09.29
WEB版エンタメ情報|映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』 監督 本広克行さん
日本中に“踊る”ブームを巻き起こした『踊る大捜査線』は1997年放送の連続ドラマだった。続編を望む多くの声に応え、ドラマに映画に次々と作品を生み出し、それらは次々と大ヒット。『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)は長年、邦画実写の金字塔とされてきた。そのシリーズ最新作が現在公開中だ。
作品と共に歩んできた本広克行監督に聞いた。
■イズムの継承と希望の物語
―『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』から14年。再び制作に至った理由をお聞かせください。
映画『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』の制作前のことですが、君塚(シリーズ脚本の君塚良一)さんが、「室井が秋田で農業をする短い物語を作りたい」って話してくれたんです。君塚さんとはずっと一緒にやってきたから、なんかわかるなと思って「タルコフスキーみたいな感じ、いいですね」なんて話していたんですけれど、そのうち「子どもを育てているとかどうですか」とか「昔の事件が追いかけてくるとかよくないですか」って、どんどんおもしろくなってきて。“小さい物語”のつもりが、“映画”になっちゃった(笑)。同時に『踊る~』も動き出していました。
―『室井慎次~』を制作しながら、次が生まれていたのですね。
話の中で、“子ども”にハッとしたんです。その子どもが大人になって警察官になるのはどうだろう。その子が青島の元に行くのはどうだろう。子どもを通して、物語の未来が見え始めたんです。そこからモチベーションが上がってきちゃって“室井の農業”はずいぶん大きくなりました(笑)。
青島イズム、室井イズムをもつ人が青島の元に集まるのは自然だし、そのイズムを若い人が継ぐのは希望ですよね。かつて和久さん(いかりや長介が演じた刑事)が望んだように。
―「会議室」は相変わらずですものね。
いつの時代もよくないことを考えている人はいる。それは変わらないでしょうね。
人間には欲があるから。そういう意味で『踊る~』の会議室は人間っぽいんです。一人ひとりは悪くなくても、組織ってそんなところ。
和久さんも室井も戦ってきたところ、イズムを継いだ人たちも今後戦っていくところですね。
■「笑って泣ける」を目指して
―制作現場に変化はありましたか?
この10数年で働き方が変わって、ずいぶん楽になりました。決まった時間の中で、一生懸命仕事する。寝ずにしんどい思いをすることはない。気持ちよく働くのはいいことだと思います。
以前は疲れすぎて、コメディを撮ってるのに全然笑えないことがありました。それはよくないでしょう(笑)。
藤山寛美さんを見て育った世代なので、“笑って泣ける”っていうのが最高のエンターテインメントだと思ってるんです。ドッカンドッカン笑わせて、物語の中に引き込んじゃう。気がつくとジーンとして涙を流してる。藤山寛美さんは天才でしたね。
―『踊る~』もそうですね、笑って泣けます。
笑わせるって本当に難しくて、「笑わなかったらどうしよう」っていつも怖かったんですよ。笑えないと「はずしたね」って冷たく言われちゃうし。
でも君塚さんはいつも「笑わないのがいいんだよ。脳内で笑ってるんだから」って言います。笑わないのがおもしろい。最近はその領域にきています。
山田洋次監督とそんな話をしたことがあって、山田監督も笑いは難しいとおっしゃっていました。「喜劇俳優って貴重な存在だね」とも。
その点『踊る~』には、織田裕二さんがいるから大丈夫(笑)。
織田さんは逸材です。笑わせようなんて思ってないんですよ、たぶん。すごくまじめで、ただただ一生懸命なんです。度が過ぎててそこがおもしろいんです。
それと君塚さんの言葉のセンス。深津絵里さんもおもしろかったでしょう?
―笑って泣けるの“泣ける”方はどうですか。
「泣ける」はまた違ってて、どこで泣くかは人によると思うんですけれど、僕は室井のラスト、室井が泣いてる背中を見て泣きました。あのシーンはすごかったなぁ。
それから、和久さんのシーンではよく泣きました。撮りながら泣きましたね。台詞も刺さるし、部下が撃たれて病院の廊下で一人、泣くシーンがあったんですけれど、そのシーンのいかりやさん。胸が痛いくらい苦しかったです。和久さんというよりいかりやさん。亡くなってもイズムは存在し続けています。
―本作には「NEXT・EVOLUTION・WORLD」というタイトルがついています。
監督は進化を感じていますか?
映画をスマホで観るとか家で観るとか、早送りで観るとか、そんな話をあまりにも聞くので、これは進化と認めざるをえないなと思います。観る方法も場所も選択できるようになったんだから。僕は映画館で観るのが今も好きで、古い洋画のポスターなんか貼ってあると、いいなって思う。この時代に、わざわざ映画館で映画を観る人ってどんな人でしょうね。逆にそっちを知りたいなぁ。
本を読む人と読まない人がいるように、映画を見ない人がいても仕方がないなと一時期は思っていたけれど…。
本は完全に進化しましたね。最近僕、オーディブルで本を“聞く”んですよ。目が疲れてしんどいから始めたんですけど、これがいいんです。プロが読んでくれるからめちゃくちゃ感動する。僕の中で、本は聞くものになりました。『存在のすべてを』(塩田武士 著)は、ウォーキングしながらボロボロ泣きましたよ(笑)。
―進化を受け入れる柔軟性があるから、この作品が生まれたんですね。
変わらないものとか変えたくないものを、自分が持っていればいいんだと思う。
映画制作とAIでいうと、大勢のエキストラを集めないと撮れなかったシーンを躊躇せずに作れちゃうのはありがたいし、撮影以外の部分でもAIを取り入れたことでこれまでにないチャレンジができたりする。
この作品は、制作現場もけっこう進化してるんですよ。結果、また新たな『踊る~』らしさのある映像になったと満足しています。観た人は驚くんじゃないかな。感想を楽しみにしています。
―ほかに制作したい映画はありますか?
老後は“小さな物語”を好きなように作りたいです。
君塚さんの話に戻りましたね(笑)。
Photo.黒川勇人 text.田中奈都子



■STORY
ある日、東京都内で誘拐事件が発生。
犯人は身代金を指定の場所まで持ってくるよう指示をし、間に合わなければ街を爆破するという。そして、なぜかその“運び屋”として青島を指名する。
さらに、3Dプリンター拳銃を使用した連続殺人事件も発生。殺された被害者の一人である科学者が持っていた毒性ウイルスも盗まれており、警視庁には「ウイルスを街にばらまく」という脅迫文が届く。警視庁の捜査一課に着任した青島に、史上最悪クラスの難事件が次々に押し寄せる。
“犯人”はいったい―?
事件解決のため、青島は仲間とともに東京の街を走りに走りまくる!!
■作品情報
出演:織田裕二
趣里 白洲迅 佐々木蔵之介
増田貴久 野呂佳代 玉井詩織(ももいろクローバーZ) 藤吉夏鈴(櫻坂46) 齊藤なぎさ・佐藤二朗
ユースケ・サンタマリア 真矢ミキ 水野美紀 甲本雅裕 寺島進
伊藤淳史 滝藤賢一 松重豊 松下洸平・斉藤暁 小野武彦 北村総一朗
脚本:君塚良一
監督:本広克行
プロデュース:亀山千広
音楽:松本晃彦
配給:東宝
©2026フジテレビジョン BSフジ ビー・エー・シー
全国劇場にて公開中!
公式サイト https://odoru.com/












