療制度の現状と課題について

─高齢者医療制度の歴史について教えてください。
嶋津 高齢者医療制度は「福祉元年」とよばれた1973年に、70歳以上の患者負担が無料化されたことにより始まりました。やがて高齢者の加入する国保財源が悪化し、対策として老人保健法が1983年に創設されましたが、高齢化が進んで患者負担引き上げが繰り返しおこなわれました。そして2008年、10年間におよぶ議論を経て新たに後期高齢者医療制度が創設され、現在に至っています。
─後期高齢者制度は、どのような制度なのですか。
嶋津 後期高齢者医療制度は75歳以上の高齢者と65歳~74歳の前期高齢者の障害認定者を対象としており、それまで加入していた国保や被用者保険から脱退し、この制度に移行することになっています。また、高齢者人口の増加とともに医療費の増大が見込まれるため、75歳以上の高齢者を対象として高齢者と若年者の負担区分の明確化が要請されています。制度の運営主体は全市町村が加入する都道府県単位の広域連合で、ここで保険料額が決定されます。保険料は年金から天引きまたは口座振替とし、低所得者には保険料の軽減措置を認めています。費用負担は公費が約5割、高齢者の保険料が約1割、後期高齢者支援金として約4割で、患者負担は原則1割です(図1)。
─後期高齢者制度にはどのような問題がありますか。
嶋津 さまざまな問題点が指摘されています。75歳以上が加入する制度を別立てしたことが、「後期高齢者」という名称とともに差別的だとマスコミでもたびたび報道されたことは記憶に新しいと思います。保険料の徴収についても年金からの天引きのみならず、個人単位で保険料が徴収されるため、それまで保険料負担のなかった被用者保険の加入者に扶養される高齢者にも保険料負担が発生したことも問題でしょう。一方で、後期高齢者医療制度の創設により、都道府県単位の広域連合を主体とした運営がおこなわれることや、高齢者や現役世代の医療費の負担割合が、ある程度明らかになった印象もあります。
─制度の見直しはおこなわれているのでしょうか。
嶋津 2009年11月から2010年12月にかけて開催された厚生労働省の後期高齢者医療改革会議の最終とりまとめでは、75歳以上の方も現役世代と同様に国保か被用者保険に加入することとし、公費・現役世代・高齢者の負担割合の明確化と、都道府県単位の財政運営の推進を目指すとしています。その後、2012年8月に社会保障制度改革推進法が成立しましたが、この法律により社会保障制度改革国民会議が設置され、高齢者医療制度のあり方を検討することになり、主に医療費負担の世代間の格差をいかにすべきかが議論されました。会議の報告書では、70~74歳の医療費自己負担について1割負担となっている特例措置を改めるべき、後期高齢者支援金の負担について2015年度より全面的に総報酬制とすべきと答申しています。後期高齢者の総報酬割制とは、75歳以上の高齢者にかかる医療給付費のすべてを総報酬割にする制度で、加入者の支払い能力に即したものにするため、平均収入に応じて設定されます。加入者数に応じた頭割りで算出される加入者割よりも、各種健康保険組合間の保険料率格差が是正されますが、加入者の所得が高い健康保険組合ほど負担が重くなります。例えば所得水準が高い健保組合は1300億円、公務員が加入する共済組合は800億円現行より負担が増えます。一方で中小企業の社員が加入する協会けんぽは2100億円負担が減り、その分協会けんぽの負担軽減のための国の補助金が減少します。
─高齢者医療制度はどうあるべきなのでしょうか。
嶋津 制度を維持するためには高齢者医療の費用負担を高齢者・現役世代ともに公平に担うべきだと思いますが、その前提として国民の納得を得ることが重要です。高齢化が進行している現状では、問題解決の先送りは許されません。国民皆保険制度を守るためにも医療関係者は問題を共有し、その解を求める努力が求められています。

嶋津 良一 先生

兵庫県医師会医政研究委員
雲雀丘クリニック院長

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