2017年
5月号
シュウウエムラのヘアメイクコンテストで、西谷さんはアシスタントという立場で優勝を飾る快挙を成し遂げた

品格を受け継ぎながら、新しい風を ― HAIR & FACE Elizabeth

カテゴリ:お洒落・ファッション, 神戸

HAIR & FACE Elizabeth since 1948

神戸を代表する上質なヘアサロンとして愛され、創業69年を迎える美容室エリザベス。店長の西谷香保里さんは東京・青山に本店を構える大手ヘアサロンで修業後に独立し、芸能界などにも多数顧客をもつほど人気のヘアメイクデザイナーとして活躍してきた。一昨年、母であり前社長だった八木美彩代さんの急逝後、地元に戻り、弟の八木隆幸さんとともにエリザベスを受け継いだ思いをうかがった。

美容室エリザベス
店長・アートディレクター
西谷 香保里 さん

東京で活躍した7年間

―西谷さんは、お祖母様、お母様に次いで三代目となります。
西谷 祖母は、私の将来は美容師になるのが当たり前のように接していましたけれども、私自身は意識しないで子どもの頃から店で成人式の着付けを手伝わせていただいていました。自分の成人式のときも、他の方の着付けを手伝って最後に自分の着付けをしてもらって会場に走って行ったり(笑)。子どもの頃はダンス教室に通っていて、舞台の楽しさを知り、将来は舞台メイクなど裏方の仕事もしたいなと思っていました。その後、美容学校時代にシュウウエムラのヘアメイクコンテストを見学し、「将来はヘアメイクアーティストになろう」と決めました。小さな頃から本格的な和装の着付けを手伝ったり、母のそばで学ばせて頂いた経験はその後に生かされたと思います。
 美容学校卒業後、30歳になったら地元のエリザベスに戻ること、そして憧れのシュウウエムラのコンテストで優勝することを目標に、東京に出ました。コンテストに関しては3年目で、当時まだアシスタントでしたが優勝させていただくことができました。アシスタントが優勝するのは当時初めてだったそうです。先輩方の指導のおかげでした。東京では、サロンでの業務以外にも表参道コレクションやミス・ユニバースのバックステージでヘアメイクを担当させていただいたり、大変学ぶことが多かったです。おかげで私も独立後、フリーランスのヘアデザイナーとして表参道にアトリエをもち、俳優の須賀健太さん、加藤諒さんのヘアメイクを担当させていただくなど、お仕事をいただけるようになりました。

「お客様のために」病床の母の強い思い

―そんな中で、一昨年亡くなられたお母様の八木美彩代さんの後を継がれることになりました。
西谷 母は、闘病しながらも亡くなる3週間前までお店に立っていました。「お客様にご心配をおかけしてはいけない」というのは、母がもっていた強い意志で、私が東京での仕事を休んでお見舞いに行ったところ、入院していた母はベッドで私に「あなた、何をしているの、今すぐ東京に戻りなさい」と強い口調で言うんです。「美容師という仕事を選んだのだから、その仕事に集中しなさい。美しくなるためにお店に通って来られるお客様に、家の事情という美容師側の都合でご迷惑をかけてはいけない。また、きれいになるために来られるお客様に余計なご心配をおかけして、不安を持ち帰らせてはいけない」と母は言いました。それを聞いて私は病院を立ち去りましたが、その3日後に母は亡くなりました。
 そういう母の背中を見ておりましたから、私も家の事情だからといってすぐに東京のアトリエをたたんで神戸に帰るわけにはいきませんでした。結果、神戸に戻った今でも月に一度上京し、東京でお待ちいただいているお客様を担当させていただいています。

神戸と東京 2つの都市を行き来し、ヘアスタイルを提案

―神戸に戻られていかがですか。
西谷 一からのスタートでしたね。まずお客様の層が東京・表参道と神戸・住吉ではまったく違いますから、ヘアアレンジひとつとっても東京では巻き髪スタイルが人気でしたが、こちらでは上品なマダムスタイル、というように。新人になったつもりで新たに美容に向き合いました。お客様に受け入れていただいたことも大きいです。エリザベスはお客様とスタッフの距離がとても近くて、亡くなった母のことも私以上に忘れないでいてくださる。サロンには今も母の遺影を飾っているのですが、そのおかげで私たちも背伸びをせずにできました。一年たって、お客様の好みもわかってきましたし、逆に新しいスタイルを提案させていただいて「これが表参道スタイルね」といって喜んでいただいたりもします(笑)。
 神戸は昔から、ファッションの先端を行く地です。神戸コレクションのようなショーや読者モデル、巻き髪など息が長いスタイルの発祥は神戸でした。華やかながらもどこか品があるのが神戸の良さですから私もそんな神戸スタイルを受け継ぎたいと思います。私のように神戸と東京を定期的に行き来する美容師は少ないのではないかとも思いますので、それをお客様にも利用していただきたいです。私自身が東京での最新情報を受け取っていますから、小さなサロンですが技術だけでなく商品の提案など情報量は多いんです。エリザベスでは、70年代(1962年弱酸性美容法が誕生)に当時革新的と言われた弱酸性美容法「ベル・ジュバンス」を導入するなど、ベースとなる地肌や毛髪などの状態を整える“インナービューティー”を大切にしてきました。私もスタッフも、一種の美容マニアではないかというほどで(笑)研究してこだわって、弱酸性シリーズをはじめ良いなと思える商品しか取り入れません。カラーリングの悩みやアレルギー、育毛などでお悩みの方はぜひご相談いただきたい。美しいスタイルは健康的な髪と頭皮があってこそです。
 今後は、エリザベスというサロンを通して、お客様に、そして後輩たちにヘアメイクの楽しさを広めたいとも考えています。いずれは神戸や関西でのイベント等のヘアメイクを担当する事務所を立ち上げることができたらいいな、とも。エリザベスはヘアサロンですが、ヘアメイクも高い技術をもち、また着付けや和装の知識もより深め、いろいろなことに対応できるスタッフを養成していきたいです。

―八木隆幸さんは一昨年、それまで勤めていた会社を辞めて株式会社美容室エリザベス代表取締役に就任されました。
八木 私は母や姉とは違い、美容師の道には進みませんでしたが、「お客様とスタッフをなによりも大切にする」という母からの想いを受け継ぎました。技術に関しては姉がもっているので、その技術を生かせる環境作り、また姉に技術指導を受けたスタッフが更に成長できるよう会社を発展させていきたい。来年70周年を迎えるエリザベスですが、先代から受け継いだ“品”と“格”を大切に、我々に関わる皆さんに喜んでいただきたいという気持ちは変わりません。

シュウウエムラのヘアメイクコンテストで、西谷さんはアシスタントという立場で優勝を飾る快挙を成し遂げた

東京では表参道コレクションをはじめ数多くの芸能人のヘアメイクを担当した

「東京の最新の技術と、神戸の上品さを大切にしたい」と西谷さん

美容室エリザベスは着付や和装に定評がある

毎月、東京と神戸を往復する西谷さん。第一子も誕生し、“働くママ”として多忙な日々を送る

西谷香保里さん、八木隆幸さんは姉弟ともに「品格を受け継ぎ、さらに技術を磨いていきたい」と語る

JR住吉駅から徒歩約3分の好立地にある美容室エリザベス。地元の常連客に3代にわたり愛されている

昭和23年(1948)の創業で来年70周年を迎える

美容室エリザベスの3代目となる西谷香保里さんと、
弟で社長を務める八木隆幸さんは共に20代。美容室エリザベスの前で

西谷香保里(ヘアメイクデザイナー)

神戸生まれ。美容学校卒業後、都内有名サロン勤務を経て、舞台ヘアメイク事務所を運営する都内プライベートサロンにて店長を経験、その後独立。2012年ATELIER MADE by shu uemura MODE MAKE UP PHOTO CONTESTグランプリ受賞。以後、多数のコンテストで賞を受賞している。テレビCMや写真集、LUCUA(ルクア)ファッションショーなどイベントやショーのヘアメイクを数多く担当。現在も東京のサロンワークで芸能人のヘアメイク等も担当し、幅広くマルチに活動中

ヘア&フェイス エリザベス

神戸市東灘区住吉本町2-10-42
078-851-6388(予約優先制)
営業 9:00~18:00
定休日 月曜日・第3火曜日
JR神戸線、六甲ライナー「住吉」駅下車、徒歩約2分
http://www.kobe-elizabeth.co.jp/

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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〈2017年5月号〉
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